42 / 59
42 後朝
しおりを挟む
そこからはユージーンにとって激流のような時間だった。
ヴァイツはユージーンの反応が良い場所を何度も何度も擦り上げ、その奥に大量の精をぶちまけた。
勿論、一回では終わらない。
快楽に流されていたユージーンが腹に広がる温かいものの感覚にやっと終わったと力を抜いたところに、ヴァイツがたちまちのうちに硬度を取り戻した剛直を捻り込む。
不意打ちのそれに身体を弓形に反らせたユージーンは声すら出せずにその喉をはくはくと震わせた。
「ぃやっ……もっ……無理っ!ゔぁいつっ!!」
声を取り戻してなけなしの力で手足をバタつかせるも、子猫よりも弱々しい抵抗がヴァイツに効くわけもなく。
『ユージーン、たくさん、たくさん気持ちよくなろうな?』
その興奮に開ききった瞳孔を見て、ユージーンは自身の抵抗の無意味さを悟った。筋骨隆々なヴァイツが理性を飛ばしていては、ユージーンにはどうすることもできない。
けれど、だからといって快楽に身も心も明け渡して溺れられるほど、開き直ることはできなかった。
「なっ、なんでこんな格好を!」
「ぁあ゛っ!やめっ、もうやめてくれっ!」
「やだやだ!もうイキたくない!もう出ない!むりぃぃいいい!!」
「たすけっ、たすけてっ!ゔぁい、ゔぁいつっ」
過ぎた快楽に文字通り涙を流し、無意味と知りながらも叫び続けたユージーン。
第三者が聞けば無体を働かれているとしか思えない悲鳴。その声に気付かれれば、助けが入った可能性もあろう。けれど、その訪問が秘されているがゆえに王宮の奥に配置されたヴァイツの寝床での惨劇が外部に知れることはなかった。周到なヴァイツは、人払いも済ませていたのだ。
結局、ユージーンの無垢だった身体は、夜が明けるまで理性を失った獣に貪られたのだった。
「酷い目にあった」
ユージーンが目を覚ましたのは翌日のすっかり日が昇り切った頃だった。
身体の節々が痛み、とても自力で動くことはできなかった。見れば身体中に鬱血痕が刻まれている。声は枯れ果て、ユージーンは老人にでもなったような心地だった。
「すまない、ユージーン。あまりに貴方が素晴らしくてすっかり理性を失ってしまった」
ぺたりとその耳を折って、甲斐甲斐しくユージーンを世話するヴァイツ。ユージーンはベッドの背に身体を預け、与えられるまま水と果物を口にする。おかげで喉が潤って声を出すことが楽になったユージーンはひとこと言ってやろうとヴァイツを睨む。
しかし、元々猫好きなユージーンは、その申し訳なさそうに垂れ下がった耳を見ては許すしかなかった。当初は愛しい猫の特徴が嫌いな人間の身体くっついていることに嫌悪を覚えていたが、ことここにきては愛しいヴァイツに愛しい猫の特徴という愛しさの掛け算に陥落していたのだ。卑怯者め!と胸中で叫びながら、顔を赤らめる。
「急にあんな……もっと順番があるだろう……」
昨日までは手を繋ぐだけで満たされるような、清い関係だったのだ。一足飛びにいくつもの階段を駆け上がる必要があったとは、納得できていなかった。
「私はもうすぐ国へ帰らなければならない。花開いた貴方を無垢なまま置いていくなど……誰か攫ってくれと言うようなものだ。貴方の奥に、私の印をつけたかったんだ」
満足そうに微笑むヴァイツに若干の苛立ちを覚えたところで、ユージーンは閃いた。
「マーキングか?」
ヴァイツは少し眉間に皺を寄せ、不満そうに口を尖らせる。
「人を動物みたいに言わないでくれ」
「昨日のお前はまさしく獣だった」
言いながらユージーンは昨夜のことを思い出す。すると、身体の奥がゾクリと疼くのを感じた。一晩で散々快楽を植え付けられた身体はその余韻を引きずっていた。
そして、ユージーンが昨夜を思い出したことでその目に僅かに甘い色が灯ったのをヴァイツは見逃さない。
「そんなこと言って……ユージーンだってとても気持ちよさそうだったじゃないか」
「なっ!」
ヴァイツは顔を真っ赤に染め上げるユージーンを見て、更に追撃する。
「あんなに喘いで、ユージーンだって、まんざらではなかっただろう?」
羞恥でプルプルと身体を震わせながら下から睨むように見上げてくるその姿は、子猫が威嚇しているようでヴァイツにとっては可愛いだけだった。ヴァイツはその愛らしさに思わず口元を緩める。その表情がユージーンの怒りに火をつけるなど思いもせずに。
「またお前はニヤニヤして……馬鹿にしてるのかっ!」
しばらく前に祖母であるヴェロニカの姿を見て我が身を振り返ったはずのユージーンだが、一朝一夕にその性質が変わるわけもなく。
怒りを露わにしたユージーンにヴァイツは慌てて否定する。
「馬鹿になど!羞恥に照れるユージーンが可愛くて……」
「かわっ!私を何歳だと!」
「何歳だってユージーンは可愛い。きっとしわくちゃのおじいちゃんになっても可愛い」
厳つい顔をだらしなく蕩けさせるヴァイツに、ユージーンは言葉に詰まる。あまりに愛おしそうにユージーンを見つめるヴァイツに、怒りよりも照れが勝ったのだ。
「なっ!そっ!」
怒りのやり場を見失い、羞恥やら照れやら様々な感情が大渋滞して固まってしまったユージーン。
ヴァイツはその姿を見て、込み上げてくる感情のままにユージーンを抱きしめた。
「愛しいユージーン。国へ帰ればしばらく会えなくなるけど、私のことを忘れないで」
一転して切ない声で囁かれ、ユージーンの中で渦巻いていた感情は萎んでいく。
「……浮気するなよ」
「しないさ。ユージーンこそ、昨日みたいなのは私だけだよ?他の男に迫られても、触れさせてはいけないよ」
「するわけがない!」
「男はケダモノなんだ。近づいてくる男には十分気をつけて、決して二人きりになってはいけないよ」
「私はどこぞの令嬢か!!」
ユージーンはヴァイツに年頃の娘でもそこまで気をつけないだろう細かい条件をつけられ、うんざりしながらもそれを受け入れる羽目になった。
心からユージーンを案じていることが伝わってくるから、どうにも拒否することができなかったのだ。
その日からしばらくして、ヴァイツは予定通り国へ戻っていった。
ユージーンも居を研究棟の研究室に戻し、久方ぶりに落ち着いた日々を取り戻した。
ヴァイツはユージーンの反応が良い場所を何度も何度も擦り上げ、その奥に大量の精をぶちまけた。
勿論、一回では終わらない。
快楽に流されていたユージーンが腹に広がる温かいものの感覚にやっと終わったと力を抜いたところに、ヴァイツがたちまちのうちに硬度を取り戻した剛直を捻り込む。
不意打ちのそれに身体を弓形に反らせたユージーンは声すら出せずにその喉をはくはくと震わせた。
「ぃやっ……もっ……無理っ!ゔぁいつっ!!」
声を取り戻してなけなしの力で手足をバタつかせるも、子猫よりも弱々しい抵抗がヴァイツに効くわけもなく。
『ユージーン、たくさん、たくさん気持ちよくなろうな?』
その興奮に開ききった瞳孔を見て、ユージーンは自身の抵抗の無意味さを悟った。筋骨隆々なヴァイツが理性を飛ばしていては、ユージーンにはどうすることもできない。
けれど、だからといって快楽に身も心も明け渡して溺れられるほど、開き直ることはできなかった。
「なっ、なんでこんな格好を!」
「ぁあ゛っ!やめっ、もうやめてくれっ!」
「やだやだ!もうイキたくない!もう出ない!むりぃぃいいい!!」
「たすけっ、たすけてっ!ゔぁい、ゔぁいつっ」
過ぎた快楽に文字通り涙を流し、無意味と知りながらも叫び続けたユージーン。
第三者が聞けば無体を働かれているとしか思えない悲鳴。その声に気付かれれば、助けが入った可能性もあろう。けれど、その訪問が秘されているがゆえに王宮の奥に配置されたヴァイツの寝床での惨劇が外部に知れることはなかった。周到なヴァイツは、人払いも済ませていたのだ。
結局、ユージーンの無垢だった身体は、夜が明けるまで理性を失った獣に貪られたのだった。
「酷い目にあった」
ユージーンが目を覚ましたのは翌日のすっかり日が昇り切った頃だった。
身体の節々が痛み、とても自力で動くことはできなかった。見れば身体中に鬱血痕が刻まれている。声は枯れ果て、ユージーンは老人にでもなったような心地だった。
「すまない、ユージーン。あまりに貴方が素晴らしくてすっかり理性を失ってしまった」
ぺたりとその耳を折って、甲斐甲斐しくユージーンを世話するヴァイツ。ユージーンはベッドの背に身体を預け、与えられるまま水と果物を口にする。おかげで喉が潤って声を出すことが楽になったユージーンはひとこと言ってやろうとヴァイツを睨む。
しかし、元々猫好きなユージーンは、その申し訳なさそうに垂れ下がった耳を見ては許すしかなかった。当初は愛しい猫の特徴が嫌いな人間の身体くっついていることに嫌悪を覚えていたが、ことここにきては愛しいヴァイツに愛しい猫の特徴という愛しさの掛け算に陥落していたのだ。卑怯者め!と胸中で叫びながら、顔を赤らめる。
「急にあんな……もっと順番があるだろう……」
昨日までは手を繋ぐだけで満たされるような、清い関係だったのだ。一足飛びにいくつもの階段を駆け上がる必要があったとは、納得できていなかった。
「私はもうすぐ国へ帰らなければならない。花開いた貴方を無垢なまま置いていくなど……誰か攫ってくれと言うようなものだ。貴方の奥に、私の印をつけたかったんだ」
満足そうに微笑むヴァイツに若干の苛立ちを覚えたところで、ユージーンは閃いた。
「マーキングか?」
ヴァイツは少し眉間に皺を寄せ、不満そうに口を尖らせる。
「人を動物みたいに言わないでくれ」
「昨日のお前はまさしく獣だった」
言いながらユージーンは昨夜のことを思い出す。すると、身体の奥がゾクリと疼くのを感じた。一晩で散々快楽を植え付けられた身体はその余韻を引きずっていた。
そして、ユージーンが昨夜を思い出したことでその目に僅かに甘い色が灯ったのをヴァイツは見逃さない。
「そんなこと言って……ユージーンだってとても気持ちよさそうだったじゃないか」
「なっ!」
ヴァイツは顔を真っ赤に染め上げるユージーンを見て、更に追撃する。
「あんなに喘いで、ユージーンだって、まんざらではなかっただろう?」
羞恥でプルプルと身体を震わせながら下から睨むように見上げてくるその姿は、子猫が威嚇しているようでヴァイツにとっては可愛いだけだった。ヴァイツはその愛らしさに思わず口元を緩める。その表情がユージーンの怒りに火をつけるなど思いもせずに。
「またお前はニヤニヤして……馬鹿にしてるのかっ!」
しばらく前に祖母であるヴェロニカの姿を見て我が身を振り返ったはずのユージーンだが、一朝一夕にその性質が変わるわけもなく。
怒りを露わにしたユージーンにヴァイツは慌てて否定する。
「馬鹿になど!羞恥に照れるユージーンが可愛くて……」
「かわっ!私を何歳だと!」
「何歳だってユージーンは可愛い。きっとしわくちゃのおじいちゃんになっても可愛い」
厳つい顔をだらしなく蕩けさせるヴァイツに、ユージーンは言葉に詰まる。あまりに愛おしそうにユージーンを見つめるヴァイツに、怒りよりも照れが勝ったのだ。
「なっ!そっ!」
怒りのやり場を見失い、羞恥やら照れやら様々な感情が大渋滞して固まってしまったユージーン。
ヴァイツはその姿を見て、込み上げてくる感情のままにユージーンを抱きしめた。
「愛しいユージーン。国へ帰ればしばらく会えなくなるけど、私のことを忘れないで」
一転して切ない声で囁かれ、ユージーンの中で渦巻いていた感情は萎んでいく。
「……浮気するなよ」
「しないさ。ユージーンこそ、昨日みたいなのは私だけだよ?他の男に迫られても、触れさせてはいけないよ」
「するわけがない!」
「男はケダモノなんだ。近づいてくる男には十分気をつけて、決して二人きりになってはいけないよ」
「私はどこぞの令嬢か!!」
ユージーンはヴァイツに年頃の娘でもそこまで気をつけないだろう細かい条件をつけられ、うんざりしながらもそれを受け入れる羽目になった。
心からユージーンを案じていることが伝わってくるから、どうにも拒否することができなかったのだ。
その日からしばらくして、ヴァイツは予定通り国へ戻っていった。
ユージーンも居を研究棟の研究室に戻し、久方ぶりに落ち着いた日々を取り戻した。
0
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
え?俺って思ってたよりも愛されてた感じ?
パワフル6世
BL
「え?俺って思ってたより愛されてた感じ?」
「そうだねぇ。ちょっと逃げるのが遅かったね、ひなちゃん。」
カワイイ系隠れヤンデレ攻め(遥斗)VS平凡な俺(雛汰)の放課後攻防戦
初めてお話書きます。拙いですが、ご容赦ください。愛はたっぷり込めました!
その後のお話もあるので良ければ
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと
mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36)
低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。
諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。
冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。
その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。
語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる