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2.蜜蜂の初恋
春の舞踏会
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春の舞踏会。
1回目はシャンパーニに佇む、白く美しい城で行われた。
王座には、ジルベール国王夫妻が座って様子を見ていた。
赤、黄色、青、緑 …カラフルな色のドレスを身にまとった女王蜂達が集まり、出会いを求める雄蜂達も集まった。
招待されたのは、各家の女王蜂候補と跡継ぎ候補の雄。
多くの蜂で賑わう城の中は、白の壁紙と金の装飾、そして沢山の花々、客の食事になる蜜も用意されており、ワルツが響いていた。
リシャールはヨハンと共に参加した。
ヨハンが準備してくれたリシャールのドレスは、瞳と同じ淡いエメラルドグリーン。
「…凄い数ですね」
「…なんだか、緊張する。」
「大丈夫ですよ。」
舞踏会には、ミシェルも参加していた。
「兄上?」
「ロベール!」
リシャールを見つけ、駆けつけたのは弟のロベール。
「会いたかったです」
「私も。…貴方は城で見ると立派ね」
「…巣ででもって言ってくださいよ」
「ふふっ、ごめん」
「姉上もいらしてるみたいで。」
「そうなの。…まぁ、私はロベールに会いに来たけど。」
「…蜜が目的では?」
「しっ!ヨハン!言わない約束!」
「あっ!!」
「ははっ、それでも構いませんよ。陛下には内緒に!」
ロベールは小声で言って笑った。
「…お相手、見つかるといいですね」
「…それは…ロベールもね」
「そうでした…」
リシャールとロベールは再会を喜んだ。
「…ロベール。」
「はっ!陛下!」
すると後ろから静かに近付いてきた国王、ジルベール。妻のルシアンも隣にいた。
「…フレア…?」
「…国王陛下にご挨拶を。…フレアは私の母ですが…。」
「…あぁ、フレアに似ていたものでな。名は?」
「…リシャールと申します。」
「私の兄上です。私も、兄上は母上にとても良く似ていると思っておりました。」
「…あぁ、全くその通りだ。フレアによく似ている。」
「母上をご存知で?」
「あぁ。ルイから紹介してもらった時は、驚いた。とても美人だったものでな」
「……?!」
隣にいたルシアンがジルベールの脇腹を殴った。
「痛っ…。ま、まぁ…今日は楽しむといい。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ。」
「じゃあ、僕もこれで。……思う存分、食べてってね」
ロベールは小声で言い残して行った。
リシャールはジルベールの背中を見届け、呟いた。
「まぁ……陛下は驚かないのね。」
「何がですか?」
「…ロベールは私を”兄上”って紹介したのに、陛下は何も言わなかった。」
「…確かに…人の話をあんまり聞かないタイプ?」
「陛下に対して失礼な!」
「…いやいやいや!!」
「…まぁ、いっか……」
「…じゃ、早速何を食べましょうかね…?」
「これ美味しそう。」
「じゃあ……これと、これと…」
予定通り、2人は舞踏会には目もくれずに蜜ばかりに夢中であった。
すると、ある雄蜂に声を掛けられた。
「そこのエメラルドグリーンのお嬢さん。」
「…はい…?」
「…良かったら、私とワルツを…」
「あ…えっと……」
リシャールが躊躇うと、行きなさいと言わんばかりにヨハンが肘で小突いた。
「は…はい……」
彼はリシャールの手を取り、2人は踊った。
ダンスの練習をしていて良かった、リシャールは密かに思っていた。
ヨハンはひたすら食べながら、踊る2人を見守っていた。
「…お名前をお聞きしても?」
「リシャール・ヤプセレと申します。」
「…リシャール…とても綺麗な名前だ。私はジョアキム・カノーヌです。」
「ジョアキム様……」
「様だなんて、そんな。」
彼はジョアキム・カノーヌと名乗った。彼は、シャンパーニの貴族一家の嫡男。
リシャールは彼を見て微笑んだ。
雄にしては可愛らしい顔立ちで笑顔も可愛い雄蜂であった。
2人は城のバルコニーへ出て、話をした。
「…結婚をお考えで?」
「えぇ、一応…。」
「…そんなに前向きでは無いのですか?」
リシャールは少し考えて言った。
「…私が前向きでも、貴方様は私を前向きには考えないでしょう?」
「それは、どういうことですか?」
「雄だから」
「えっ……」
リシャールが雄だと知ると、彼の態度は豹変した。
「…雄…だと言ったか?」
「…えぇ。ですが、子を産めるのです。」
「…はっ……雄との子だと?笑える。」
「………。」
リシャールは彼を哀れむ目で見つめた。
「…誰が雄同士の結婚を望むか?!」
彼はリシャールに怒鳴りつけた。
近くにいた人々はリシャールが雄だと知り、ざわめいた。
人々の目は異物を見るような目に変わった。
あの女王蜂、雄だって。
雄同士の結婚?気色悪い。
可哀想に。女王蜂なのに雄だなんて。
次々と周囲の声が聴こえてきた。
「……こうなることは想定の範囲内ね」
リシャールは呟いた。
その人々の声がヨハンの耳にも届き、ヨハンはリシャールの元へ飛んで来た。
「リシャール様!行きましょう!こんな失礼な奴らに用はありません!!!」
「……ヨハン、思う存分食べた?」
「はい!いっぱい食べました!!!行きましょう!」
ヨハンはリシャールの手を引いて帰った。
その姿を見ていたミシェルは、ほくそ笑んでいた。
しかし反対に、リシャールを心配そうに見つめていたのは、ルシアン妃であった。
1回目はシャンパーニに佇む、白く美しい城で行われた。
王座には、ジルベール国王夫妻が座って様子を見ていた。
赤、黄色、青、緑 …カラフルな色のドレスを身にまとった女王蜂達が集まり、出会いを求める雄蜂達も集まった。
招待されたのは、各家の女王蜂候補と跡継ぎ候補の雄。
多くの蜂で賑わう城の中は、白の壁紙と金の装飾、そして沢山の花々、客の食事になる蜜も用意されており、ワルツが響いていた。
リシャールはヨハンと共に参加した。
ヨハンが準備してくれたリシャールのドレスは、瞳と同じ淡いエメラルドグリーン。
「…凄い数ですね」
「…なんだか、緊張する。」
「大丈夫ですよ。」
舞踏会には、ミシェルも参加していた。
「兄上?」
「ロベール!」
リシャールを見つけ、駆けつけたのは弟のロベール。
「会いたかったです」
「私も。…貴方は城で見ると立派ね」
「…巣ででもって言ってくださいよ」
「ふふっ、ごめん」
「姉上もいらしてるみたいで。」
「そうなの。…まぁ、私はロベールに会いに来たけど。」
「…蜜が目的では?」
「しっ!ヨハン!言わない約束!」
「あっ!!」
「ははっ、それでも構いませんよ。陛下には内緒に!」
ロベールは小声で言って笑った。
「…お相手、見つかるといいですね」
「…それは…ロベールもね」
「そうでした…」
リシャールとロベールは再会を喜んだ。
「…ロベール。」
「はっ!陛下!」
すると後ろから静かに近付いてきた国王、ジルベール。妻のルシアンも隣にいた。
「…フレア…?」
「…国王陛下にご挨拶を。…フレアは私の母ですが…。」
「…あぁ、フレアに似ていたものでな。名は?」
「…リシャールと申します。」
「私の兄上です。私も、兄上は母上にとても良く似ていると思っておりました。」
「…あぁ、全くその通りだ。フレアによく似ている。」
「母上をご存知で?」
「あぁ。ルイから紹介してもらった時は、驚いた。とても美人だったものでな」
「……?!」
隣にいたルシアンがジルベールの脇腹を殴った。
「痛っ…。ま、まぁ…今日は楽しむといい。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ。」
「じゃあ、僕もこれで。……思う存分、食べてってね」
ロベールは小声で言い残して行った。
リシャールはジルベールの背中を見届け、呟いた。
「まぁ……陛下は驚かないのね。」
「何がですか?」
「…ロベールは私を”兄上”って紹介したのに、陛下は何も言わなかった。」
「…確かに…人の話をあんまり聞かないタイプ?」
「陛下に対して失礼な!」
「…いやいやいや!!」
「…まぁ、いっか……」
「…じゃ、早速何を食べましょうかね…?」
「これ美味しそう。」
「じゃあ……これと、これと…」
予定通り、2人は舞踏会には目もくれずに蜜ばかりに夢中であった。
すると、ある雄蜂に声を掛けられた。
「そこのエメラルドグリーンのお嬢さん。」
「…はい…?」
「…良かったら、私とワルツを…」
「あ…えっと……」
リシャールが躊躇うと、行きなさいと言わんばかりにヨハンが肘で小突いた。
「は…はい……」
彼はリシャールの手を取り、2人は踊った。
ダンスの練習をしていて良かった、リシャールは密かに思っていた。
ヨハンはひたすら食べながら、踊る2人を見守っていた。
「…お名前をお聞きしても?」
「リシャール・ヤプセレと申します。」
「…リシャール…とても綺麗な名前だ。私はジョアキム・カノーヌです。」
「ジョアキム様……」
「様だなんて、そんな。」
彼はジョアキム・カノーヌと名乗った。彼は、シャンパーニの貴族一家の嫡男。
リシャールは彼を見て微笑んだ。
雄にしては可愛らしい顔立ちで笑顔も可愛い雄蜂であった。
2人は城のバルコニーへ出て、話をした。
「…結婚をお考えで?」
「えぇ、一応…。」
「…そんなに前向きでは無いのですか?」
リシャールは少し考えて言った。
「…私が前向きでも、貴方様は私を前向きには考えないでしょう?」
「それは、どういうことですか?」
「雄だから」
「えっ……」
リシャールが雄だと知ると、彼の態度は豹変した。
「…雄…だと言ったか?」
「…えぇ。ですが、子を産めるのです。」
「…はっ……雄との子だと?笑える。」
「………。」
リシャールは彼を哀れむ目で見つめた。
「…誰が雄同士の結婚を望むか?!」
彼はリシャールに怒鳴りつけた。
近くにいた人々はリシャールが雄だと知り、ざわめいた。
人々の目は異物を見るような目に変わった。
あの女王蜂、雄だって。
雄同士の結婚?気色悪い。
可哀想に。女王蜂なのに雄だなんて。
次々と周囲の声が聴こえてきた。
「……こうなることは想定の範囲内ね」
リシャールは呟いた。
その人々の声がヨハンの耳にも届き、ヨハンはリシャールの元へ飛んで来た。
「リシャール様!行きましょう!こんな失礼な奴らに用はありません!!!」
「……ヨハン、思う存分食べた?」
「はい!いっぱい食べました!!!行きましょう!」
ヨハンはリシャールの手を引いて帰った。
その姿を見ていたミシェルは、ほくそ笑んでいた。
しかし反対に、リシャールを心配そうに見つめていたのは、ルシアン妃であった。
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