僕の装備は最強だけど自由過ぎる

丸瀬 浩玄

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第四章

第42話 野営の準備を始めよう

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 クラウディアさん達と共にパーティーを組んでみて、彼女たちの実力が思ったよりも高い事に気が付いた。

 タイガー・ベア2体に苦戦して死にそうになっていたから、レベルはそれなりでも大した実力じゃないと思っていたのだが、それは大間違いだったようだ。

 出てくる魔物を次々と3人の連携で簡単に葬っていく。なんか僕、いらないんじゃない? と思えてくるくらいだ。なんでタイガー・ベアにやられそうになっていたのかそれの方が疑問だ。

 「クラウディアさん達ってそんなに実力があるのに、何でタイガー・ベアにあれほどの苦戦を強いられたんですか?」

 こういう時は聞くのが一番だろう。情報は身を助けるからね。

 「いや、お恥ずかしい事に、一体のタイガー・ベアを相手にしている時、他のタイガー・ベアが近くにいる事に気が付かず、不意打ちを喰らってしまい、あのような失態を……」

 なるほど。僕にはセバスさんやクイがいるから索敵で魔物を見落としたりしないが、普通に探索するとそういった危険もあるんだね。覚えておこう。


 さて、僕の方だがクラウディアさん達に戦闘をすべてお任せしているかというと、そういう訳ではない。しっかりと報酬分は働くつもりだ。魔物が出現すれば率先して討伐に向かうし、魔物が近くに来ればそれとなく伝えて奇襲を受けないようにもしている。

 ちなみにクラウディアさん達は何処で手に入れたのか、このカエサル迷宮の30階層までのマップを持っているらしく、思いの外順調に迷宮攻略を進めている。

 そして僕達がパーティーを組んでから半日が経ち、今日の探索はここまでにしようと話が上がった時には既に10階層まで到達していた。

 マップが有るって素晴らしいな。こんなにサクサク先に進めるんだから。


 ◇ ◇ ◇
 

 「やっぱり、クラウド様は本当にお強いですね」

 今晩休むのにいい場所をマップで探しながら移動中、クラウディアさんがそう話しかけてきた。

 「そうですか? 僕からしたら、クラウディアさん達の強さに驚かされましたけど」

 これはお世辞ではなく本心だ。連携って素晴らしい。僕も誰かと連携して戦いたい。そう思わされる戦い方だ。ただ、セバスさんやレヴィは許してくれないだろうな。

 「そんな事無いです。さすがA級迷宮にソロで挑んでいるだけの事は有ります。戦いを見ていて驚かされてばかりです。それに索敵能力もすごいです。シーフのリーゼよりも早く魔物を感知して我々に知らせて下さいましたし」

 「ホントですよ。私よりも先にバンバン魔物見つけちゃうから、自信無くそうですよ。これでも、腕利きのシーフって言われていたのにな」

 あちゃ! 申し訳ないことしたかな? でも、セバスさんが次々魔物の位置情報を伝えてくるから、さすがに黙っているのも危険だし、まあ、安全第一って事で。

 『セバスが魔物位置情報教えるのを止めたら?』

 ちょっとレヴィさん、急に恐ろしい事言わないで。

 『流石に今回はクラウディア様達がいますので止した方がいいでしょう』

 セバスさん? クラウディアさん達がいなければいいと? 後で本気でやりそうだからこの人達怖いよ。


 それからしばらく迷宮内を探索していると。

 「クラウディア様。この辺りでテントを張るのが良いかと」

 アンネマリーさんに言われ周りを確認すると、確かにここは迷宮の中でもやや広めの空間になっておりテントを張るにお誂え向きの場所になっていた。

 『セバスさんはどう思う?』

 『特に問題ないかと』

 セバスさん的にも問題ないみたいだ。ならばここで野営の準備をするのだが、どうしよう。どうせクイは人化して食事を要求してくるだろうし、僕自身もこれから何日も味が微妙な迷宮飯を食べ続けるのも嫌だし、魔物を警戒しながら寝るのも嫌だ。ここは言っちゃおうか? セバスさんもよく分からないがオーラ的に大丈夫みたいな事言ってたし、たぶん問題ないだろう。

 「あの、一ついいですか?」

 秘密を話すのは緊張します。

 「クラウド様? どうされました?」

 可愛らしく小首を傾げるクラウディアさん。見入ってしまいそうだ。だがしかしここは我慢して。

 「あのですね。僕の秘密を守っていただければ、迷宮で安心&美味しい野営が出来ますがどうします?」

 我ながら秘密なのに軽いセリフだ。というか、これって秘密守らない人でも普通「誰にも言いません」とか言いそうだな。まあ、クラウディアさん達なら問題ないと思うけど。

 「あの、よく分かりませんが、私達はむやみやたらに人の秘密を話すような事は致しません」

 僕もそう思います。

 『セバスさん。どう思う?』

 『嘘偽りのない心かと』

 『ん? セバスさんって、もしかして人の心読めたりします?』

 なんでも出来るセバスさんなら、それくらい出来そうだ。

 『流石に、そこまでは出来ませんが、長年の経験で、表情や態度で人の心の動きはある程度読むことが出来ます』

 それでも充分すごいけどね。まあ、それは良いとして、話しても問題なさそうか。よし分かった。それなら話そうかな。

 「実はですね。まずこれを見て下さい。セバスさん、クイ出て来て!」

 「畏まりました」

 「はいです。ご主人様」

 僕が呼ぶと、目の前にセバスさんとクイが突然現れた。僕には見慣れた光景だが、クラウディアさん達は突然目の前に老紳士の執事がとエルフメイドが現れた事で目を白黒させている。

 「これが僕の秘密です。じゃあ、魔法のテントとみんなの分の食事の準備をお願いします」

 「畏まりました」

 「はいです。ご主人様」

 僕が指示を出すとセバスさんは、素早く魔法のテントを出し、クイと共に中に入っていく。恐らく、中で食事の準備を始めるのだろう。

 取りあえず、混乱しているクラウディアさん達3人が立ち直ったらちゃんと説明しよう。ただその前に他の仲間も出しておこう。

 という事でまだ立ち直らないクラウディアさん達3人を尻目に、

 「みんなも出て来ていいよ」

 と声を掛ける。すると、待っていましたとばかりに。

 『やっと自由だ~』

 『レヴィ。お客様の前ですから失礼の無いようにね』

 『主よ。拙者が周辺警戒を致しましょう』

 『にゃ~』『んにゃ~』

 レヴィ、アキーレさん、イジスさん、そして子猫状態のキーレとアーレが思い思いに現れた。


 クラウディアさん達3人はその光景に美人が見せてはいけない表情になってしばらく固まってしまっていた。
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