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11.不穏な再会

懸念

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「あれ、アンドレは何処行ったんや?」

レステンクール城で行われていたパーティーが終わり、アンドレがいないことに気付いたフレデリック。

「アンドレ様なら、お酒に酔ったと部屋に戻られました」
キャロラインが答えると、フレデリックは声を出して笑った。

「はぁ?そんな訳ないやんかぁ!!あいつが酒に酔うたとこなんて、見たことないで?俺。」
「で、ですが…」

「ここにいるぞ。」
フレデリックの背後から突然現れたアンドレ。

「びっくりした!ほらな、こいつが酔う訳ないねんな!」
「すまない、少し疲れてしまってな。」
「なんやねん、黒蜜蜂のくせに!」
「どういうことだよ、」

「ははは!」
フレデリックの方が酒に酔っており、楽しそうにケラケラと笑っていた。

すると、彼らと一緒にいたウジェーヌも口を開いた。
「ところで、リシャール妃もいらっしゃいませんね。お話がしたかったなぁと…」

「あぁ!リシャールな、リシャールはこういう集まりっちゅーのが苦手っぽいねんな、せやから部屋で寝とるんちゃうか。知らんけど。まぁ勘弁したって。」
「すっかり酔ってますね、フレデリック国王。」
「酔うてへん、酔うてへん。アンドレでも酔うてへんねん、負けてられへんわぁ」

かなり上機嫌な様子だった。

「ほな、皆もゆっくり休んだって!俺も寝るわぁ…!!ほなまた、明日見送ったるからな~!」

酔っ払ったフレデリックは、足をふらつかせながらリシャールの部屋に訪れた。

「リシャールの寝顔、見せてや。」

部屋の前にいたカミーユは少し戸惑った。

「え、えっと…それは…」
「なんでや、旦那やぞ?」
「は、はい…。」
カミーユは頷いて、部屋を開けた。

「……ん、綺麗やなぁ。すやすや寝とるわ。満足した、ほな、俺も戻るわ…」
ふらふらと自室へ戻ったフレデリック。





「……はぁ、良かった。」
カミーユは胸を撫で下ろし、安堵した。

リシャールはローブを着て、寝息を立てて眠っていた。

「…髪も凄く綺麗…?」
 
よく見ると、乱れていた髪や火照っていた頬も直っていた。

「……アンドレ国王、どういうことだったんだろう。」




あの後、部屋を去ろうとしたアンドレはカミーユにこう告げた。

「…なぁ、」
「は、はい!」
「君以外で、近くを誰か通ったか?」
「いいえ。」
「君以外の側近は?」
「リア、です。セドリック王子のお世話を、主に担っております。」
「そうか。」
「はい…。」


「…聞きたいことは山ほどあるだろうが、それはリシャールに聞いてくれ。それと…もしリシャールに何かあったら、すぐに俺に知らせろ。側近らには話を通す。…もしフレデリックに言ったら、首は無いと思え。リシャールの側近だから、俺も君を信じている。」

と、部屋の前にいたカミーユに言い残した。

もちろん、カミーユは全て聞こえていた。というより、盗み聞きしていた。

アンドレとリシャールが、親密な関係であることは明確に分かった。




色々と考えていたところに、リシャールが呼ぶ声がした。

「…カミーユ?」

「は、はい!どうされましたか、リシャール様。」

「…水がほしいの」
「はい、今お持ちしますね」


カミーユは水を持って行く途中、リアと会った。

「リア!」
「カミーユ。」
「…セドリック王子は寝られた?」
「うん、沢山の方々にお会いして、疲れてしまったみたいで。」
「そっか……」
「どないした?」
「えっと…話しながら。」
「う、うん…」

カミーユはリアに夜にあった事を話しながら、リシャールの元へ戻った。

「…えっ、アンドレ国王と?!」
「声大きいわ!」
「ごめん、…それって、お二人の過去に何かあったってことやろ?」
「多分……。せやから、アンドレ国王はそれをリシャール様本人に聞けって…」
「聞くんか?」
「聞くしかない…。ここまで知ってしまったんやから…」
「そうよね…」

リアは頷いて、二人でリシャールの元へ。

「リシャール様。お水です、どうぞ。」

「ありがとう。リアもありがとうね、セドリックのこと任せっきりで…。」
「いえ。」

カミーユは思い切って聞いた。

「…あの、リシャール様。」
「ん?」
「…アンドレ国王と…その…」

リシャールは手の動きが止まった。

「あぁ…そうよね…、二人にはちゃんと話さなきゃいけないわね。…あまり、良い話じゃないけど…聞く?」

「はい。そのまま隠されるのも嫌ですから。」
「…私も、聞きたいです。」

二人はリシャールの元に寄り添い、頷いた。

「何処から話したらいいかしら」
「最初、から…」
「そうよね。アンドレ国王は、私が生まれて初めての春に、出会った方よ。」
「えっと…ということは、アンドレ王子だった時ですか」

「そうよ。ペリシエはクロヴィス国王の時代で、私はリシャール・ヤプセレだったとき。」
「……」
「アンドレ様と出会った後、春の舞踏会で再会したの。そこで、私たちは結婚しようと決めた。でも…クロヴィス国王は、それを許す訳が無かった。…私は雄だし、異国の白蜜蜂で、身分も低かったから。」

リシャールの語る姿を見ていた二人は、その表情になんだか切ない気持ちになった。

「アンドレ様は沢山手を尽くしてくれた。…でも結局、結婚は許されなかった。私の住んでいた巣は焼き払われて、遂に居場所がなくなって…。」
「えっ、焼き払われたって?!」
「…きっと、反対したの使者じゃないかしら。でも、私のことを守ってくれた人も沢山いた。私の妹や、居場所を失くした私に手を差し伸べてくれた…ロナルド。」
「ロナルド?」

「えぇ、前の夫よ。シャンパーニで出会った靴職人でね。とっても優しい人だった。…私だけじゃなくて、私の子供まで救ってくれて、愛してくれた。」
「子供って」

「……アンドレ様の子供。リビオとナタリアっていうの。二人は、自分の父親はロナルドだと思ってる。アンドレ様が、実の父親だなんて知らない。でももう…二人はシャンパーニで新しい家庭を築く大人になった。」
「……。」

「確か…二人がまだ幼いとき、戦が起こった。」
「あぁ、スアレムとトゥクリフの…」
「そう。そのときに、私の側近が徴兵されて戦死した。ロナルドは元々病気がちな人だったから、戦には行かなくて済んだけど、突然病に倒れて、そのまま亡くなった。」
「…そんな…」

「戦が終わったあと息子がね、レステンクールの国王凱旋パレードに行きたいって言ったの。それに着いて行ったら、陛下と出会ったの。」
「陛下と出会う前、リシャール様にそんな事が…」
「当時は辛かったけど、もう大丈夫。」

リシャールは笑って見せた。リアとカミーユの切ない気持ちは、より一層強くなった。

「…辛かったから…、陛下の笑顔が滲みたのかしらね。陛下と出会ったとき、陛下は市民だと偽ってた。そんな陛下から、何度も何度も結婚を申し込まれた。最初は断り続けたけど、だんだん…この人と一緒にいても良いかもしれないって思った。でも、ロナルドのこと…アンドレ様のことも忘れられなかった。」

「迷われていたんですね……。私、その時の陛下を覚えています。」
「そうなの?」
「はい。陛下は、ご公務にも手付かずだったようで。常に、うわの空っていうか…」
「まぁ、あの陛下が?」
「はい、皆心配しておりましたよ!」
「それは珍しいわね。」
「そ、それで?」

「…陛下には春の舞踏会のときに、返事を聞かせて欲しいと言われた。その前に、もう…交尾してしまったから…、もし妊娠していたら、とか、アンドレ様がもし止めてくださったら…とか色んなことを考えてた。」
「………」
「でもね、結局決めたの。やっぱり、陛下の笑顔に救われたから…。」
「それで…今に至るってことですか」
「そうよ。」


「…でも……」
リシャールは笑っていたが、表情を暗くした。


「どうされたんですか」
「カミーユ、ごめんなさいね。聞きたくないもの、全部聞かせてしまって。」
「いえ。」

「それと……二人には、言っておく。」

リシャールは真剣な眼差しで、二人の目を見た。

「「はい。」」

「…もし、アンドレ様と私のことが知られたら、陛下が私のことをどうされるか分からない。もし万が一があったとき…、貴方たちは、この事を全く知らない、全く関係ないと言い張りなさい。」
「そんな、できません」
「できるわ。お願い。もう…巻き込めない…」
「リシャール様、私たちはリシャール様にお仕えできて幸せでした。…何があっても、リシャール様に着いて行こうねって、決めていたんです。」

「もし私がアンドレ様との子を、妊娠して出産しても?」
「はい。」
「これが陛下に知られたら、間違いなく私は処刑される。貴方たちも、かもしれない。だから……」
「いいですよ。」
「良くない!そうなったら、何処か遠い国へ逃げてちょうだい。」

「…逃げませんよ」
二人はリシャールの手を握った。

「……そんな」
「本当ですよ」
「…ありがとう…… 」

「もし本当に妊娠されていたら、どうされるおつもりですか?」
 リアがそう聞いた。

「…シャンパーニに帰って産む。一人でだって構わないわ。」

リシャールは真剣に答えた。





そして数日後、リシャールの腹は本当に膨れ始めて、妊娠していることが発覚した。




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