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美しい遊男
藍花浅葱瓶覗
しおりを挟む「女将、今日は売り切れかい?」
腕を組み、女将と話をしていた僧侶がいた。
名は鷸谷 憲慎。
僧侶である彼は、夜な夜な男遊郭に通い、溜まった欲を発散していた。僧侶が女に手を出すのは御法度ですから。なら、男ならいいだろうという考え。浅薄な考えだといったら浅薄だが。
ここの店では憲慎は常連。大事な上客なもので、女将も遊男達も当然彼を知っていた。
「…えぇ、満員御礼といいますか。申し訳ございません。」
「そうか。それは残念だ。しかし、女将にとっては嬉しい悩みだな」
「御尤もでございます。」
女将はうふっと笑った。憲慎も口角を下げ笑って頷いた。
「…あら、瓶覗。」
「はい?」
女将が廊下を歩く ある遊男を呼び止めた。
「この子は如何です?」
「ほぉ……?」
呼び名の通り、瓶覗色の着物を身に纏う彼。その色がよく似合った、可愛らしく穏やかな少年だった。
「この子は…もしや。」
「えぇ。紅葉の新造でごさいます。この子、琴がとても上手なのですよ。」
新造は姐女郎の見習いを受ける、禿を終えた若い者を指す。
「新造か。」
「…酒のお供だけですが。可愛らしい身体には、お手を触れずに。」
「こんなに可愛いのに?…もったいないなぁ」
「これから花が咲きますから」
「…瓶覗。こちらへ」
「はい。」
女将が彼を呼ぶと、静かに寄ってきた。
「藍花浅葱 瓶覗にございます。」
そう言って会釈した。
「……」
花魁の紅葉の後ろに付いて回るのを見た事がある。
そういえば、こんな子いたな。
こんなに可愛かったっけな…と、そんなことを思った。
美少年には目がない憲慎。
「じゃあ、今夜は酒を共に」
「かしこまりました」
「紅葉に怒られないだろうか」
「大丈夫ですよ、瓶覗なら良いと言っておりますよ」
「そうか、なら良かった」
「瓶覗。ご案内を。」
「はい。旦那様、ご案内いたします。」
新造の若い少年とは思えない上品な振る舞いだった。花魁の紅葉に教わったのだろうか。憲慎は瓶覗の後ろ姿を見て、あれこれ考えていた。
「?」
すると、前から歩いて来たのは、瓶覗がもう一人…。
「…瓶覗が二人いたのか?」
「あぁ…驚かせてしまい申し訳ありません。私の双子の弟なんです」
「双子…?」
「はい」
弟だという通り過ぎた彼は、瓶覗にそっくり似ていた。同じ藍色の着物。帯は菫色。
「…ふぅん…」
珍しいこともあるものだな、と思った。
「小さな部屋ですが。どうかご了承を…」
「構わないよ」
連れてこられた座敷は確かに小さかった。
というのも、憲慎はいつも位が上の遊男達を指名するので、比較的広い座敷に慣れていたからだ。
「……瓶覗といったか?」
「はい。瓶覗と申します」
瓶覗、色の通りに透き通るような清らかな少年だった。瓶覗を眺めながら、注がれた酒をぐいと飲む。
「ははっ、その上品な振る舞いは、ちゃんと紅葉に教わったのだな」
瓶覗は微笑むばかりで、返事は簡潔だし目も合わせてくれない。
「…君は琴が上手いと、女将は言っていたな。私に琴を弾いてくれないか」
「喜んで、お弾き致します」
瓶覗は琴を出し、一曲奏でた。
女将の言う通りに、とても上手であった。そして、何より…、
「……私と酒を飲むより、楽しそうに弾いていたな?」
瓶覗はとても楽しそうに琴を弾いていたのだ。琴から離れ、憲慎の隣に座った瓶覗。
「そんなことはございません」
床に手を付き、憲慎を見上げるようにしてようやく目が合う。
「……瓶覗。」
「あっ!」
憲慎は瓶覗を抱き寄せた。
「お、おやめください…」
「どうしてだ?」
「ここの決まり、ですから。私はまだ格子にも出ていない新造なので……」
「新造だからこそだ。学んでいる最中なのだろう?…私は客だ。客を喜ばせろ」
「……旦那様、いけません。」
瓶覗は咄嗟に憲慎から離れた。
「私は客だぞ?」
「…旦那様は、お坊さんなのでしょう?それなら、決まりを守って当然でございます」
「…誰から教わったのだ、そんな」
「紅葉姐さんからです。決まりは守りなさいと、それに…私にも断る権利があると」
「……」
憲慎は少しだけ腹が立った。
「君はお利口さんだね。…君の弟もこうなのか?」
「?」
「君の弟に代わってくれ。」
「…えっ?」
「双子で性格までそっくりなら、面白いなぁ」
憲慎は立ち上がった。
「…旦那様……!」
瓶覗はすぐに引き止めた。
「今日は私がお相手するのです。最後まで可愛がってください……」
涙目で訴えた瓶覗。憲慎の着物をくいと引っ張り、可愛らしく見上げる彼を見て、憲慎の意地の悪さが込み上げた。
「……決まりなのだろう?」
「…お手を触れないだけです」
「こんなに可愛い子を隣に置いて、手を出さない男が何処にいる?」
「……!」
瓶覗の顎を人差し指で上げた。
「いいか。客を、喜ばせるんだ。」
「……」
「私なら、君の売り上げを君の弟より、上回らせることも出来るぞ?」
「…そ、そんなことは、望んでおりません。」
「何が望みだ?」
「…ただ、紅葉姐さんのように素敵な花魁になりたいのです」
「……なら、売上も必要だと思うが。……客を喜ばせるために、学ばないとな?」
「そ、そうですが…。」
「口吸いをしたことは?」
「……」
瓶覗は目を逸らし、首を小さく横に振った。
「……知りたくないか?誰も教えてはくれぬことを。」
「…私を弄ばないでください。」
「弄んではない。ただ、知りたくないか と聞いたんだ。どうだ?ん?」
「……この事は…」
「安心しろ、誰にも言わぬ。女将にも紅葉にも。誰にも。内緒だ。」
「……」
眉を八の字にして、憲慎を見つめる瓶覗は小さく頷いた。
「良い子だ。おいで。」
憲慎は瓶覗を抱き寄せ、膝の上に座らせた。瓶覗は何度も唾を飲んでいた。
「いいか?名の通り、相手の口を吸うんだ。舌を吸うように。唾液を注いで、注がれるんだ。」
「……」
「瓶覗、口を開けて。」
瓶覗はただ憲慎の言う通りに従った。
「舌を出して。…おいで。」
「……!」
憲慎が瓶覗の頬を引き寄せ、口吸いをする。静かで小さな部屋に、唾液の混ざる音が響き渡る。慣れているような憲慎の口吸いは、瓶覗の腰を砕いた。
「…上手だな、良い子だ。」
「……」
憲慎に頭を撫でられ、嬉しそうに微笑んだ。
この小さな部屋、そして新造相手の部屋に床の用意はされない。憲慎は羽織りを床に敷いて、瓶覗を寝かせた。まだ恥ずかしがる彼の足を開かせて、露わになった小さな穴に唾を付け、その指で解してあげた。
「ん…!!」
指を動かす度に、足の指を動かし可愛い反応を見せた。
少しずつ、少しずつ、痛みから快楽を感じていく瓶覗に興奮した。
「……だ、旦那様、」
「…なんだ?」
「そ、そんな……、私には入りません…!」
「大丈夫だ。すぐに気持ち良くなる。」
「……」
憲慎の勃起した性器は、身体の小さな瓶覗にとっては大きかった。
「……欲しいか?」
「……」
「こういう時は、欲しいって言うんだよ。言ってごらん?」
「…ほ、欲しいです。旦那様の…それ…」
「良い子だ。ご褒美だ……っ」
「んぅ……ん…!」
先端からゆっくりと入ってきた。小さな穴が広がっていくのを感じた。少し痛い。
「痛ぃ……!」
「しっ」
憲慎は瓶覗の唇に指を当てた。
「いいか、痛い、じゃなくて、気持ちいいって言うんだ。分かったか?」
「……はい…」
「動くぞ」
「あっ、あぁっ、あぁん……!」
ずぶずぶと大きい性器が入ってくる。入っては出るのを繰り返す。姐さん達の声を真似て、可愛らしくいようと声を出すが、段々とそれどころじゃなくなってきた。
床に敷かれた憲慎の羽織りを握って、喘ぐ。
「あっ、あんっ、あぁんっ、あっあぁ…気持ちいい!あぁ…だめ!あぁっ、気持ちい、気持ちいい、」
「可愛いね。…良い子だ。」
瓶覗が喘ぐ度に、激しく強くなっていく。
不安も痛みも全て、快楽に変わっていた。
____ あぁ、私、悪いことをしてる。規則を破った。
罪悪感も快楽に変わってきて。
「……瓶覗…!ご褒美だ、」
「旦那様!」
「出すぞ、出すぞ」
「あっ…!あぁぁ…」
中に注がれた温かい精液。とろとろしてて、じんわりと温かさを感じて。
気付けば、瓶覗も射精していた。
「瓶覗、可愛いな君は。」
また夢中になって熱い口吸いを交わす。
「旦那様、またいらしてくださりますか?」
「…うーん…、君が花魁になったらな」
「ん…意地悪しないでください」
「ははっ、全く可愛い子だ!!」
こんなに狭くて小さな部屋で、二人きりで身体を交わすのも悪くないと憲慎は感じた。
それから憲慎は、高位の遊男を指名することはなく、必ず瓶覗を指名するようになった。
そして毎晩、必ず規則を破った。
瓶覗は、姐女郎に当たる紅葉にも、女将にも、憲慎との関係は内緒にした。
________ 旦那様、もっと教えて。
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