前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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16 体育祭1

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 朝、カーテンの隙間から部屋に差す細い光で目が覚めた。大きく伸びをしてからベッドを降りてカーテンの前に立つと、漏れる光がじんわりと身体を温める。勢いよく合わせ目を引くと、シャッという軽快な音と共に、思わず目を眇めるほどの光が部屋に入ってくる。

 うん、抜群の体育祭日和だ。

 むくむくと胸の奥から期待が溢れ、今日は素晴らしい一日になるだろう、と予感した。



「うぇーい! 裕也調子はどうよ!」

「うぇーいって古いわ! うわっまとわりつくなし! なんなんそのテンション」

 開会式を終えクラスのブースへ移動していたところ、俺を見つけた北斗がタックルをかましてきた。そしてそのまま抱きついてくる。なんだこのウザ絡み。おいこら、義和見てないで助けろ。

「優奈さんが急用でこられなくなったみたいでな、今日ばかりは耐えろ、裕也」

「優奈さーん! 寂しいよおぉぉお!」

 あー、それでか。優奈さんは都内の大学へ進学したから、いくら隣県とはいえなかなか会えなくなったって嘆いてたもんな。いや、でもだからといって。

「暑苦しい!」

 べりっと北斗を自分から引き剥がすと、裕也くん冷たい……と泣き真似をする。

「優奈さんにいいとこ見せたかったのに。もうしばらく会えてないんだよ……やっぱ大学生と比べたら高校生なんてガキだから、嫌になったのかな」

 珍しく後ろ向きな発言をする北斗に驚き義和を見ると、義和は神妙な顔で頷いている。これはガチなやつだ。

「もしそうなら、優奈さんならはっきり言うだろ。なあなあにするタイプの人じゃないじゃん」

「それは……そうだけど。近々はっきり言われるかもしんないじゃん」

 両手で顔を覆い肩を落とす北斗。北斗がこんなに落ち込むのは珍しい。何か察するものがあるのかもしれない。そしてこればっかりは俺らにどうすることもできない。

「そしたら俺が北斗の勇姿を動画に収めてやるから、それを優奈さんに送れよ。かっこいいとこ見せて、惚れ直させてやりゃいいんだ」

「裕也……お前……」

 手から顔を上げた北斗は手をわなわなと震わせてからガバリと俺に抱きつく。

「天才かよ! 最高! チューしちゃう!」

「ちょ! それが天才にする仕打ちかよ! やめろ気持ち悪ぃ!」

 しばらくギャーギャー騒いでいると、早くブースに移動しろと教師にたしなめられた。俺は、「へーい」と返事をして北斗と義和と別れる。
 途中までいたはずの颯太は気付いたらいなかった。ちゃっかり移動して涼しい顔してやがる。
 俺が颯太のところまで小走りで駆け寄ると、気付いた颯太が笑顔を向けてくる。いや、誤魔化されないからな。

「颯太こら、一人で逃げんなし」

「いやー、北斗のことは裕也に任せておけばいいかと思って」

「なんでだよ。おかげでほっぺにちゅーくらったんだぞ」

 唇は死守した。こんなナリだが俺はまだファーストキスもしていないピュアピュアボーイなのだ。それを北斗なんかに奪われてたまるか。

「うん、見てたよー。……高林も」

「へ?」

 なんで高林? と思いつつ颯太の視線の先を無意識に追って少し離れた場所に高林を見つける。同じクラスなので待機ブースは同じだが、競技が見えやすい前の方に陣取る俺らとは違い、高林は後ろの方に座っている。
 今日も相変わらず分厚い前髪に隠されて顔は見えないが、俺を見ている気がする。多分、目が合っている。
 そう思ってにへらと笑ってみたが、なぜか顔を逸らされた。え? 今目ぇ合ってたよな? いや、わからんけど。

「裕也って本当……小悪魔だよねぇ」

「何言ってんだ?」

「ふふふ……二人三脚頑張ってね?」
 
 意味深に微笑まれて、訳がわからず首を傾げる。颯太は天然だからかたまにこういうことあるんだよな。まあ、考えても仕方ない。脈絡はないように感じるが、颯太にとっては繋がってるんだろう。

「おう。そこそこいい感じのとこ狙えると思うんだよな」

 練習はいい感じだった。俺的にはもう少し速いペースで走りたいところだが、高林はやっぱ運動が苦手みたいでちょっともたつくんだよな。筋肉のつき具合見てると、運動できそうなのにな。

 このとき俺は高林が何を考えてるかなど全くわかっておらず、二人三脚は午後イチの競技だからそれまでは野次馬として盛り上げるかー、と呑気に考えていた。
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