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8 何かがおかしいような気がする
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二人での練習を境に、高林の俺に対する態度に大きな変化が現れた。
「おー、高林おはよー」
「おはよう」
なんと高林から挨拶が返ってくるようになったのだ。
これには周囲も騒ついた。高林の声を初めて聞くやつがほとんどだったのだ。
しかし他のやつが挨拶しても、高林は返事をしない。これまで通りビクビクしている。
「ねぇ、高林くんに何したの? 裕也としか話さないよね」
「何もしてねーよ。まぁ、二人三脚する仲だしな」
休み時間、沙耶香に聞かれるも、俺もよくわかっていない。
二人で練習したことで、俺は怖くないとわかったのかもしれない。でも、あの時間だけで? とは思う。多分前世の俺なら、自分のせいで相手を転ばせてしまったことを気にして、さらに避けただろう。口では大丈夫、気にしていないと言われても、心の中ではきっとふざけんなと思われているはずだという謎のネガティブを発揮して。
まあ、似ているといっても、前世の俺と高林は別人だから、高林はそこまでネガティブ思考ではないのかもしれない。
「確かに二人で練習してれば仲良くなるだろうけど、でも挨拶くらいなら返してくれたっていいのにー」
「んー? 見てるとシカトしてるわけじゃなくて、人見知りしてる感じな気がするけどな?」
「え? もう新しいクラスになって結構経つのに、まだ人見知りされてるの?」
目を丸くする沙耶香に苦笑いする。そうだよな、さすがにこれだけ時間が経って人見知りって……って思うよな。でもそういうやつもいるんだ。前世の俺や、高林みたいに。
「高林見てるとそんな感じするけどな。俺には慣れたんだろ」
「裕也はそんなに高林のこと見てるの?」
颯太に不思議そうに聞かれ、一瞬頭が真っ白になる。確かに俺は結構高林を観察している。しているが、それがバレるのはまずい。特に仲良くもないクラスメイトをよく見ているとか、明らかにヤバいやつだろ。
「席が前だからな。目に入るんだよ」
しかし俺はこういうとき、スルッと言葉が出てくる。ありがとう俺の脳。
まあそんな感じでそれとなく陰ながら高林をフォローしつつ挨拶を交わす日々を送っていたわけだが。
「高柳くん、今日お昼一緒に食べない?」
「え、俺と? あ、じゃあ颯太とか……」
「高柳くんと二人がいいんだけど……他の人いると緊張するから……」
何度目かの練習日、練習終わりに突然高林に飯を誘われ、俺は内心パニックだった。
お前、人を誘う勇気あったの? というか、なんで俺にだけそんなに懐いてんの? 確かに気にはしていたけど、普段挨拶以外してないよな?
「なんで俺?」
気になることは聞けばいい。高林は俺の質問にはキョドキョドしないしな。あれ? それもなんかちょっと違和感が。
「俺を誘ってくれたの、高柳くんだけだし。迷惑だった……?」
後半、明らかに落ち込んだようにトーンダウンする声。
まずい。ここで俺が拒否してしまったら、高林は俺とすら話せなくなるだろう。きっと高林は今、俺が思っている以上に勇気を出しているはずだ。
「いや、それはいいんだけど。俺、弁当じゃねぇから食堂になるけどいいのか?」
「ああ、それなら俺が弁当作ってるから、一緒に食べよう」
弁当? え? それ俺の分もあるの? なんで俺の分まで作ってんの? とツッコミかけたが、何かそれは言ってはいけないような、謎の圧を高林から感じる。
あ、でもあれか。誘おうと意気込んで、つい先走って弁当作っちゃったみたいな? 人との距離の詰め方がわからないんだよな、きっと。前世の俺も色々頑張る方向間違えてたし、高林も喜んでもらえるだろうと思って作ったんだよな、きっと。
だとしたら、これは受け入れてやって、後でやんわりと、いきなりそういうのは驚くってことを伝えてやろう。
「まじか。俺の分まで作ってくれたんだな。じゃあ教室で」
「いつも一人で食べてるとこあるから、そこでいいよね?」
被された。おいおい、人の話は最後まで聴くもんだぞ高林。
ああでも、それだけ必死なのか。どうやって誘うかとか、どこへ誘うかとか、考えて考えて、やっと絞り出しているんだろう。何ならセリフの練習もしているかもしれない。うん、前世の俺もしていた。練習してもうまく喋れなかったけど。
高林はなんか堂々としているように見えるけど、多分内心は心臓バクバクなんだろうな。
じゃあもう、俺の答えは一つしかない。
「りょーかい。じゃあ、また昼に」
そう言うと、高林の口元が嬉しそうに弧を描く。
それを見てほっとしたものの、なんだろうな、何か腑に落ちないんだよな。
「ありがとう、優しいね、高柳くん」
「いや別に、ふつーだろ、ふつー」
違和感を覚えながらも高林に返事をしていたらチャイムが鳴り、そのまま解散となった。
とりあえず、昼飯の時に色々話せるだろうし、そこでもうちょい高林のキャラが掴めるだろ、と俺は呑気に考えていた。
「おー、高林おはよー」
「おはよう」
なんと高林から挨拶が返ってくるようになったのだ。
これには周囲も騒ついた。高林の声を初めて聞くやつがほとんどだったのだ。
しかし他のやつが挨拶しても、高林は返事をしない。これまで通りビクビクしている。
「ねぇ、高林くんに何したの? 裕也としか話さないよね」
「何もしてねーよ。まぁ、二人三脚する仲だしな」
休み時間、沙耶香に聞かれるも、俺もよくわかっていない。
二人で練習したことで、俺は怖くないとわかったのかもしれない。でも、あの時間だけで? とは思う。多分前世の俺なら、自分のせいで相手を転ばせてしまったことを気にして、さらに避けただろう。口では大丈夫、気にしていないと言われても、心の中ではきっとふざけんなと思われているはずだという謎のネガティブを発揮して。
まあ、似ているといっても、前世の俺と高林は別人だから、高林はそこまでネガティブ思考ではないのかもしれない。
「確かに二人で練習してれば仲良くなるだろうけど、でも挨拶くらいなら返してくれたっていいのにー」
「んー? 見てるとシカトしてるわけじゃなくて、人見知りしてる感じな気がするけどな?」
「え? もう新しいクラスになって結構経つのに、まだ人見知りされてるの?」
目を丸くする沙耶香に苦笑いする。そうだよな、さすがにこれだけ時間が経って人見知りって……って思うよな。でもそういうやつもいるんだ。前世の俺や、高林みたいに。
「高林見てるとそんな感じするけどな。俺には慣れたんだろ」
「裕也はそんなに高林のこと見てるの?」
颯太に不思議そうに聞かれ、一瞬頭が真っ白になる。確かに俺は結構高林を観察している。しているが、それがバレるのはまずい。特に仲良くもないクラスメイトをよく見ているとか、明らかにヤバいやつだろ。
「席が前だからな。目に入るんだよ」
しかし俺はこういうとき、スルッと言葉が出てくる。ありがとう俺の脳。
まあそんな感じでそれとなく陰ながら高林をフォローしつつ挨拶を交わす日々を送っていたわけだが。
「高柳くん、今日お昼一緒に食べない?」
「え、俺と? あ、じゃあ颯太とか……」
「高柳くんと二人がいいんだけど……他の人いると緊張するから……」
何度目かの練習日、練習終わりに突然高林に飯を誘われ、俺は内心パニックだった。
お前、人を誘う勇気あったの? というか、なんで俺にだけそんなに懐いてんの? 確かに気にはしていたけど、普段挨拶以外してないよな?
「なんで俺?」
気になることは聞けばいい。高林は俺の質問にはキョドキョドしないしな。あれ? それもなんかちょっと違和感が。
「俺を誘ってくれたの、高柳くんだけだし。迷惑だった……?」
後半、明らかに落ち込んだようにトーンダウンする声。
まずい。ここで俺が拒否してしまったら、高林は俺とすら話せなくなるだろう。きっと高林は今、俺が思っている以上に勇気を出しているはずだ。
「いや、それはいいんだけど。俺、弁当じゃねぇから食堂になるけどいいのか?」
「ああ、それなら俺が弁当作ってるから、一緒に食べよう」
弁当? え? それ俺の分もあるの? なんで俺の分まで作ってんの? とツッコミかけたが、何かそれは言ってはいけないような、謎の圧を高林から感じる。
あ、でもあれか。誘おうと意気込んで、つい先走って弁当作っちゃったみたいな? 人との距離の詰め方がわからないんだよな、きっと。前世の俺も色々頑張る方向間違えてたし、高林も喜んでもらえるだろうと思って作ったんだよな、きっと。
だとしたら、これは受け入れてやって、後でやんわりと、いきなりそういうのは驚くってことを伝えてやろう。
「まじか。俺の分まで作ってくれたんだな。じゃあ教室で」
「いつも一人で食べてるとこあるから、そこでいいよね?」
被された。おいおい、人の話は最後まで聴くもんだぞ高林。
ああでも、それだけ必死なのか。どうやって誘うかとか、どこへ誘うかとか、考えて考えて、やっと絞り出しているんだろう。何ならセリフの練習もしているかもしれない。うん、前世の俺もしていた。練習してもうまく喋れなかったけど。
高林はなんか堂々としているように見えるけど、多分内心は心臓バクバクなんだろうな。
じゃあもう、俺の答えは一つしかない。
「りょーかい。じゃあ、また昼に」
そう言うと、高林の口元が嬉しそうに弧を描く。
それを見てほっとしたものの、なんだろうな、何か腑に落ちないんだよな。
「ありがとう、優しいね、高柳くん」
「いや別に、ふつーだろ、ふつー」
違和感を覚えながらも高林に返事をしていたらチャイムが鳴り、そのまま解散となった。
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