ガチケモナーは猫耳男子を許せない

某千尋

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40 二人きりの時間

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 ヴァイツの行動は早かった。

 ヘンリックが乱入したことで淫靡な空気はすっかり消えていた。
 どことなく気まずげなユージーンを見て、仕方ないなぁと言うように眉を下げたヴァイツは、ユージーンの額に軽い口づけを送って名残惜しげに面会を終えた。
 思いが通じ合ったのだからもう少しいちゃついてもいいのでは?との思いもあったが、やることはたくさんあった。
 それこそ、再びユージーンが年齢差やらヘンリックのことやらで決意を揺るがす前に、さっさとことを進めなければと動き出した。

 王に面会を申込み、クライスに改めて挨拶をする時間を設け。スターヴァー王国へは書簡を出し。
 あれよあれよとユージーンの外堀は埋められ、あっという間にユージーンはヴァイツの婚約者の座に収まった。

「展開が早すぎやしないか?」

「いや、ヘンリック殿下の話を聞いて私も少し焦ったんだ。いくら私の国が愛に寛容だとしても、横槍がまったく入らないわけではない。場合によってはユージーンに私を賭けて決闘を申し込む輩が出てくるかもしれない」

「決闘!?」

 引きこもり気味のユージーンが大柄の獣人と決闘。瞬く間にのされる未来しか見えない。のされるだけならまだいい。命が危ない。

「義父殿には反対されるかと思ったが、案外あっさりだったな」

「あぁ……。これも贖罪だとか言っていたな」

 苦虫を噛み潰すような表情でヴァイツに婚約の了承を告げたクライス。不本意なのは丸わかりだったが、これまでのユージーンへの仕打ちに対するせめてもの償いとして応援してくれるらしかった。
 対して、王はかなり乗り気だった。二人のことを報告すれば、それでヘンリックのアドルフとの婚姻をないことにできると思ったのだろう。積極的に話を推し進めてくれた。

「それにしてもヘンリック殿下もうまいことやったな」

 しかし、そんな王の思惑は外れる。
 なんとヘンリックは、自身が同性愛者であることを王国最大の新聞社にリークして公にしたのだ。
 その後の流れも完璧だった。
 同性婚が認められてからも、家の圧力によって婚姻が許されていなかった貴族令息たちが示し合わせたかのようにヘンリックの支持を表明した。これが、思いの外多かった。
 併せて、これまでヘンリックがその立場からどれだけ我慢を強いられたか、王国にどれだけ献身したかについても語られた。世間では貴族と違って自由恋愛の考えが広まって久しかったのもあり、民意はあっという間にヘンリックの味方になった。
 獣人たちとの協定発表前だったため、王はヘンリックの相手が獣人であることを公にすることができず、あまりの急速な世論の動きに新聞社を王室侮辱等の罪で糾弾する暇もなかった。実はブラコンだった王太子のリチャードはショックで倒れたとか。

 少しでも間違えればスキャンダルとして支持を失い、追い込まれていただろう捨て身の行為。しかし、そうはならないよう周到に準備されていた。
 さすがの王も、認めざるを得なくなった。
 今回公表されたのはヘンリックが同性愛者であることだけだったが、ヘンリックの行動力を考えれば相手が獣人であることもなんらかの手段で認めさせる状況を作るのだろうと諦めたのだ。
 ヘンリックと対立するより、要望を受け入れた上で彼に王国へ貢献してもらうことを選んだのだ。

 目まぐるしく変わっていく状況にユージーンは自分のことで精一杯だったが、ヘンリックにだけは一言祝いの言葉を告げた。

「それで……今のこの状況はなんなんだ?」

 周囲のドタバタもやっと少し落ち着いたところで、ユージーンはホッと一息をついたところだった。ユージーンは未だクライスと共に王宮に滞在している。

 そして今、ユージーンはヴァイツにあてがわれている寝室のベッドの端に追い込まれていた。獣の目をしたヴァイツに。

「ユージーン、私は一回あちらへ帰らなければならないんだ。こちらでできることは一通りしたが、向こうでもやることがある。なんせ、一応王子の婚約だ」

「それはわかっている。それと今の状況がどう繋がるんだ?」

 ユージーンは恋愛初心者で、想いを交わした後も初心な学生のような交流しかしていなかった。
 人との接触に慣れていないユージーンは、手を繋ぐだけでも胸がいっぱいだった。

「貴方は、出会った頃はすごくトゲトゲしていたのに、その棘が抜けてしまったようだ。わかるかい?隙ができてるんだ」

「隙?」

「ああ。それで貴方に近付こうとする害虫が沸いているんだ。そんな害虫たちの巣窟に貴方を置いていくなんて、私は本当に耐えられない」

「はぁ?」

「貴方が確実に私の物だという確証が欲しい。貴方の全てが欲しい」

「私は物じゃないんだが」

「わかってる。物じゃないから困るんだ。物なら常に身につけ一時も離れないのに……」

「なにを言っているんだ?」

 眉間に皺を寄せるユージーンに対し満面の笑みを浮かべるヴァイツ。彼はユージーンに手を伸ばし、その身体をころりと仰向けに転がす。

「ちょっ!」

「それは本気なの?それとも私を試してる?せっかく想いが通じあったのに、その可愛い唇にキスさえさせてくれない。いつまで待てをさせるつもり?」

「なっ!それは!」

 ユージーンの身体を閉じ込めるように覆いかぶさったヴァイツは、ギラギラとした欲望をその目に載せて顔を近づける。

「私は犬じゃないからね、待てなんてできないんだ」

 真っ赤な顔をしたユージーンな唇にかぶりつくように口付けたヴァイツは、その欲望のまま甘い果実を貪った。
 
「ふっ……ぅっ、はぁっ」

 息ができず思わず口を開けたところに、ヴァイツはすかさず舌をねじ込む。

「ふっ……んんっ」

 ユージーンの手はヴァイツによって押さえられ、身体を押し退けることができない。せめて顔を捻ろうとしてもヴァイツの唇が追いかけてくる。
 ユージーンは、初めての深い口づけに混乱していたが、次第に官能が刺激され、夢中になっていった。
 最初は縮こまっていた舌は、気付いたらヴァイツの舌と積極的に絡み合い、その気持ちよさに目元が潤んで視界が歪む。

「ん、上手だねユージーン、ほら、舌を出して」

 思考がぼんやりと霞んできて、ユージーンは言われるがまま舌を差し出す。ヴァイツは敢えてくちゅくちゅと卑猥な音を立てながらその舌を味わう。

「ひっ」

 既にユージーンの手は押さえられていなかった。気持ちよさに脱力していた身体は、ある一点をヴァイツに撫でられてビクリと跳ねる。

「ああ、ユージーン。こんなに興奮してくれたんだね」

 そう言ってうっとりとユージーンの中心を撫でるヴァイツ。そこは服の上からでもわかるくらい盛り上がっていた。
 あまりの羞恥心に冷静さを取り戻したユージーンは、真っ赤な顔でヴァイツを睨む。

「興奮などっ!」

「してないの?嘘つき。ほら、俺のもこんなだよ」

 ユージーンの膨らんだそこにヴァイツが下半身を擦り付ける。そこには確かな質量の、ガチガチに固くなったモノがあった。

「なっ、なっ……!」

 ユージーンが真っ赤な顔のまま魚のように口をぱくぱくさせているうちに、どんどん服が剥かれていく。

「まっ……まて! そこは!」

 足が涼しくなって下半身が下着だけになったのに気付いたユージーンが慌ててヴァイツを静止するが。

「だから、俺は犬じゃないから」

 ヴァイツはそう言って一気に下着を剥ぎ取った。
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