浮気した彼氏のせいでNTRれた私

初恋は・・・

「もげろ、クズ！！」

　浮気の代償を支払うのは浮気した本人でいいじゃない！
　私を巻き込むな！！
　浮気男と一緒にいるのが嫌になって部屋を飛び出すと何かにぶつかった。

「うぐっ」
「おっと」

　倒れそうになったところを腕をつかまれてなんとか転ばずにすむ。私がぶつかったのは彼らしい。

「ありが・・・」

　助けてくれた人にお礼を言おうと顔を上げると、相手が同じ学校の制服を着ているのに気付いた。
　ここは浮気男の家ではなく、浮気男の友達の家。
　嫌な予感がする。
　さっき、浮気男はなんと言った？
　この男子生徒は誰？
　私の腕をつかむ男子生徒の顔をマジマジと見る。華のない浮気男と違って、正統派のイケメン。癖のある髪は肌と同様に日に焼けてやや赤茶けていて、見たことある顔なんだけど、誰だっけ？
　浮気男と同じブルーのブレザーにスラックス。濃い赤のネクタイをしているのに、様になっている。まるで高級ブランドを着た雑誌のモデルみたい。
　同じ制服を着ているのに別物に見えるのは何故だろう？

「大丈夫？　怪我は？」
「あ、大丈夫です。手を・・・」

　腕をつかんでいる手を外してもらいたくて目で示す。手は逃がさないとばかりにしっかりと私の腕をつかんでいる。
　嫌な予感にドクドクと心臓が大きな音を立てる。

「！　夏川先輩！！」

　夏川先輩って、あのテニス部の部長の？！

「夏川先輩？！」

　テニス部の王子様！！
　この家は私とヤらせろと言った夏川先輩の家だったの？！
　計画的犯行じゃない！
　どこが頼み事なの！
　この浮気男！　私が合意しなくても逃げられないようにしておくなんて何考えているの？！

「もう言ってあるのか？」

　夏川先輩は浮気男に平然とした顔で私の合意を問うが、この件はイケメンでも許せない。
　私は顔が好みなら誰にでもヤらせるような性格はしていない。浮気男だって恋人として付き合うくらいは好きだったから、ヤったわけで。
　浮気男の浮気の慰謝料として付き合ってもいない男とヤれるような神経をしていない。

「うっす！」
「うっす、じゃない！！　この下半身男！！」

　臼であんたの浮気性なものを消し去ってやりたい！

「じゃあ、帰っていいぞ。春原」

　浮気男を帰さないで！！
　帰るんじゃない、浮気男！！
　お前のせいでこんな目に遭っているんだから、ヤらなくてもいいようにかばえ！！
　それぐらいは言え！！

「本当ですか？！　ありがとうございます、夏川先輩！！」

　浮かない表情から一変、浮気男は晴れやかな表情で元気よく返事をする。+深々とお辞儀。
　夏川先輩は浮気男が通れるようにと廊下の端に寄ったせいで、腕をつかまれている私も一緒に移動するしかない。そうしてできた隙間を通って、浮気男は一目散に玄関へと走って行く。
　自分の失敗の犠牲に彼女を見捨てるとは・・・

「もげろ、クズ！！」

　女の子の気持ちをこれっぽちも考えたことのない夏川先輩に腕をつかまれて動けない私は浮気男の後ろ姿にそう毒気吐くぐらいしかできない。

「春原。玄関の鍵を閉めた後はドアのポストに入れておいてくれ」

　部活の延長のように夏川先輩が気軽に浮気男に声をかける。

「うっすっ！！」

　浮気男の元気な返事が頭に来る。

「二人とももげてしまえ！！」