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第一章
白い髪の男2
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白い髪の男はサロン内を見渡した。緩やかにうねる長い髪を首の後ろで結わえていて、目鼻立ちのはっきりとした派手な顔立ちでありながら、ストイックな印象だった。
何故、そんな人物が娼館などに来たのか、疑問を持つ者はここにはいない。
ここは娼館。表面上いくら取り繕っていても、男がここに来るということは、目的は一つしかない。どんなに禁欲的に見えても、男は男。来る理由も同じである。
だが、美穂の同僚たちは白い髪と同じ色の耳と狐の尻尾、獣(アンバー)の目をした白い髪の男に熱い視線を送っていた。
基本的に獣人というのは顔が整っている。道を歩いている誰を選ぼうが美男美女である。
美男美女ばかりということは、系統は違うとはいえ同じようなパーツを同じような配置にある人物が数百人単位で存在するということでもある。顔面偏差値の70未満がいない世界だと考えれば、平均値である50前後が85なのだ。顔のパターンも少ないので、有名人のそっくりさんがゴロゴロいるような世界といってもいい。
人間が動物の美醜を判別できないように、獣人もよくある顔で美醜を判別するのが難しい。
そんな顔面偏差値の世界で、何を持って外見の優劣をつけるかといえば獣成分だった。
これには獣人という特性が関係してくる。
獣人が持つ動物の特徴は各自一種族だけだが、果たして犬と猫の美の基準を一つで判断できない。どの種族であっても外見だけで優劣をつけるには獣成分の数で決めるのが非常に簡単だ。
つまり、顔で優劣が付きにくい世界なので、獣成分で優劣をつけてしまおうということなのだ。
それにもかかわらず、3つの獣成分しかない平凡な白い髪の男が熱い視線を向けられるのはカリスマオーラやフェロモンなどの見えない要素があるからかもしれない。
が。
顔で美醜を判断する世界に生まれた美穂にとって、+αの魅力などなくとも白い髪の男は充分、魅力的に見える。
と言うより、美穂にとってはここに来る客は誰もがイケメンである。
仕事だとは割り切れないので、やはり相手はイケメンではないよりはイケメンのほうがいい。
ついでに気遣ってくれるような優しさがあれば嬉しい。
いや、慮ってくれる優しさこそ一番欲しい。イケメンだろうが、獣無しはどう違うのか試したいと、意思や人格を無視して道具扱いする男はご免である。
(買ってくれないかな。買ってくれたら、ご飯♪ ご飯♪)
具無しスープ生活は美穂の心を折った。美穂にとって、お客=ご飯になりつつあった。客がつかなくてはそれが続くとあって、お気に入りの娼婦がいない客やお気に入りの娼婦が既に買われてあぶれている客に何とか買ってもらうおうとすることにも慣れていった。
仕事だと割り切ることも、空腹に耐えかねて、こうしてどんどんこの仕事に慣れていくのだろう。
店主の計画通りに美穂は変わっていく。
「獣無しがいると聞いて参りました」
「獣無し! おります、おります。お客さん、お目が高いわ~」
「いるのですね」
店主の肯定に白い髪の男は見つかってよかったとばかりに微笑んだ。
そんな白い髪の男とは反対に美穂は思考が止まった。買ってもらえたらご飯が食べられると思っていたものの、獣無しであることを理由に買われるのは嫌どころか、恐怖しかない。
ここに来たばかりの頃、美穂は獣無しということで売り出され、興味本位の男たちに買われた。獣無しだからと見下され、蔑まれて、身体に残る傷こそ付かなかったが、心が傷付き、生きる屍のように心を凍らせた。
そうしなければ、耐えられなかった。
(また、ひどい目に遭う・・・?!)
いくら客たちがイケメンだろうが、これは美穂には耐えられない。
お気に入りを買えずに美穂を買った奇特なこの店の常連客たちは、店主の方針をよく心得ていて美穂を傷付けることはない。
だが、獣無し目当てで来た客は店主からこの店の方針に従わず、傷物にしたら多額の賠償金を取ると言われても、美穂の心を傷付けるような扱いをした。
「美穂ちゃん。こっち来なさい。って、何やっとんの」
動こうとしない美穂に店主が業を煮やして近付き、美穂の身体が小刻みに震えていることに気付く。
「美穂ちゃん」
美穂の最悪な状態を思い出した店主の声が震える。
何故、そんな人物が娼館などに来たのか、疑問を持つ者はここにはいない。
ここは娼館。表面上いくら取り繕っていても、男がここに来るということは、目的は一つしかない。どんなに禁欲的に見えても、男は男。来る理由も同じである。
だが、美穂の同僚たちは白い髪と同じ色の耳と狐の尻尾、獣(アンバー)の目をした白い髪の男に熱い視線を送っていた。
基本的に獣人というのは顔が整っている。道を歩いている誰を選ぼうが美男美女である。
美男美女ばかりということは、系統は違うとはいえ同じようなパーツを同じような配置にある人物が数百人単位で存在するということでもある。顔面偏差値の70未満がいない世界だと考えれば、平均値である50前後が85なのだ。顔のパターンも少ないので、有名人のそっくりさんがゴロゴロいるような世界といってもいい。
人間が動物の美醜を判別できないように、獣人もよくある顔で美醜を判別するのが難しい。
そんな顔面偏差値の世界で、何を持って外見の優劣をつけるかといえば獣成分だった。
これには獣人という特性が関係してくる。
獣人が持つ動物の特徴は各自一種族だけだが、果たして犬と猫の美の基準を一つで判断できない。どの種族であっても外見だけで優劣をつけるには獣成分の数で決めるのが非常に簡単だ。
つまり、顔で優劣が付きにくい世界なので、獣成分で優劣をつけてしまおうということなのだ。
それにもかかわらず、3つの獣成分しかない平凡な白い髪の男が熱い視線を向けられるのはカリスマオーラやフェロモンなどの見えない要素があるからかもしれない。
が。
顔で美醜を判断する世界に生まれた美穂にとって、+αの魅力などなくとも白い髪の男は充分、魅力的に見える。
と言うより、美穂にとってはここに来る客は誰もがイケメンである。
仕事だとは割り切れないので、やはり相手はイケメンではないよりはイケメンのほうがいい。
ついでに気遣ってくれるような優しさがあれば嬉しい。
いや、慮ってくれる優しさこそ一番欲しい。イケメンだろうが、獣無しはどう違うのか試したいと、意思や人格を無視して道具扱いする男はご免である。
(買ってくれないかな。買ってくれたら、ご飯♪ ご飯♪)
具無しスープ生活は美穂の心を折った。美穂にとって、お客=ご飯になりつつあった。客がつかなくてはそれが続くとあって、お気に入りの娼婦がいない客やお気に入りの娼婦が既に買われてあぶれている客に何とか買ってもらうおうとすることにも慣れていった。
仕事だと割り切ることも、空腹に耐えかねて、こうしてどんどんこの仕事に慣れていくのだろう。
店主の計画通りに美穂は変わっていく。
「獣無しがいると聞いて参りました」
「獣無し! おります、おります。お客さん、お目が高いわ~」
「いるのですね」
店主の肯定に白い髪の男は見つかってよかったとばかりに微笑んだ。
そんな白い髪の男とは反対に美穂は思考が止まった。買ってもらえたらご飯が食べられると思っていたものの、獣無しであることを理由に買われるのは嫌どころか、恐怖しかない。
ここに来たばかりの頃、美穂は獣無しということで売り出され、興味本位の男たちに買われた。獣無しだからと見下され、蔑まれて、身体に残る傷こそ付かなかったが、心が傷付き、生きる屍のように心を凍らせた。
そうしなければ、耐えられなかった。
(また、ひどい目に遭う・・・?!)
いくら客たちがイケメンだろうが、これは美穂には耐えられない。
お気に入りを買えずに美穂を買った奇特なこの店の常連客たちは、店主の方針をよく心得ていて美穂を傷付けることはない。
だが、獣無し目当てで来た客は店主からこの店の方針に従わず、傷物にしたら多額の賠償金を取ると言われても、美穂の心を傷付けるような扱いをした。
「美穂ちゃん。こっち来なさい。って、何やっとんの」
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