前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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5 体育祭がやってくる

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 あれから体育の時間は毎回ウォーミングアップのキャッチボールで高林とペアを組んでいる。短時間のキャッチボールでは打ち解けることなどできずいまだに会話はないが、いやな気持ちにはならない。きっと、前世の記憶を思い出していなければ、イライラしていたんだろうな。
 ただ、やっぱり前世の自分を見ているようで見ていて恥ずかしくなることはある。そりゃお前、友達できねぇよ、と改めて前世の自分のダメさを認識するのだ。

 そうこうしているうちに4月が終わりに差し掛かり、あるイベントについてホームルームで言及された。

 そう、体育祭だ。

 今の俺にとって、体育祭には楽しい記憶しかない。みんなで勝利を目指して団結して、騒いで盛り上げて活躍して。好きなイベントの一つである。
 しかし前世の俺にとっての体育祭はそうではなかった。最も嫌っていたイベントと言ってもいい。運動神経が備わっていなかった前世の俺はクラスのお荷物で、しかも暗いから空気が悪くなると言われ。当日は端っこの方で存在感を消していた。
 
 高林も、そんな扱いになるのだろうか。

 既に高林はそれなりにクラスメイトのヘイトを溜めている。何人か話しかけに行ったが全員フルシカト。いや俺はわかっている。シカトしたかったわけじゃなく、結果そうなってしまっただけだと。
 しかし、周りがそれをわかってくれるわけではない。なんだあいつ、と思われてしまうのだ。なんとかしてやりたい気持ちもあるが、俺だってまだ一言も会話できていないのだ。庇うに庇えない。

「放課後までに競技決めろだってー、裕也はどうするー?」

「そうだなぁ……」

 ホームルーム後、颯太に聞かれて悩む。
 いつもなら騎馬戦とか、リレーとかにするのだが。競技が書かれた紙を睨みながら、なんとか高林に楽しい思い出を作れないかと考える。

 単独で競技に出ても高林の運動神経ではお荷物扱い。かといって団体競技にも向かないだろう。連携が取れず縮こまる高林が目に浮かぶ。失敗しても俺がフォローできて、かつ楽しめるような……。

「あ、俺これにするわ」

「へー、それにするんだ、意外。ん? もしかして俺を誘ってる?」

「いや、もう誘うやつは決めてる」

「俺より別の男がいいっていうの? ひどい! 弄ばれた!」

「悪いな、お前とは遊びだったんだ」

 そんな反応じゃつまらないとブーたれる颯太をいなしながら、俺は放課後までに高林を誘うと心に決める。



「え?」

 次の休み時間、教室を出る高林を追いかけ呼び止めた。競技に誘うと、高林は驚きすぎたのかいつもは返ってこない返事が返ってきた。返事というか、思わず出たっていう感じだが。予想外にイケボだな。もっとこう、頼りなさげな弱々しい高めの声をイメージしていたんだが。

「だから、俺と一緒にやんね? 二人三脚」

 一瞬フリーズした高林は、いつものようにキョドりながらも意を決したように小さく口を動かす。

「ど……どうして俺……?」

「ん? キャッチボールした仲じゃん。嫌?」

 俺は首を傾げて高林を見上げる。こいつ背筋伸ばしたら北斗くらいあるんじゃねぇか? それにしても一人称は「俺」なのか。「僕」じゃないんだな。これも意外だ。

 再びフリーズした高林と、高林の前髪越しに見つめ合う。ダメか? もう一押しか?

「俺、お前とやりたいんだけど……」

「っ……! お……俺、多分迷惑」

「迷惑だなんて思わねぇし、一緒に練習しよう?」

 大丈夫だ、俺は高林がどれだけトロくとも、根気強く付き合う心づもりだ。迷惑だなんて絶対言わない。前髪で目は見えないが、おそらく目があるであろう場所を俺の思いが通じるようにじっと見つめる。

「う……わかっ……た」

「ありがとう! じゃあよろしくな!」

 俺は心の中でガッツポーズを決めながら右手を差し出す。俺の手と顔を交互に数回見比べた後、高林はおそるおそる俺の手を握る。ん? 手もデカくてごついな。もっとひょろっとしていると思ったが。

「よろしく……」

 小さく呟くような声に、俺はにんまりと笑う。
 高林、俺がお前に楽しい体育祭を味わわせてやるからな!
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