獣人の世界で狐族専用の娼婦になりました

プラネットプラント

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第一章

白い髪の男3

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 美穂が怯えているのを目にして店主は美穂が他の娼婦たちと違うことを思い出した。美穂の常連客やごく稀に買ってくれる店の常連客に対してこんな姿を見せることはなかった為、店主は美穂がもう最悪な体験を克服したのだと思っていた。
 いつもは使わない女衒から店主が美穂を買ってしまったのは、珍しい獣無しだと聞いたからだ。攫ってきたり、街に出たばかりの田舎娘を騙して売り払うあの女衒から女の子を買うのは下級の娼館だけで、本来なら店主も買う気にはならない。
 しかし、用心棒たちに連れ出される女衒が叫んだ『獣無し』の一言に店主は惹きつけられた。店主もこの商売をしていて本物の獣無しを見たことはない。見世物小屋にいる獣無しですら、服に隠された胴体か上肢や上腕に獣成分がある。
 連れてこられた娘は性質(たち)の悪い女衒に連れられた他の子と同じように叩かれて言うことを聞かされたような暗い表情をしていた。
 見える範囲では獣成分がないので服を脱がせてみれば確かに獣無しで、店主は異様に興奮した覚えがある。
 即金で購入したあとは、他の新人娼婦と同じように扱った。新人娼婦で自分の境遇をすぐに受け入れられる者は少ない。あの性質の悪い女衒に連れてこられた女の子は特にそうだ。
 だから、中級以上の娼館では娼婦になる心構えができている娘しか娼婦にしない。自ら娼婦になることを志願してやってきた娘や評判の良い女衒によって借金返済さえすれば自由になれるのだと希望を持っている娘なら、自分の目的を果たす為に扱いやすいのだ。
 獣無しを扱うということで頭がいっぱいだった店主は美穂が連れてこられた境遇を忘れて、常連客たちや同業者に獣無しについて大々的に宣伝をした。常連客は友人知人に話のネタとして獣無しの噂を流してくれた。
 その結果、店主は規則を破る新参者の客の対応と脱走を繰り返す新人娼婦で忙しくなった。
 新人娼婦を部屋に閉じ込め、常連客以外には規則と罰則を言い聞かせ、大儲けしている間に美穂が感情を凍らせたことにすら気付かない有様だった。
 獣無しの人気に陰りが出た頃には逃亡癖もなくなり、美穂は落ち着いたように店主には見えた。暗く、陰気になった美穂を彼女の常連客達がからかったり、恋人扱いしたり、親しい友人のように接したりして今のような不器用な素人になった。
 なので、娼婦となったばかりで環境が受け入れられなかっただけだと思っていた店主には美穂が怯える理由がわからなかった。
 店の規則を破る客にはそれ相応の対応はした。罰金も取った。
 しかし、脱走を繰り返す美穂の様子を見ることを忘れていた。
 店主はそれを新人娼婦が境遇を受け入れられずに怯えてやったことだとしか見ていなかった。規則や罰金で守られてても、言葉や態度で傷付けることもできる。そのツケが今になって回ってきたのだ。
 にこやかな笑みを浮かべて店主は美穂を自分の身体で隠すように移動した。

「すんまへん。なんか今日は調子悪くなって休ませるよってに、別の子にしてくれはります?」

 被害を最小限にするべく、白い髪の男に別の子を勧める。美穂に新規の客は付かないだろうが、それも仕方ない。自分が美穂の傷の大きさを見逃がしていたことで後遺症が出ているのだ。これ以上、美穂に負担を強いるわけにはいかない。
 この商売のモットーは店主も娼婦も双方共に気持ち良く仕事をすることにある。娼婦の接客が悪くなれば、常連客の足も遠のいて店の売り上げも減ってしまう。客が付かなくなった娼婦は劣悪で借金を返済する見込みが遠くなる下級の娼館に移ることになり、店主は娼婦の代わりを探さなくてはいけない。
 娼婦の質を考えなくていいのは下級の娼館だけだ。中級以上はより質の良い娼婦を探し出してくる必要がある。その手間と費用を考えれば、多少、難があっても今いる娼婦のケアをしたほうが安くつく。
 次の娼婦を見付けるまで店の子の数が減るのも良くない。
 それくらいなら、新顔の客に別の子をあてがって、美穂を宥めて落ち着ければ、後日に買ってもらえるかもしれないと打算も動く。

「獣無しはその女性なのでしょう?」

 白い髪の男は美穂に向けた店主の視線だけで彼女が獣無しであると見なしたようだ。サロン内を見渡して娼婦一人ひとり獣成分の有無を探すよりも、店主の紹介や反応で見当を付けたのだろう。

「へえ。この子は人見知りが激しいさかい、ご新規さんはちょっと・・・」

 舌打ちしたい気分で店主は言葉を濁して暗に無理だと告げた。

「話だけでもできないでしょうか?」
「話でおますか?」

 店主は内心、首を傾げながら美穂の様子を見る。何の意図があって、この男がそんなことを言い出したのか皆目見当がつかないが、美穂ができるかどうか確認する必要がある。
 肩越しに見た美穂の表情は怯えながらも、店主同様、白い髪の男の申し出に驚いている。
 これなら話すくらいはできるだろうとあたりを付けて店主は話を進めることにした。

「話でもお代はいただきますが、よろしいので?」
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