前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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6 高林に構う理由

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 放課後の競技決めでは無事俺と高林で二人三脚に出場することが決まった。まさか俺が高林と組むとは思っていなかったのか、クラスメイトたちが騒ついていた。まあ、そうだよな、俺と高林じゃあまりにキャラが違うし、これまで二人で親しくしていた、ということもない。
 颯太にも驚かれたしな。

 そして今、北斗にも驚かれている。

「まじかよ裕也! 高林とどうやって仲良くなったんだよ! 俺はフルシカトだったのに!」

 学校帰りに寄ったモックで話題は体育祭に。颯太が俺と高林が二人三脚に出場すると言ったら北斗が食いついてきた。

「ね、びっくりだよね。話してるところとか見たことなかったのに、本当いつの間に仲良くなったのー?」

 北斗に詰められ、颯太には不思議そうな目を向けられる。

「んー、まあそりゃ俺の人徳のなすところっていうか?」

「いやいや北斗くんの人徳もなかなかよ? 見てこの汚れなき瞳」

「あー……濁りきってんなぁ」

 ひどいわ! と裏声で泣き真似をして義和に抱きつき邪険にされる北斗。情報量が多い。

「俺はその高林ってやつ知らねぇけど、そんなに変わったやつなのか?」

「うーん……変わってるというか……」

 一言でいうと陰キャ。でも陰キャなんて高林に限らず他にもいる。高林の独自性といえばなんだろうか。俺が気になってしまうのは前世の俺に似ているからだけど、前世の記憶があるなんて言っても信じてくれないだろうし。何より前世の自分の話をするのは恥ずかしい。

「俺もまだほとんど喋ったことないからよくわかんねぇんだよな」

「ほとんど喋ったことねぇのに二人三脚誘ったのかよ。なんで誘ったんだよ」

 義和からのもっともな質問。なんで高林を誘ったか。それは一言じゃ説明できない。

「いや……体育でさ、出席番号前後だからキャッチボールのペア組むんだけど、高林運動苦手っぽくてさ。二人三脚なら楽しめるんじゃねぇかなって」

「やぁだ裕也くんったらやっさしー」

「北斗まじそれ背筋ぞわぞわするからやめろ」

 義和は、お前そんなキャラだっけ? と呟きながら飲み物を飲んでいる。颯太はもうこの話題に飽きたのか黙々とポテトを頬張っている。

「俺は優奈さんが応援に来るからリレーで大活躍する予定なんで、みんな熱い応援よろしくな」

「おう! 転けろコールは俺と義和に任せとけ」

「やめいやめい!」

 優奈さんは今年卒業した先輩で、北斗の彼女である。チャラチャラしているように見えて一途な北斗は、優奈さんにぞっこんである。

「つーかさ、裕也も颯太もモテるのに、彼女作らねぇの?」

「おいこら北斗、なんで俺外した? なんで俺外した?」

 詰め寄る義和にハンズアップする北斗。ツッコミ待ちだったのぉ、怒らないでぇ、とまた裏声。本当に背筋がぞわぞわする。

「とまあ北斗のバカはいいとして、確かにお前ら彼女作らねぇよな」

「ん? なになに恋話しちゃう?」

 俺が茶化すとまずいものを食べたみたいな顔をした義和がやっぱいいわと話を終わらせた。

 彼女な、欲しいか欲しくないかでいったらそりゃ欲しい。だがしかし、前世のことを思い出してからというもの、前世の俺を心底気持ち悪いものを見るような目がトラウマになって、女子がちょっと怖いんだよな。友達ならいいんだが、深い関係に、となるとあの目が頭にちらついてしまう。
 これは前世を思い出した弊害だな。

 ひとしきりだべってから北斗たちと解散した後、家へ帰って一人になった俺は、何で高林を誘ったのか、という義和の質問を改めて考える。
 まあ、高林に楽しい思い出を作りたい、というのは嘘ではない。
 でも、俺の高林に対するこの気持ちは、正義感からきたものでも、優しさからきたものでもない。もっと、利己的なものだ。
 俺は、前世の記憶を思い出した時、哀れな前世の俺に手を差し伸べたい、助けたいと思った。けれど、そんなことはできるはずがなかった。
 だから、前世の俺に似た高林に手を差し伸べることで、前世の俺を救いたい。高林に前世の俺を重ねて、前世の俺にやってやりたかったことを実践したいんだ。
 つまり、俺がしていることは、どこまでも自分本位で自分勝手な行為なのである。
 
 もしかしたら、高林にとって俺の行動は迷惑かもしれない。余計なお世話かもしれない。
 
 それでも、高林に明確に拒絶されるまでは、前世の俺が望んでいたことをやっていこうと思う。

「まぁ、今のところは嫌がられてなさそうだし?」

 二人三脚に誘ったときも、困惑はしていたようだが拒絶は感じなかった。
 次の体育から練習も始まるし、少しずつ距離を縮めて仲良くならんとな!
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