前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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7 体育祭の練習

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「よし、じゃあ練習するか」

 待ちに待った練習の時間。俺は、はちまきを持って高林を誘った。
 高林は相変わらずキョドキョドしている。

「ほ……ほんとに……俺と?」

 先日正式にペアに決まったというのに、まだ高林は信じられないようだ。
 周りも何人かが好奇の目で俺たちを見ている。それも気になるのかもしれない。
 だが、こんなのは気にしないで堂々としていればいい。何でもない顔していれば、周りもそういうもんだと思って関心を失うのだ。まあ、前世の俺もそんなことできなかったので、高林がビクつくのもわかるが。

「おう。あっちで練習しよう」

 人気のないところの方が気にせず練習できるだろうと、周囲から距離があり、死角になっているところへ高林を誘う。高林はなぜか一瞬フリーズし、ぎこちなく頷いた後俺についてきた。

 周囲の目がなくなったところで、俺は振り向き高林に腰を下ろすように言う。

 まずは一回走ってみて、どんな感じかみないとな。

 俺と高林はおそらく10センチ以上の身長差がある。よく見ると高林の足は長いし、歩幅を合わせてもらわないと大惨事になるだろう。

「まず軽く合わせてみて、少しずつ調整していこうな」

「あ、あの! な……何でここで?」

 高林が思いの外大きな声を出したので驚いた。何だお前、そんなに大きな声出せるのか。やればできるじゃないか。

「ん? 人がいないとこの方が気が楽かなって」

 そう言うと、そわついた様子の高林は、あー、とかうー、とか言っている。どうした高林。

「……ありがとう」

「おう。じゃあさっそくやろうぜ」

 なるほど、お礼を言うのに照れていたんだな。前世の俺はお礼をまともに言えたことがないから、高林の方がコミュ力は上か。

 そうして一度軽く走ってみたが、結果は散々だった。思っていた以上にテンポが合わない。

「あのさ、高林なんでそんな離れて走るんだよ。足引っ張られてうまく走れねぇだろ。ほら、ちょっと手ぇ貸せ」

 人との接触に慣れてないのか、高林は二人三脚だというのに距離を取ろうとするのだ。俺は高林の腕を引っ張って俺の腰に回す。

「こんくらい近い方が走りやすいんだよ。あと高林の方が背が高いから悪ぃけど歩幅は俺に合わせてくれ。……聞いてるか?」

 あまりに高林の反応がないので見上げると、やつは再びフリーズしている。
 あ、いきなりこの距離感はダメだったか? 
 
「あー……悪ぃ。馴れ馴れしすぎたな」

「えっ!? あ、待ってごめ……っ」

「ちょ! 待てまだ足が」

 意識を取り戻した高林が慌てて俺と距離を取ろうとしたが、まだ俺の足と高林の足はつながっていた。

 結果は言うまでもない。

「いってぇ……」

 見事後ろにひっくり返った高林。もちろん俺も道連れである。距離感にびびって足のことを忘れてたんだろう。わかってる。多分前世の俺も同じことをしただろう。俺が迂闊だった。
 しかし、高林の上に重なるように倒れたはずだが、なんか硬い?

 顔を上げるとやっぱり俺は高林の上に乗っかっている。ちょうど顔を高林の胸にぶつけたようだ。つかあれ、腹……腹が硬いぞ。高林腹筋鍛えてんの? 筋トレ趣味なのかな?

「あ……あのっ」

 思わず高林の腹を撫でていると、焦ったような声が頭の上から聞こえてきた。

「あ、悪ぃ。腹硬いからびっくりして……。高林鍛えてんだな」

「あ……うん……。ごめん。巻き込んじゃって」

「いや、俺が急に近づいたからびっくりしたんだろ? それに俺は高林の上に転けたからそこまで痛くなかったし。そっちは大丈夫か?」 

 聞くと、高林はこくこくと頷く。

「でも、二人三脚やるんだから本番までにはこれくらいの距離に慣れてくれるとありがたい。ゆっくりでいいから」

「うん、わかった。……高柳くん、そろそろ降りてもらっても……」

「あ、悪ぃ。重かったよな」

 意外なほど高林の上は安定感があったため落ち着いてしまった。高林から降りると、なんとなく気まずい空気が流れる。

「……あっち戻るか」

「え? あ……いや、もうちょっと練習しない?」

 てっきり頷くと思った高林からまさかの提案がきて驚く。というかさっきから普通に喋ってない? 全然キョドキョドしてないぞ? え? もう俺に慣れたのか?

「ああ、じゃあもう一回やるか」

 まあ、なんだっていい。これはいい傾向だ。このまま仲良くなれればいい。

 この後、俺と高林は時間いっぱいまで二人で練習をした。高林は俺のアドバイス通り、俺の腰に手を回して走るようになったし、最後の方は歩幅も合うようになった。
 体育祭に向けて確かな手応えを感じ、俺は心の中でガッツポーズを決めた。
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