夫が勇者に選ばれました

プラネットプラント

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冒険者編~中~

 魔王を倒したとなったら、次は王様元勇者に報告をしなければいけません。



「勇者よ。魔王討伐をした褒美をやろう」



 現役バリバリのくせにサボタージュした奴が何かほざいているので、いらない褒美を言われる前に望みを言いました。



「王位をください」

「はあ?! 何を言っておる――」

「私は魔王を倒したんですよ。王位を貰うに相応しい功績じゃないですか? まだまだ現役なのだから、自分で行けばいいものを、私にさせておいて、褒賞をケチる気ですか?」

「はっ! 言うに事欠いて、勇者だからと、好き放題、言うのだな!」

「王女を殺してから、脅し取ってもいいのですよ?」

「娘を殺すと言うのか!」

「あなただって、王女を殺したじゃないですか。今、あなたが王位をくれないなら、あなたと同じことをしなきゃ、王位がもらえないってことでしょ」

「だから、なんでそうなるんだ?!」

「勇者でありながら戦おうとしなかった罪を、王位で支払ってもらいたいと言っているのに、四の五の言い逃れようとしているのは、あなたのほうでしょ」



 王と言い合いをしている私の顔の横を何かが飛んでいきました。



「!!」

「ぐあぁっ!」



 そして、王の肩に突き刺さりました。あの短剣は勇者パーティに参加している戦士の物です。



「死んでいなかったら、治せるんだよな?」



 短剣の持ち主は呑気にそう聞いてきます。



「ええ。死んでいなければ治せます」



 魔王を倒す時にも、この死んでいなければ治せる超治癒術のおかげで、何度も命拾いしました。

 王女の時にはできていれば、護衛騎士を助けることができたでしょう。



「さっさと王位を渡せ! 色ボケ男が!」



 しんみり物思いに耽る耳に戦士の殺意に満ちた声が入ってきました。



「戦士?」

「お前に裏切られて、殺された殿下の痛みを思い知れ!」



 戦士は王笏を握る手を戦斧で切り落としていました。



「戦士?! まさか、あなた――」



 王女の死は不貞の末の返り討ち。それが、一般的に広がっています。

 私の死んだ時の状況を知っているのは、私と私の護衛騎士。それに夫と浮気相手と、夫の護衛騎士。

 夫の護衛騎士はまだ生きていて。

 あとの二人がここにいるということは――戦士は私の護衛騎士の生まれ変わり?

 あり得なくはない。私が4度も生まれ変わっているのだから。



「幸せになるんだったら、俺じゃなくても良かったんだ! それを、コレットを殺しやがって、この野郎!!」

「あなた、もしかして、リオン?」



 コレットというのは、私の村人の時の名前でした。

 リオンはその時の夫の名前。



「そうだ。必ず帰ると言っただろう」

「でも、あなたは王女様と結婚したって・・・」

「王女が恋仲の男と結婚する為に、国に戻ったところで殺されたんだ」

「そんな・・・!」



 村人だった時に裏切られたと思っていた夫が、殺されていたなんて・・・。



「貴族になってもそうだ。やっと、帰ってきた時にはお前がいなかった。それどころか、殺されていて・・・」

「マリオンもあなただったの?! 私が邪魔で殺したんじゃなかったの?」



 マリオンは貴族だったの時の夫の名前です。



「邪魔なはずがあるか! せっかく、前の時のように暮らしていけると思ったのに、王女の横恋慕のせいで・・・!」

「戦士――リオン・・・」



 私の護衛騎士と同じく、戦士も私の夫だった勇者と同じ名前でした。私の護衛騎士の時と同様に、私は彼の名前を呼べませんでした。愛していたのに、裏切って、殺した夫の名前で心を許した人を呼びたくなかったのです。



「って、もっと、空気、読みなさいよ!」



 お涙ちょうだいの奇跡の再会の場面でも、卑怯者の元勇者の部下たちが攻撃を仕掛けてきたので、煩わしくなって、私は思いっきり殴り飛ばしました。

 ボコッとか音を立てて、壁にぶち当たりました。



「!!」



 ようやく、実力の差に気付いたようです。その場にいる者たちは顔色を失いました。

 私、勇者ですよ。

 魔王を討伐したんですよ。

 私と戦士の周りには殴り飛ばす前に襲い掛かってきた空気の読めない奴らが転がっています。殴り飛ばされた奴は、これが目に入らなかったってことですか?



「さ。リオン、続けよう」

「王位を譲ってもらってからにしよう」



 そう言って、リオンは無造作に戦斧を投げました。その先には這って逃げ出そうとしていた元勇者がいました。

 確かに。続きは王位を譲ってもらった後のほうがいい。
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