7 / 38
7 体育祭の練習
しおりを挟む
「よし、じゃあ練習するか」
待ちに待った練習の時間。俺は、はちまきを持って高林を誘った。
高林は相変わらずキョドキョドしている。
「ほ……ほんとに……俺と?」
先日正式にペアに決まったというのに、まだ高林は信じられないようだ。
周りも何人かが好奇の目で俺たちを見ている。それも気になるのかもしれない。
だが、こんなのは気にしないで堂々としていればいい。何でもない顔していれば、周りもそういうもんだと思って関心を失うのだ。まあ、前世の俺もそんなことできなかったので、高林がビクつくのもわかるが。
「おう。あっちで練習しよう」
人気のないところの方が気にせず練習できるだろうと、周囲から距離があり、死角になっているところへ高林を誘う。高林はなぜか一瞬フリーズし、ぎこちなく頷いた後俺についてきた。
周囲の目がなくなったところで、俺は振り向き高林に腰を下ろすように言う。
まずは一回走ってみて、どんな感じかみないとな。
俺と高林はおそらく10センチ以上の身長差がある。よく見ると高林の足は長いし、歩幅を合わせてもらわないと大惨事になるだろう。
「まず軽く合わせてみて、少しずつ調整していこうな」
「あ、あの! な……何でここで?」
高林が思いの外大きな声を出したので驚いた。何だお前、そんなに大きな声出せるのか。やればできるじゃないか。
「ん? 人がいないとこの方が気が楽かなって」
そう言うと、そわついた様子の高林は、あー、とかうー、とか言っている。どうした高林。
「……ありがとう」
「おう。じゃあさっそくやろうぜ」
なるほど、お礼を言うのに照れていたんだな。前世の俺はお礼をまともに言えたことがないから、高林の方がコミュ力は上か。
そうして一度軽く走ってみたが、結果は散々だった。思っていた以上にテンポが合わない。
「あのさ、高林なんでそんな離れて走るんだよ。足引っ張られてうまく走れねぇだろ。ほら、ちょっと手ぇ貸せ」
人との接触に慣れてないのか、高林は二人三脚だというのに距離を取ろうとするのだ。俺は高林の腕を引っ張って俺の腰に回す。
「こんくらい近い方が走りやすいんだよ。あと高林の方が背が高いから悪ぃけど歩幅は俺に合わせてくれ。……聞いてるか?」
あまりに高林の反応がないので見上げると、やつは再びフリーズしている。
あ、いきなりこの距離感はダメだったか?
「あー……悪ぃ。馴れ馴れしすぎたな」
「えっ!? あ、待ってごめ……っ」
「ちょ! 待てまだ足が」
意識を取り戻した高林が慌てて俺と距離を取ろうとしたが、まだ俺の足と高林の足はつながっていた。
結果は言うまでもない。
「いってぇ……」
見事後ろにひっくり返った高林。もちろん俺も道連れである。距離感にびびって足のことを忘れてたんだろう。わかってる。多分前世の俺も同じことをしただろう。俺が迂闊だった。
しかし、高林の上に重なるように倒れたはずだが、なんか硬い?
顔を上げるとやっぱり俺は高林の上に乗っかっている。ちょうど顔を高林の胸にぶつけたようだ。つかあれ、腹……腹が硬いぞ。高林腹筋鍛えてんの? 筋トレ趣味なのかな?
「あ……あのっ」
思わず高林の腹を撫でていると、焦ったような声が頭の上から聞こえてきた。
「あ、悪ぃ。腹硬いからびっくりして……。高林鍛えてんだな」
「あ……うん……。ごめん。巻き込んじゃって」
「いや、俺が急に近づいたからびっくりしたんだろ? それに俺は高林の上に転けたからそこまで痛くなかったし。そっちは大丈夫か?」
聞くと、高林はこくこくと頷く。
「でも、二人三脚やるんだから本番までにはこれくらいの距離に慣れてくれるとありがたい。ゆっくりでいいから」
「うん、わかった。……高柳くん、そろそろ降りてもらっても……」
「あ、悪ぃ。重かったよな」
意外なほど高林の上は安定感があったため落ち着いてしまった。高林から降りると、なんとなく気まずい空気が流れる。
「……あっち戻るか」
「え? あ……いや、もうちょっと練習しない?」
てっきり頷くと思った高林からまさかの提案がきて驚く。というかさっきから普通に喋ってない? 全然キョドキョドしてないぞ? え? もう俺に慣れたのか?
「ああ、じゃあもう一回やるか」
まあ、なんだっていい。これはいい傾向だ。このまま仲良くなれればいい。
この後、俺と高林は時間いっぱいまで二人で練習をした。高林は俺のアドバイス通り、俺の腰に手を回して走るようになったし、最後の方は歩幅も合うようになった。
体育祭に向けて確かな手応えを感じ、俺は心の中でガッツポーズを決めた。
待ちに待った練習の時間。俺は、はちまきを持って高林を誘った。
高林は相変わらずキョドキョドしている。
「ほ……ほんとに……俺と?」
先日正式にペアに決まったというのに、まだ高林は信じられないようだ。
周りも何人かが好奇の目で俺たちを見ている。それも気になるのかもしれない。
だが、こんなのは気にしないで堂々としていればいい。何でもない顔していれば、周りもそういうもんだと思って関心を失うのだ。まあ、前世の俺もそんなことできなかったので、高林がビクつくのもわかるが。
「おう。あっちで練習しよう」
人気のないところの方が気にせず練習できるだろうと、周囲から距離があり、死角になっているところへ高林を誘う。高林はなぜか一瞬フリーズし、ぎこちなく頷いた後俺についてきた。
周囲の目がなくなったところで、俺は振り向き高林に腰を下ろすように言う。
まずは一回走ってみて、どんな感じかみないとな。
俺と高林はおそらく10センチ以上の身長差がある。よく見ると高林の足は長いし、歩幅を合わせてもらわないと大惨事になるだろう。
「まず軽く合わせてみて、少しずつ調整していこうな」
「あ、あの! な……何でここで?」
高林が思いの外大きな声を出したので驚いた。何だお前、そんなに大きな声出せるのか。やればできるじゃないか。
「ん? 人がいないとこの方が気が楽かなって」
そう言うと、そわついた様子の高林は、あー、とかうー、とか言っている。どうした高林。
「……ありがとう」
「おう。じゃあさっそくやろうぜ」
なるほど、お礼を言うのに照れていたんだな。前世の俺はお礼をまともに言えたことがないから、高林の方がコミュ力は上か。
そうして一度軽く走ってみたが、結果は散々だった。思っていた以上にテンポが合わない。
「あのさ、高林なんでそんな離れて走るんだよ。足引っ張られてうまく走れねぇだろ。ほら、ちょっと手ぇ貸せ」
人との接触に慣れてないのか、高林は二人三脚だというのに距離を取ろうとするのだ。俺は高林の腕を引っ張って俺の腰に回す。
「こんくらい近い方が走りやすいんだよ。あと高林の方が背が高いから悪ぃけど歩幅は俺に合わせてくれ。……聞いてるか?」
あまりに高林の反応がないので見上げると、やつは再びフリーズしている。
あ、いきなりこの距離感はダメだったか?
「あー……悪ぃ。馴れ馴れしすぎたな」
「えっ!? あ、待ってごめ……っ」
「ちょ! 待てまだ足が」
意識を取り戻した高林が慌てて俺と距離を取ろうとしたが、まだ俺の足と高林の足はつながっていた。
結果は言うまでもない。
「いってぇ……」
見事後ろにひっくり返った高林。もちろん俺も道連れである。距離感にびびって足のことを忘れてたんだろう。わかってる。多分前世の俺も同じことをしただろう。俺が迂闊だった。
しかし、高林の上に重なるように倒れたはずだが、なんか硬い?
顔を上げるとやっぱり俺は高林の上に乗っかっている。ちょうど顔を高林の胸にぶつけたようだ。つかあれ、腹……腹が硬いぞ。高林腹筋鍛えてんの? 筋トレ趣味なのかな?
「あ……あのっ」
思わず高林の腹を撫でていると、焦ったような声が頭の上から聞こえてきた。
「あ、悪ぃ。腹硬いからびっくりして……。高林鍛えてんだな」
「あ……うん……。ごめん。巻き込んじゃって」
「いや、俺が急に近づいたからびっくりしたんだろ? それに俺は高林の上に転けたからそこまで痛くなかったし。そっちは大丈夫か?」
聞くと、高林はこくこくと頷く。
「でも、二人三脚やるんだから本番までにはこれくらいの距離に慣れてくれるとありがたい。ゆっくりでいいから」
「うん、わかった。……高柳くん、そろそろ降りてもらっても……」
「あ、悪ぃ。重かったよな」
意外なほど高林の上は安定感があったため落ち着いてしまった。高林から降りると、なんとなく気まずい空気が流れる。
「……あっち戻るか」
「え? あ……いや、もうちょっと練習しない?」
てっきり頷くと思った高林からまさかの提案がきて驚く。というかさっきから普通に喋ってない? 全然キョドキョドしてないぞ? え? もう俺に慣れたのか?
「ああ、じゃあもう一回やるか」
まあ、なんだっていい。これはいい傾向だ。このまま仲良くなれればいい。
この後、俺と高林は時間いっぱいまで二人で練習をした。高林は俺のアドバイス通り、俺の腰に手を回して走るようになったし、最後の方は歩幅も合うようになった。
体育祭に向けて確かな手応えを感じ、俺は心の中でガッツポーズを決めた。
0
あなたにおすすめの小説
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
令嬢に転生したと思ったけどちょっと違った
しそみょうが
BL
前世男子大学生だったが今世では公爵令嬢に転生したアシュリー8歳は、王城の廊下で4歳年下の第2王子イーライに一目惚れされて婚約者になる。なんやかんやで両想いだった2人だが、イーライの留学中にアシュリーに成長期が訪れ立派な青年に成長してしまう。アシュリーが転生したのは女性ではなくカントボーイだったのだ。泣く泣く婚約者を辞するアシュリーは名前を変えて王城の近衛騎士となる。婚約者にフラれて隣国でグレたと噂の殿下が5年ぶりに帰国してーー?
という、婚約者大好き年下王子☓元令嬢のカントボーイ騎士のお話です。前半3話目までは子ども時代で、成長した後半にR18がちょこっとあります♡
短編コメディです
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない
綿毛ぽぽ
BL
アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。
━━━━━━━━━━━
現役人気アイドル×脱落モブ男
表紙はくま様からお借りしました
https://www.pixiv.net/artworks/84182395
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる