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第一章
赤毛の男4
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人の神経を逆撫でする性格の赤毛の男に能力なかったら、宰相にしちゃいけないと言われるようなヤバい生物が宰相。
ここが獣人の世界だということや、獣頭が美形とされることなど、最早、些細なことだ。
ヤバい生物だとわかっている者を宰相にするくらい今いるこの国はおかしい。
誰かがそんな人物を宰相にしないようにしなければいけないというのに、目の前のこの男は何の危機感も持っていない。
それどころか、この男は笑っているのだ。
「なんで、あんた気にしてないのよ?」
「だって、あいつ、仕事だけはできるし」
「え?」
話に美穂の頭が追いついて行かなくても、赤毛の男は話を続ける。
「あいついなかったら、この国、やっていけねーんだよ」
「はあ? 危ない奴なんだよね?」
赤毛の男の返答は意外なものだった。ヤバい生物だと言っているのに、それを宰相にしなくては国が機能していかないというのだ。
美穂にはまったく意味がわからない。
「取り扱い注意だけど、今は他国にとって、ラスボス化しているから安全だぜ。と言うか、宰相やってる狐族は大なり小なりそんな奴ばっかだよ」
おかしいのはこの国だけではなかった。他にも危ない狐族を宰相にしている国があるらしい。
他国からラスボス扱いまでされているなら、宰相の種族である狐族が一番、嫌われているというのも納得できる。一体、過去にどんなことをしでかしているのか怖いので、それ以上、考えないように話題をそらすことにした。
「・・・なんで、そんなこと知ってんの?」
おもむろに赤毛の男は美穂の頭の横に置いていた腕を下ろして、ベッドのフットボードに近いところに足を組んで座る。
「だって、最恐にヤバいことしたい奴が宰相になるんだし」
「・・・」
知りたくなかったことだった。
この国だけならともかく、どこに行っても、国を運営している実質ナンバー1が人格破綻者。
権力を与えてはいけない相手に権力を与えるなんて、自殺願望やドMでなければしないだろう。
この世界の価値観がおかしいことは美醜だけに留まらず、ヤバいことがしたい人物を宰相にすることが共通認識の世界だなんて狂ってる。
あまりに頭が痛くて、美穂は現実逃避したくなった。
と、美穂が遠い目をしていたら、ちょうど、食事が持ってこられた。
「お前、客になんて口叩いているんだ」
部屋に入らず、戸口に立って話していた為に言い争いが聴こえていたらしく、美穂は性質の悪い客から娼婦たちを守る用心棒でもある従業員に怒られる羽目になった。
「だって、こいつが、」
事情を説明しようとする美穂の言葉を従業員が遮る。
「だっても何もない! 相手は客だぞ! わかっているのか?! 売れないお前を買ってくれるだけじゃなくて、食事もおごってくれているんだぞ! 感謝こそすれ、そんな口をきくなんて、恩知らずしかいないぞ!」
「・・・」
それを赤毛の男はニヤニヤと意地の悪い笑顔で見ている。
「申し訳ありやせん、旦那」
「まあまあ。口が悪いのもこいつの楽しみって奴で」
「なっ! 口が悪いのはあんたのほうでしょ!!」
「美穂!! お前、言ったハジから、噛みつきやがって。旦那の懐がでかいから許されているが、本当なら食事抜きだぞ!!」
「そんなっ!!」
説教の間中、目の前の美味しそうな匂いに、美穂の視線は自然と従業員が持っている食事に引き寄せられた。
食事の匂いは空腹の美穂にはたまらなく、口の中に唾が湧き出してくる。
物欲しそうなのは目だけに留まらず、またしても自己主張するお腹の音で、お説教は続けられることはなかった。
「気にしてねーし、早く食わせてやってくんない?」
「すみませんでした! 旦那に感謝しろよ」
食事はサイドテーブルに置かれた。
美穂はベッドのヘッドボードに近いほうに座る。赤毛の男がフットボードよりに座ったのは、美穂が食事をとりやすいように考えたからかもしれない。
食事は胃に優しいミルク粥に具材を小さく刻んだスープだった。スープなので腹持ちはしないだろうが、お腹のすいている美穂には食べられるだけで充分だった。
隣りに気に食わない男がいることすら忘れて、美穂は至福の一時を過ごした。
ここが獣人の世界だということや、獣頭が美形とされることなど、最早、些細なことだ。
ヤバい生物だとわかっている者を宰相にするくらい今いるこの国はおかしい。
誰かがそんな人物を宰相にしないようにしなければいけないというのに、目の前のこの男は何の危機感も持っていない。
それどころか、この男は笑っているのだ。
「なんで、あんた気にしてないのよ?」
「だって、あいつ、仕事だけはできるし」
「え?」
話に美穂の頭が追いついて行かなくても、赤毛の男は話を続ける。
「あいついなかったら、この国、やっていけねーんだよ」
「はあ? 危ない奴なんだよね?」
赤毛の男の返答は意外なものだった。ヤバい生物だと言っているのに、それを宰相にしなくては国が機能していかないというのだ。
美穂にはまったく意味がわからない。
「取り扱い注意だけど、今は他国にとって、ラスボス化しているから安全だぜ。と言うか、宰相やってる狐族は大なり小なりそんな奴ばっかだよ」
おかしいのはこの国だけではなかった。他にも危ない狐族を宰相にしている国があるらしい。
他国からラスボス扱いまでされているなら、宰相の種族である狐族が一番、嫌われているというのも納得できる。一体、過去にどんなことをしでかしているのか怖いので、それ以上、考えないように話題をそらすことにした。
「・・・なんで、そんなこと知ってんの?」
おもむろに赤毛の男は美穂の頭の横に置いていた腕を下ろして、ベッドのフットボードに近いところに足を組んで座る。
「だって、最恐にヤバいことしたい奴が宰相になるんだし」
「・・・」
知りたくなかったことだった。
この国だけならともかく、どこに行っても、国を運営している実質ナンバー1が人格破綻者。
権力を与えてはいけない相手に権力を与えるなんて、自殺願望やドMでなければしないだろう。
この世界の価値観がおかしいことは美醜だけに留まらず、ヤバいことがしたい人物を宰相にすることが共通認識の世界だなんて狂ってる。
あまりに頭が痛くて、美穂は現実逃避したくなった。
と、美穂が遠い目をしていたら、ちょうど、食事が持ってこられた。
「お前、客になんて口叩いているんだ」
部屋に入らず、戸口に立って話していた為に言い争いが聴こえていたらしく、美穂は性質の悪い客から娼婦たちを守る用心棒でもある従業員に怒られる羽目になった。
「だって、こいつが、」
事情を説明しようとする美穂の言葉を従業員が遮る。
「だっても何もない! 相手は客だぞ! わかっているのか?! 売れないお前を買ってくれるだけじゃなくて、食事もおごってくれているんだぞ! 感謝こそすれ、そんな口をきくなんて、恩知らずしかいないぞ!」
「・・・」
それを赤毛の男はニヤニヤと意地の悪い笑顔で見ている。
「申し訳ありやせん、旦那」
「まあまあ。口が悪いのもこいつの楽しみって奴で」
「なっ! 口が悪いのはあんたのほうでしょ!!」
「美穂!! お前、言ったハジから、噛みつきやがって。旦那の懐がでかいから許されているが、本当なら食事抜きだぞ!!」
「そんなっ!!」
説教の間中、目の前の美味しそうな匂いに、美穂の視線は自然と従業員が持っている食事に引き寄せられた。
食事の匂いは空腹の美穂にはたまらなく、口の中に唾が湧き出してくる。
物欲しそうなのは目だけに留まらず、またしても自己主張するお腹の音で、お説教は続けられることはなかった。
「気にしてねーし、早く食わせてやってくんない?」
「すみませんでした! 旦那に感謝しろよ」
食事はサイドテーブルに置かれた。
美穂はベッドのヘッドボードに近いほうに座る。赤毛の男がフットボードよりに座ったのは、美穂が食事をとりやすいように考えたからかもしれない。
食事は胃に優しいミルク粥に具材を小さく刻んだスープだった。スープなので腹持ちはしないだろうが、お腹のすいている美穂には食べられるだけで充分だった。
隣りに気に食わない男がいることすら忘れて、美穂は至福の一時を過ごした。
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