13 / 58
4.綴る別れと約束
貴方に会いたい
しおりを挟む
「……リシャールは元気か?」
アンドレはリシャールからの手紙を開け、読もうとしたが、中身を見て動きが止まった。
「……。」
アンドレの驚いているような、何処か悲しそうな表情を見て、ヨハンは心苦しかった。
「アンドレ様?……!」
エリソンドも中身を見たようで、驚いていた。
2人の目線はヨハンに向けられた。
「どうか、リシャール様のお気持ちを…」
「どういうことだ?」
「…読めば、分かりますよ。」
アンドレは2つ折りにされた文を開いた。
「……。」
リシャールの手紙は、とても簡潔に書かれていた。
____ 婚約を破棄させてください。
大切な物はお返しします。
本当にごめんなさい。 _______
「……なぜ…?何故だ。ヨハン。」
「……。」
アンドレはリシャールにあげたチョーカーと指輪を強く握りしめた。
「…これが 、リシャール様の決断です。」
「…は……?」
エリソンドはヨハンの胸ぐらを掴んだ。
「ヨハン。詳しく説明しろ。」
「……説明も何も…!リシャール様の苦肉の策なのです…認めてあげてください。…僕だって…!リシャール様とアンドレ様の結婚式が見たかった…!!幸せなお姿を見たかった!!…でも…!仕方ないんです!」
ヨハンは泣き出した。エリソンドは、胸ぐらを掴んでいた手を離し、よろめいた。
「……仕方ないだと…?」
「まさか…父上に脅されたのか?」
「……そのような事はございません。」
アンドレの悲しみは怒りへと変わった。
____きっと、そうだ。脅されたんだ。
すると、アンドレは首元に付いていたペリシエ王室の紋章を外した。
「…アンドレ様…!?」
エリソンドはアンドレを止めようとした。
アンドレは勢い良く部屋を出てしまった。
「……?」
「アンドレ様は、王室を離脱してでもリシャール様を愛していらっしゃるんです。」
「えっ……離脱…?」
「…それくらいの覚悟があるんです。リシャール様は、覚悟があるのですか?」
「……。」
ヨハンは、エリソンドの一言で一気に分からなくなってしまった。
リシャール様は何を考えている?
アンドレ様を愛してるなら、結婚したいはず
でも今、婚約破棄しようとしている。
________ アンドレ様のためよ。本当に心から愛しているなら、きっと誰でもこの手段を取る。______
ヨハンはアンドレを追いかけた。
廊下を突き進んでいくアンドレの前に、両手を広げ、止めた。
「…リシャール様は、アンドレ様を愛しています。」
「…ヨハン。退いてくれ。」
「退きません。」
「リシャール様のお気持ちと行動を無駄にしないでください。」
ヨハンは鼻を赤くして、涙を堪えた。
「……ならば、どうしろと言うのだ。」
「…アンドレ王子として…どうか、ご無事で。…幸せに生きていてください。…それが、リシャール様にとっての幸せなのかもしれません。」
「…私はリシャールと共に生きるのが、幸せだ。どんな環境でも、どんな身分でも。リシャールがいれば、何でも構わない。」
「……アンドレ様。お願いします。」
アンドレはただ、立ち尽くすだけだった。
「……ヨハン。」
「…はい、アンドレ様…。」
「……これで最後になるなら、リシャールに会わせてくれないか?…一度だけでいいんだ。」
「……。」
主人の二人がこのまま別れてしまうと考えると、凄く気の毒に思った。
「……分かりました。じゃあ…今夜、お二人が出会った場所で。」
「……あぁ。ありがとう。」
ヨハンは思わず微笑んでしまった。また、アンドレの後ろにいたエリソンドも微笑んでいた。
_______________
ヨハンが巣へ戻る頃には、既に日が暮れていた。今夜は星空が綺麗だ。
「……。」
リシャールの待つ王台へ入ろうとしたが、立ち止まり、ある事を考えた。
〝もう会わないって決めたの〟
きっとこう言われると思い、リシャールには内緒にすることにした。
ヨハンは頷き、リシャールの元へ帰った。
「…リシャール様、只今帰りました」
「ヨハン。お帰りなさい。」
王台で待っていたリシャールは就寝しようとしていた。
「…あ……えっと…」
「すぐ隣の国だとはいえ、遠かったでしょう?……届けてくれた?」
「…は、はい。」
「そう…彼は怒ったかしら…」
「そんなことはございません…。」
「…リシャール様」
「ん?」
「…えっと…、今日、とっても星空が綺麗だったんです!良かったら、夜の散歩へ行きませんか?!気分も良くなります!」
リシャールは笑った。
「…気分はもう良いけど…。珍しいわね、ヨハンから散歩へ誘われるなんて。」
「あぁ…それは…その…えへへ」
「私に構わないで、行ってきてもいいんだよ?」
「お誘いしているんです!たまには!いいじゃないですか!!」
「ふふっ、分かった。行くよ。」
「本当ですか?!」
ヨハンは無邪気に笑った。リシャールはパジャマにカーディガンを羽織った。
「あ!えっ!?」
「え?」
「そ、それで行かれるんですか!?」
「…散歩でしょう?ダメなの?」
「あ…えっと……。」
「…おめかし、した方がいい?」
「ま、まぁ…!よ、ヨハンとデートですよ…(?)」
「……?」
「なーんちゃって☆」
「わかった。着替えるわ。」
「ありがとうございます…」
そしてリシャールは袖のふんわりしたシンプルなドレスに着替えてきた。
「これでどう?」
「今夜もお美しいです…」
「まぁ、良かった」
「あと、これを!」
渡したのはイエローダイヤのイヤリング。
「…これも?」
「はい、是非。」
「わかった」
イヤリングを付けさせ、約束の場所へ向かった。夜風がとても気持ちいい。ヨハンは澄んだ空気を吸い込んだ。
「どこへ行くの?」
「リシャール様。目を瞑ってくださいませんか」
「え?」
「連れて行きますので」
「…そう」
リシャールは言われた通りに目を瞑り、ヨハンに手を引かれた。
ヨハンに連れられる場所が分かった気がした。向かう方向、そして、近付くあの香り。
「リシャール様、絶対に目を開けてはなりませんよ」
「…もう目的地は分かったわ!」
「それでもです、目を瞑っていてください」
「…分かった」
あの場所。あの花畑。彼と出会った花畑。
空を飛んでいたヨハンとリシャールの下に、花畑で待つアンドレとエリソンドが見えた。
地面に足をつけると、アンドレが静かに寄った。ヨハンは静かに!と言うように、口に人差し指を当てた。アンドレは微笑んで頷いた。
「…ヨハン?もう開けていい?」
「……いいですよ」
リシャールが目を開けると、目の前に愛する彼がいた。
「……えっ…」
「リシャール。」
すぐにヨハンの方を向いたが、後ろには誰もいなかった。というか、周りには誰もいなかった。
今、目の前に…あの愛する彼。
もう会うことなんてないと思っていたのに。会わないと決めたのに。会ってはならないのに。
アンドレはリシャールからの手紙を開け、読もうとしたが、中身を見て動きが止まった。
「……。」
アンドレの驚いているような、何処か悲しそうな表情を見て、ヨハンは心苦しかった。
「アンドレ様?……!」
エリソンドも中身を見たようで、驚いていた。
2人の目線はヨハンに向けられた。
「どうか、リシャール様のお気持ちを…」
「どういうことだ?」
「…読めば、分かりますよ。」
アンドレは2つ折りにされた文を開いた。
「……。」
リシャールの手紙は、とても簡潔に書かれていた。
____ 婚約を破棄させてください。
大切な物はお返しします。
本当にごめんなさい。 _______
「……なぜ…?何故だ。ヨハン。」
「……。」
アンドレはリシャールにあげたチョーカーと指輪を強く握りしめた。
「…これが 、リシャール様の決断です。」
「…は……?」
エリソンドはヨハンの胸ぐらを掴んだ。
「ヨハン。詳しく説明しろ。」
「……説明も何も…!リシャール様の苦肉の策なのです…認めてあげてください。…僕だって…!リシャール様とアンドレ様の結婚式が見たかった…!!幸せなお姿を見たかった!!…でも…!仕方ないんです!」
ヨハンは泣き出した。エリソンドは、胸ぐらを掴んでいた手を離し、よろめいた。
「……仕方ないだと…?」
「まさか…父上に脅されたのか?」
「……そのような事はございません。」
アンドレの悲しみは怒りへと変わった。
____きっと、そうだ。脅されたんだ。
すると、アンドレは首元に付いていたペリシエ王室の紋章を外した。
「…アンドレ様…!?」
エリソンドはアンドレを止めようとした。
アンドレは勢い良く部屋を出てしまった。
「……?」
「アンドレ様は、王室を離脱してでもリシャール様を愛していらっしゃるんです。」
「えっ……離脱…?」
「…それくらいの覚悟があるんです。リシャール様は、覚悟があるのですか?」
「……。」
ヨハンは、エリソンドの一言で一気に分からなくなってしまった。
リシャール様は何を考えている?
アンドレ様を愛してるなら、結婚したいはず
でも今、婚約破棄しようとしている。
________ アンドレ様のためよ。本当に心から愛しているなら、きっと誰でもこの手段を取る。______
ヨハンはアンドレを追いかけた。
廊下を突き進んでいくアンドレの前に、両手を広げ、止めた。
「…リシャール様は、アンドレ様を愛しています。」
「…ヨハン。退いてくれ。」
「退きません。」
「リシャール様のお気持ちと行動を無駄にしないでください。」
ヨハンは鼻を赤くして、涙を堪えた。
「……ならば、どうしろと言うのだ。」
「…アンドレ王子として…どうか、ご無事で。…幸せに生きていてください。…それが、リシャール様にとっての幸せなのかもしれません。」
「…私はリシャールと共に生きるのが、幸せだ。どんな環境でも、どんな身分でも。リシャールがいれば、何でも構わない。」
「……アンドレ様。お願いします。」
アンドレはただ、立ち尽くすだけだった。
「……ヨハン。」
「…はい、アンドレ様…。」
「……これで最後になるなら、リシャールに会わせてくれないか?…一度だけでいいんだ。」
「……。」
主人の二人がこのまま別れてしまうと考えると、凄く気の毒に思った。
「……分かりました。じゃあ…今夜、お二人が出会った場所で。」
「……あぁ。ありがとう。」
ヨハンは思わず微笑んでしまった。また、アンドレの後ろにいたエリソンドも微笑んでいた。
_______________
ヨハンが巣へ戻る頃には、既に日が暮れていた。今夜は星空が綺麗だ。
「……。」
リシャールの待つ王台へ入ろうとしたが、立ち止まり、ある事を考えた。
〝もう会わないって決めたの〟
きっとこう言われると思い、リシャールには内緒にすることにした。
ヨハンは頷き、リシャールの元へ帰った。
「…リシャール様、只今帰りました」
「ヨハン。お帰りなさい。」
王台で待っていたリシャールは就寝しようとしていた。
「…あ……えっと…」
「すぐ隣の国だとはいえ、遠かったでしょう?……届けてくれた?」
「…は、はい。」
「そう…彼は怒ったかしら…」
「そんなことはございません…。」
「…リシャール様」
「ん?」
「…えっと…、今日、とっても星空が綺麗だったんです!良かったら、夜の散歩へ行きませんか?!気分も良くなります!」
リシャールは笑った。
「…気分はもう良いけど…。珍しいわね、ヨハンから散歩へ誘われるなんて。」
「あぁ…それは…その…えへへ」
「私に構わないで、行ってきてもいいんだよ?」
「お誘いしているんです!たまには!いいじゃないですか!!」
「ふふっ、分かった。行くよ。」
「本当ですか?!」
ヨハンは無邪気に笑った。リシャールはパジャマにカーディガンを羽織った。
「あ!えっ!?」
「え?」
「そ、それで行かれるんですか!?」
「…散歩でしょう?ダメなの?」
「あ…えっと……。」
「…おめかし、した方がいい?」
「ま、まぁ…!よ、ヨハンとデートですよ…(?)」
「……?」
「なーんちゃって☆」
「わかった。着替えるわ。」
「ありがとうございます…」
そしてリシャールは袖のふんわりしたシンプルなドレスに着替えてきた。
「これでどう?」
「今夜もお美しいです…」
「まぁ、良かった」
「あと、これを!」
渡したのはイエローダイヤのイヤリング。
「…これも?」
「はい、是非。」
「わかった」
イヤリングを付けさせ、約束の場所へ向かった。夜風がとても気持ちいい。ヨハンは澄んだ空気を吸い込んだ。
「どこへ行くの?」
「リシャール様。目を瞑ってくださいませんか」
「え?」
「連れて行きますので」
「…そう」
リシャールは言われた通りに目を瞑り、ヨハンに手を引かれた。
ヨハンに連れられる場所が分かった気がした。向かう方向、そして、近付くあの香り。
「リシャール様、絶対に目を開けてはなりませんよ」
「…もう目的地は分かったわ!」
「それでもです、目を瞑っていてください」
「…分かった」
あの場所。あの花畑。彼と出会った花畑。
空を飛んでいたヨハンとリシャールの下に、花畑で待つアンドレとエリソンドが見えた。
地面に足をつけると、アンドレが静かに寄った。ヨハンは静かに!と言うように、口に人差し指を当てた。アンドレは微笑んで頷いた。
「…ヨハン?もう開けていい?」
「……いいですよ」
リシャールが目を開けると、目の前に愛する彼がいた。
「……えっ…」
「リシャール。」
すぐにヨハンの方を向いたが、後ろには誰もいなかった。というか、周りには誰もいなかった。
今、目の前に…あの愛する彼。
もう会うことなんてないと思っていたのに。会わないと決めたのに。会ってはならないのに。
0
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です
ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。
理由は不明、手紙一通とパン一個。
どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。
そんな理由でいいのか!?
でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適!
自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない!
……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる