前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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9 高林との昼飯

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 昼の時間になって、高林がそわそわした様子で俺をチラチラと見る。
 わかってる、約束は守る男だぞ俺は。

「んじゃいくか、高林」

「あれ? 裕也どこいくの?」

 高林と連れ立って教室を出ようとした俺に、颯太が声をかけてくる。あ、そうだ、いかんいかん。ちゃんと言っておかないとな。

「ああ、今日はちょっと高林と飯食うから、北斗たちに言っといてくれ」

 そう言うと、いつの間にそんな仲に? と颯太は目を丸くした。

「それ、俺も一緒じゃダメなの?」

「あー……」

 いや、そうだよな。別に颯太がいても、というか、いた方が友だちが増えていいんじゃないか? さっきは他の人がいると緊張するって言っていたけど、多少無理してでも他の人とも喋ってみたほうがいいんじゃないか?
 そう思って高林の方を見ると、小刻みに首を左右に振っている。そうか、ダメか。

「今日は体育祭に向けた作戦会議だから、また今度なー」

「めっちゃ気合入ってるじゃん。……わかったよ」

 颯太は腑に落ちないような顔をしたものの、空気を読んで引いてくれた。
 そのまま何もなかったように、じゃあまた午後、と言って颯太は教室を出て行った。今日の昼の話題は俺と高林の関係についてだろうな。後で北斗から質問責めされそうだ。

「じゃ、高林案内してくれ」

 こくりと頷いた高林についていく。普段高林はこれから行くところで食べてるってことだよな。
 前世の俺は校舎裏の小汚い階段付近で食べてたけど、高林もそんな感じなのかな。でも、そうだとしたら俺、教室のがよかったなぁ。
 そんなことを考えながら歩いていると、廊下の途中で高林が止まった。

「いつもここで食べてるんだ」

 そう言われ、指し示されたのは化学室。え? どういうこと?

「一年の時の担任が化学の担当で、ここを使ってもいいって言ってくれたんだ」

 俺が疑問に思っていると、高林が説明してくれた。
 まじか。ぼっちな高林のためにそんなことを。いい先生もいたもんだな。前世の俺の時もそんな先生がいてくれたらなぁ。

 ガラリと扉を引いて中へ入る高林に続く。

「じゃあ、早速食べようか」

 そう言って高林が手に持っていた、風呂敷に包まれた物を机の上に置く。
 やっぱ、それ弁当だよな。薄々気づいていたけど、ちょっと見なかったことにしていたけど、弁当だよな。

 高林が風呂敷を開くと出てきたのは……ほらぁ! やっぱお重じゃん! なんで? お前今までそんなん持って学校来てなかったよな? 気合入れすぎだろ! そんなん俺以外にやったら引かれるぞ!

「口に合うんといいんだけど……」

 いや、そういうことじゃない。気合の入り方が尋常じゃなさすぎるところをまずは気にしてくれ。
 わかってる。わかってるさ。誘うからには手を抜いた物ではいけないと思ったんだよな。なんなら俺の好みも分からないから色々準備して、きっとそのお重しか入るものがなかったんだろう。
 というか、どこにも冷凍食品らしきものがないのだが……。

「これ、全部高林が作ったのか?」

 一段目には弁当のド定番の唐揚げや卵焼きもちろん、飾り切りされたレンコンのきんぴら、ピーマンの肉詰めなどなど。
 二段目にはひじきご飯のいなり寿司やら俵のおにぎりやら。
 これ、相当時間かかってるだろ……。

「うん、高柳くんの好きなものとかわからなかったから、たくさん作っちゃった」

 予想通り。だけども、いや、これはいくらなんでもやり過ぎだ。友だちになりたい相手にこんな尽くし方をしていたら、都合の良いやつになっちまう。俺だからいいが、変なやつに捕まったらいいように使われちまう。

「高林、頑張ってくれたのは嬉しいし、すげぇうまそうだけど、ここまでしてくれなくても飯くらい一緒に食うからさ。そんなに無理すんなよ」

「え? そしたら明日も一緒に食べてくれる?」

 いや、そっちじゃねぇ! 俺が伝えたかったのはそっちじゃねぇ! なんだよさっきからすげぇスムーズに会話できてたのに、やっぱり空気読めないのか高林。あー、わかっちゃいたけど、そうなんだよなぁ。あまりに普通に受け答えするから、つい高林がコミュ障なの忘れてたわ。

「まあ、それはいいんだが、そうじゃなくて」

「ほんとに!? 嬉しいなぁ」

 だから、被ってんだって! 話は、最後まで聴けと! って言ってなかったな。思っただけだったわ。
 しかし、嬉しそうにしている高林にこれ以上言うのもな。まあ、一応言うべきことは言ったし、明日もこの調子だったらもう一度言うか。
 
「ほら、せっかく作ってきたから食べて欲しいな」

「おう、いただきます」

 今日はもう細かいことを言うのはやめて、本来の目的である食事をすることにした。目の前にうまそうな食べ物並べられて、俺の腹も限界だし。
 目移りしながらも抗えない唐揚げの魅力に箸が吸い寄せられる。

「うっっっま」

「よかった。たくさん食べてね」

「高林料理の天才かよ。冷めてんのに唐揚げうめぇ」

 高林作の弁当はめっちゃうまかった。
 結構な量があったが、食べ盛りの二人の手にかかれば瞬殺で。
 あんまりうまかったから、明日も作るね、と言う高林の申し出を断ることができなかった。
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