前世の俺みたいだと思っていたけど全然違った件

某千尋

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22 週末のお出かけ2

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 おすすめされたコーヒーは美味しかった……気がする。なんせ普段コーヒーなんてほとんど飲まないし、コーヒーの味の違いなんてわからない。けど、多分これが美味しいコーヒーってやつなんだろうなって味がした。

「美味しかったね」

 にこやかに話しかけてくる由紀はコーヒーの味が分かるのだろうか。なんかわかってそうだな。そうだな、と同意しながら、やっぱり由紀は前世の俺とはちっとも似てないなと思う。
 気付くと店内は結構混んでいたので、コーヒーを飲み終わった俺らは店長に挨拶だけして店を後にした。ちなみに店長と由紀の関係は結局よくわからなかった。聞いても曖昧な感じで返されたので、深く突っ込むのはやめた。気にはなるけど、無理に聞き出すことじゃねぇしな。

 店を出た俺たちは、せっかくだからとぶらぶらすることにした。
 しかし、俺はこの判断を早々に後悔する。



「視線がうるせぇ」

 超絶美形な由紀はどこへ行っても注目の的なのだ。待ち合わせの時みたいに話しかけてくることはなくとも絶え間なくチラチラと視線を向けられ、うんざりしてきた。
 颯太と遊んだ時だってこんなんじゃなかったぞ。まあ、颯太は落ち着いた感じだから由紀ほど色気を放ってないもんな。しかも由紀は背もかなり高いからより目立つ。

「裕也は目立つもんね」

「いや俺じゃねぇ。どう考えても俺じゃねぇ」

 なのに由紀は全く自覚がないようでキョトンとしている。
 いやいや、その顔面で歩いてたらいつだってこんな感じだろうに、気付かないとかある?

「あ、普段はこっちの方来る時も前髪で顔隠してる感じ?」

「うん。一人の時はそうかなぁ」

 なるほど。いつもの由紀ならこんな感じにはならないだろうから、わからないのか。北斗の話の感じだと中学の時点で顔隠してたっぽいしな。

「ん? あれって……」

 うんうんと自分の中で納得していたら、由紀が何かを見つけたようだった。なんだろうと思ってその視線を追うと。

「あ? 颯太じゃん」

 なんだ、颯太も遊びにきてたのか。つーかピンポイントで同じ場所にいるってすごくね? ちょっと離れたところにいるけど気付いたからには声かけるか、と足をそっちを踏み出そうとして、颯太が誰かと一緒にいるのに気付く。

「誰だあれ? サラリーマン?」

 颯太はスーツを着た男と一緒にいた。颯太に隠れて顔まではわからないけど、雰囲気的には二十代くらいか? 颯太に兄はいなかったはずだけど……どういう関係なんだろう。
 由紀もだけど、高校生がどうやって社会人の男と知り合うんだ? それとも親戚とかなのかな。
 しかもなんか、すごい仲良さそうだな。颯太はさっきからずっと隣の男の方向いてるし。俺らといる時とはなんか違う。

「あ」

 そうこうしているうちに、二人は人混みに紛れてしまう。

「隣の人、仲良さそうだったね」

「おう。なんか……いつもと雰囲気違ったよな」

 由紀は少し考えるようにして、なるほど、と呟く。え? 何が「なるほど」なの? 由紀も颯太と同じで不思議ちゃん系なの? 

「あ、この後どこいく? 俺あっちに好きな店あるんだけど行かない?」

 俺が何かを聞く前に話題が変わる。モヤモヤと不完全燃焼のようなものを抱えながらも、由紀の提案に頷いた。



 そうやって由紀とぶらぶらして、由紀に思いの外友人が多いことがわかった。
 由紀に連れて行かれた店の中には由紀の知り合いがいるところが結構あった。みんな大人だ。
 あれか? 同世代には構えちゃうけど年上だと緊張しないで話せるとかそういうやつ? いやないだろ、それはないだろ。
 教室での由紀とちぐはぐすぎて、俺は一層由紀がわからなくなった。

「由紀さぁ……なんでクラスメイトとか無視してたの?」

 もうこれは聞くしかない。だってわかんねぇもん。慣れ親しんだモックで席についた俺は、由紀のペースに流される前に率直にたずねる。
 体育祭の時の由紀を思えば本当はコミュ障なんかじゃないことは気付いている。けど、見てると北斗たちとは少し距離をとってる感じだし、クラスメイトにもそうだ。
 だから、思っていたほどコミュ障ではないけどそうはいっても人との交流は苦手なんだと思ってた。
 でも、それすら違うんだろう。先入観があったとはいえ、今まで由紀に対して抱いていたイメージは全て崩れ去った。だとすると、話しかけるまでの挙動不審とか、気付いたら消えてた猫背とか、一体なんだったんだよ。

「……それは、俺がゲイだから」

 周りには聞こえないくらいの小さな声で由紀は呟く。少し不貞腐れて顔を合わせずポテトを頬張っていた俺は顔を上げた。
 由紀は、眉毛を下げて困ったような顔をしていた。

「え? どういうこと?」

「……裕也は俺がそうだって知ってもそれまでと変わらずに接してくれるけど……みんなはそうとは限らないでしょ?」

「いや、まあ……それはわからんけど。でも、言わなきゃわからんだろうし……」

「そうかもね。でも、そうじゃないかもしれない。……それが発覚した時、避けられたりしたら辛いでしょ」

 俺はあんぐりと口を開ける。そんな理由? と言いかけて口を閉じる。
 いや、そうだよな、そうだよ。だって、一人って辛い。俺は誰よりも知ってる。けど、最初から一人なのと、一度はいた人がいなくなって一人になるの、どっちが辛いかって言ったら多分……。

「なのに、俺には言ってくれたんだな」

 そんなに信用してくれていたなんて。勝手な先入観を持って、自己満足で近づいたことが恥ずかしくなる。
 そうか、だから未だに北斗たちやクラスメイトとはちょっと距離をとってるんだ。
 ん? でも。

「さっきの人たちは?」

「あの人たちは……俺がそうなの知ってるから」

「あ、そうなんだ」

 反射で返事をしたものの、しっくりこない。バレて避けられるのを恐れてるのに、そんなに色んな人にカミングアウトするもんなの?
 俺の疑問が通じたのか、由紀が迷うようにして口を開く。

「えと、俺の口から言うのはどうかと思うからアレなんだけど……」

 俺はその様子にピンときた。そうか、彼らも、なのか。それならわかる。年代がバラバラなのも、そういう関係で知り合ったからなんだろう。

「いや、ううん。わかった、大丈夫」

 そう言うと、由紀はほっとしたような顔をしてこの話題は終わった。
 
 その後もだべったり、気になる店に行ったりして、概ね順調に由紀との休日は過ぎていった。
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