浮気した彼氏のせいでNTRれた私

プラネットプラント

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過ぎいく夏

【閑話】正義感と・・・

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 秋山は気にすることじゃないと言ったけど、俺は秋山の沈んだ表情が気になった。
 知り会う前に言って欲しかったという言葉も気になる。
 秋山がバイトをし始めた時、俺は秋山が噂になってる人物だとは知らなかった。
 元々、俺は目付きが悪いせいか、不良と間違われることが多くて、昔からの友達くらいしかいない。そのおかげで学校の噂話にも、うとかった。

 でも、学校で秋山と何度か話すことがあって、そのあと女子が「信じらんない。テニス部の夏川先輩と付き合ってるのに、今度は冬野まで取り込む気? 前の彼氏とだってまだ別れていないんでしょ?」と話しているのが聞こえた。

 テニス部の夏川先輩のことは部活紹介の時に見かけただけだったが、俺と違って万人受けする容姿をしていて、羨ましいと思っていた。
 その夏川先輩が秋山の彼氏?
 秋山のことがちょっと可愛いし、一生懸命なところがいいと思っていたので、彼氏がいたと知ってやっぱりと思ってしまう。

 だけど、女子の話に出てきた前の彼氏と秋山がどんな関係かは知らないし、夏川先輩と付き合っていることだって初めて知った。だけど、その話のおかげで、バイト先に夏川先輩が来た時に秋山の様子がおかしくなったことに不審を抱いた。
 普通、彼氏がバイト先に来たら、喜びこそすれ、あんなふうに顔色が悪くなるはずがない。様子だって、挙動不審になっていた。
 秋山と夏川先輩は普通の関係じゃない。

 昨日、秋山が見せたつらそうな表情を見て、それがはっきりわかった。
 秋山は何らかの理由で夏川先輩と付き合うことになったんだ。そうじゃなきゃ、「鬼。悪魔。鬼畜」なんて言葉が出てくるはずがない。

 俺は翌日、朝練が終わったばかりの夏川先輩を校舎に入る前に捕まえることにした。

「夏川先輩ですか?」

 少し湿っている柔らかそうな髪と女子どもが好きそうな顔立ちを前にして、気が引ける。王子様と形容されるだけあって、夏川先輩は俺とは正反対だ。

「そうだけど。何か用?」

 首を傾げる様すら、絵になっている。
 俺がやったら脅していると見られるのに、なんなんだ、こいつは。
 俺は自分と正反対に人好きする容姿をしている夏川先輩との違いに愕然としながら、用件を切り出した。

「秋山と別れてくれませんか。彼女が嫌がっているのわからないんですか?」

 秋山の名前を聞いた夏川先輩は目を細める。

「なんで、君にそんなこと言われないといけないんだ?」

 少し不機嫌そうに言われ、俺は諦めていた秋山の表情を思い出す。夏川先輩は秋山が自分のものだと思っているんだろう。それなら、秋山に選択権はない。
 事前に聞いていた話だと、夏川先輩は彼女と長続きしないらしい。
 だからといって、別れるまで秋山を苦しめさせておくわけにはいかない。
 俺は秋山に笑っていて欲しい。
 つらそうな表情や沈んだ表情は見たくない。

「なんでって・・・。なんでもないって言いながら、秋山がつらそうな顔しているからに決まっているじゃないですか」
「君、実花のことが好きなんだ」

 心の中を探るように見られ、俺はたじろいだ。秋山のつらそうな表情が見たくないと思う気持ちより深い部分まで見られているような気がした。

 俺だって高校生だし、女子と付き合いたいとは思う。
 だけど、この顔(ツラ)じゃ、気が合う子と付き合うのは無理だってのもわかっている。
 中学の頃から俺に言い寄って来るのは、ヤバそうに見えるところがいいという、関わりたくないタイプの女子ばかりだ。
 もっと、普通な子と付き合いたい。
 俺は不良じゃないし、巻き込まれることもあるからヤバいことは嫌いだし、鹿(か)ののことも大切にしてくれる子と付き合いたい。

 どうして、そんな子と出会えないんだろう?

 そう思っていた時に、秋山と出会った。

「それは、まあ・・・」

 付き合いたいと思っていた。
 最後までは口にしていなくても、夏川先輩にはわかったんだろう。
 人好きする顔を真面目にして俺に向けた。

「実花が俺と付き合っているのわかってて、それをやめさせたくないくらい好きなんだろう? それとも、他人の彼女を横取りするのが好きなのか?」

 横取りとかそんなんじゃない。
 そんな気持ちは多分ない。
 俺はただ――

「あんたと付き合ってることで彼女が苦しんでいるんだ。その苦しみから救ってやりたいと思って何が悪い?」

 夏川先輩は険しい表情をした。

 俺の言ったことの何が悪いんだ?
 助けたいと思うのは普通だろう?

「悪いよ。すごく悪い。身勝手な同情や正義感なんかで、余計なことをしないでくれ」

 同情?
 正義感?
 余計なことってなんだよ?
 秋山が不幸だってのに、どうして余計なことだって言うんだ?!

「そんなもんじゃない! 俺はただ――」
「不幸そうな実花を助けて、そんな自分に酔いたいだけだろう?」

 嘲笑うように言われた夏川先輩の言葉を否定する。

「違う! 俺は秋山を助けたくて――」

 夏川先輩の視線が俺を射抜く。

「実花を助けるなんて、そんなのはただの自己満足だ。俺は実花を満足させているし、君が口出しする問題じゃないよ」

 満足って、それは・・・。
 生々しい発言に顔が熱くなるのがわかる。
 付き合っているんだから、色々なことが込みなのもわかっている。
 だけどさ――

「・・・あんたは秋山の気持ちを考えたことあるのかよ!」
「それはこっちのセリフだよ。君は実花の気持ちを考えてこんなことをしているのか? 俺から奪うくらい実花のことが好きじゃないなら、黙っていてくれ」

 秋山は何も言わないけど、付き合っているからって好き勝手していいわけじゃない。
 俺の目から見て、こいつと会っていた時の秋山の様子はおかしい。
 付き合っている時の楽しそうな様子がほぼない。
 なんか、付き合いたいと思っていないのに無理やり付き合わされているように見える。

 でも、運動部でスキャンダルは禁物だ。たかが、部員の喫煙でも部活の休止や出場停止に発展する。部長の恋愛沙汰でも場合によっては影響は出るだろう。
 ただ、夏川先輩は振られることで有名な人物だ。それでいて、振られても、問題を起こしていない。問題を起こすより先に別の相手と付き合っているのか、そこまで感情的にならない性格なのか・・・。
 今までは問題がなかった夏川先輩でも、今回は何かあるかもしれない。

「あんた、部長やってるテニス部がどうなっても、かまわないのか?」
「悪いけど、そんな脅しは効かないよ。俺も部員も何もしてないし」

 はったりをかけてみても、夏川先輩はどこ吹く風という感じで動じない。

 秋山にあんな表情をさせているくせに。

「秋山にあんな顔させておいて?」

 ニッコリと微笑みかけられて、俺の憤りは軽くいなされた。

「それでも、君には関係ないだろ? 赤の他人なんだし、恋人同士のちょっとした行き違いなんかに首突っ込んで痛い目に遭うのは自分だよ」

 他人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んでしまえというけど、秋山の場合は絶対違う。夏川先輩がこんなふうに言ってくるんだから、普通の話じゃない。
 だけど、俺は夏川先輩にこれ以上、どう言ったらいいのかわからない。俺は秋山と付き合っているわけじゃなくて、秋山からは放っておいて欲しいと言われているのに夏川先輩のところに来てしまっていて、ただの気の合うバイト仲間でしかなくて。
 そんな俺に言えることがあるんだろうか?

「秋山はあんたなんかには、もったいないくらいいい奴なんだよ!」

 俺が言えるのはこれくらいだった。
 でも、何を言っていいのかわからず、思いを全部込めた言葉に夏川先輩は今までとは違う反応した。哀しそうに夏川先輩は笑う。

「そうだね。実花はいい子だよ」

 わかっているなら、苦しめないで欲しい。
 どうして、秋山を苦しめるんだ?

「だったら、なんで――」
「いい子だから、虫(・)が付きやすいんだよ。悪いけど、忙しいから」

 夏川先輩はそう言って、立ち去った。追いかけても取り付く島もない対応をされて、話にならなかった。
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