獣人の世界で狐族専用の娼婦になりました

プラネットプラント

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第二章

手紙

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 エイドリアンは都の中心部から外れたところにある店の倉庫に旅先から持ち帰った商品が収められるのを部下と共に確認してから、店に向かった。
 都に入った時にはまだ空高くにあった太陽が沈み、辺りは夕闇に包まれている。
 今回の旅では定番商品が安く手に入っただけでなく、新規の商談が纏まって、充分な成果が上がって、エイドリアンは満足する内容だった。
 店で留守の間の報告を受けてから、美穂のところに行こうと笑顔の奥で考えた。

「エイドリアンさん。入庫確認なんかせずに先に店に戻ってくれてもよかったのに」
「入庫確認は仕入れの最大の楽しみだよ。それをサボって店に行くなんて、ただの罰ゲームじゃないか」
「そういうもんですか?」
「お前は嫌いなのか? 苦労して手に入れて運んできた商材が倉庫に収められるのを確かめるなんて、バイヤー冥利に尽きる最高の一時だぞ」
「そういうもんなんですね」

 まだ売り子の意識が残っている部下には、バイヤーの楽しみがわからないようだ。
 エイドリアンはそれが歯痒い。せっかく、バイヤーにできると思って昇進させた部下は目の前で売り上げが上がることでしか、仕事の成果がわからないのだ。
 それに売り子だったから、仕入れてきた商品が途中ですり替えられたり、盗まれるなどとは思い至らないのだろう。
 バイヤーは仕入れた際だけでなく、倉庫に収めるまで毎日、抜き打ちで仕入れた商材がちゃんとそろっているか確認する義務がある。
 部下任せにして、商材の数や種類が異なっていた場合、責任は部下ではなく、義務を怠った自分がとらなければならないので、他人任せになどできないのだ。

「バイヤーができるのはここまでだ。あとは売れる売れないは売り子次第だから、流行ってくれた時ぐらいかな。自分のアンテナが正しかったと思うのは」

 売り子だって、売れるように努力するように、バイヤーもこれから売れそうな商材を見極めて仕入れてくるのだ。将来を見据えて客の需要を読むのは、業績の良い売り子だった経験が存分にいかせる。

「へえ、そういうもんなんですね」

 まだまだ売り子として仕事を楽しむ部下の生返事にエイドリアンは一人前のバイヤーとして仕事を任せられないと心の中で溜め息を吐いた。

 店がまだ開店の時間だったので、エイドリアンたちは通用口から入って事務所に向かう。

「ただいま、リカルド」

 事務所には金色がかった赤狐の獣頭の獣人がいた。獣頭をしているが、目は獣の目アンバーではなく、茶色の目をしていて、獣人の美的感からするとかなりの美形だ。
 店を任せられているリカルドはエイドリアンよりも歳上で、エイドリアンが独立するまで働いていた店の先輩だ。彼はバイヤーになって10年経ってもエイドリアンのように独立しなかった変わり種である。
 エイドリアンたちのいた店では16歳過ぎにはバイヤー見習いになることがある。接客に適さないと思われた者たちがそうなる。
 しかし、それは会頭やその親戚に気に入られていない者、というのが前提となる。
 気に入られてさえいれば、接客に適さなくてもバックオフィスや秘書などの仕事が与えられ、危険の多いバイヤー見習いになど回されない。
 同様に、よっぽどのことがない限り、売り子から志望していないバイヤー補佐に回される者はいない。
 売り子からバイヤーを志望してた者は、バイヤー補佐を数年経験して独立する。エイドリアンのように。
 リカルドはエイドリアンのような独立心を持ってバイヤーになったわけではない。
 元々、接客が好きな性質だった。
 だが、会頭は親戚や気に入っている他の若手にバックオフィスの経験を積ませたいと考え、運悪くリカルドは出世の階段から弾き出されてしまった。
 家族と一緒にいたいとバイヤーを辞めたがっていても、会頭は彼の希望よりも私情と店の経営を優先した。
 そこで、独立することを決めたエイドリアンはリカルドに声をかけて店を任せることにした。エイドリアンは安心して各地を飛び回れて、リカルドも家族との時間がとれるようになった。win-winである。

「エイドリアン、お帰り。今回は予定より遅かったね」
「その分、取引先が増えましたよ」

 オーナーと雇われ店長という立場だが、エイドリアンもリカルドも以前と同じように先輩後輩の時と同じ口調で話している。

「それはすごい。あ、そういえば、宰相閣下からお手紙が来ていたよ」
「宰相殿から? なんだろう?」
「心当たりはないのか?」
「さあ」

 まったく心当たりのなかったエイドリアンは肩をすくめた。

「宰相閣下のお手紙は無視できないからね」
「確かに」

 リカルドが苦笑して差し出した手紙を、エイドリアンも苦笑して受け取る。無視できない相手からの手紙なので、一応、目を通して返事まで出すしかない。

「・・・」

 嫌なものはさっさと返事を書いてしまおうと、目を通しているうちにエイドリアンの眉間に皺が寄った。

「エイドリアン?」

 呼ばれてエイドリアンはわざとらしい笑顔を浮かべて手紙を握り潰す。

「――いや、なんでもありません」

 リカルドはエイドリアンに笑顔を無理矢理作らせた手紙に書かれていた内容が気になった。
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