魔王と勇者の珍道中

藤野 朔夜

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これは死亡フラグですか?

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 俺は羽瀬はせわたる。二十一歳。
 ついさきほどまで、王都にいました。
 え?日本人じゃないのかって?日本人ですが何か?
 忘れることの出来ない五日前。彼女に振られて、フラフラと家に帰る途中で、俺はさらに奈落が有ると知った。
 地面が唐突に消え失せたのだ。まさに奈落へ落ちるとは、こういうことか、と実感いたしました。
 いや、実際は、世界を渡ってたんだけど。しかし、落下感はひどかった。気持ち悪かった。そんで怖かった。
 いわゆる、異世界転移って奴ですね、わかります。とか生きてた俺は思いました。しかも、神官による召喚系で、魔王討伐の為に、勇者を召喚したらしい。
 でも俺を見た瞬間に眉根を寄せたなんか偉そうな人は「こいつは勇者ではない」とか言い出してくださいまして。実際俺も、勇者です。とか名乗る気は全くないので、そこは良いんだ。
 良くないのは、その後。
 それでも召喚に応じられたのだから、と神官は俺には魔力が有るんじゃないか。とか言い出した。
 まぁ、貧相な体格を見たら、誰だって剣を振り回すのは無理だと思うだろう。しかし、平和な日本じゃ、俺は平均的な体格だ。たしかに筋肉は無いけど。贅肉も無いから、良いじゃないか。
 で、魔力って何?とか思いながら、何かの装置みたいなので測られて。失望しましたという表情を見たら、あ、魔力も無かったんだな、とわかったんだけど。
「誰がこんな役立たずな勇者が欲しいと言った」
 そう偉そう人はお怒りになられていました。
 後で知ったけど、この偉そう人、王様だったらしい。そりゃ偉そう、じゃなくて、本当に偉いわ。
 あ、話が逸れた。
 でだ、まぁ、やらせてみたら才能が有るかもしれない、という望みでも一応有ったのか。体力強化からの剣振り回し。いや、振り回されてたけど、俺は。
 それでも一生懸命だったんだぞ。だって、魔力が無いなら、魔術は扱えない。無い物をねだるより、身体は有るんだから、何とかしようとは思うだろう。
 まぁ、何ともならなくて、五日で放り出されたわけなんだが。
 は?パレードって何ですか?
 とか思ってるうちに、馬車に乗せられてゆらゆらと。
 で、気付いたら街の外。門はすぐそこに見えてるけど、厳つい騎士様はきっともう俺を通してはくれないだろう。
 ドナドナが頭の中を巡ってるが、そんな気分だ。
 あの、俺この世界の常識とか、全くわからんのですが。
 一応持たせられた鞄を見たら、あらびっくりーな四次元ポケット状態で。保存食のようなものから、路銀にしろというような、銅貨と銀貨と金貨。
 おー、この鞄すげぇ。そんでありがたーい。
 けどな、俺貨幣価値も全くわからんのですが。
 これはあれですか?
 さっさと夜盗なり盗賊なりに身ぐるみはがされて、殺されてしまえってことですか。
 え、ちょっと。説明は?本当に何も無し?
 案内人も無し?
 鞄の中に有った地図らしきものを睨みつけて、ここで立ち止まってても仕方ないか、と街が有ると思われる方向に歩いてみる。門番さんだって、俺がいつまでもここに居たら、困るだろう。多分。
 とりあえず、今まで居た王都の門が見えなくなった辺りで、座り込んだ。
 今までさんざん「役立たずの勇者」と言われて来たが、これは無いんじゃないか?
 すぐに次の勇者呼ぶとか、言ってなかったか、おい。
 だったら、俺を日本に帰してくれよ。
 来れるんだったら、帰れるだろう?
 それとも何か、俺は役立たずだから、そんな人間にわざわざ魔力割いてる暇無いってか?
 でも、別に戦争が起きてる感じも無いんだよなぁ。
 王都だから?都心だから?田舎に行くとひどいの?
 実際魔王がどんなのかとか、なんで魔王を倒さなきゃなんないのかとか、聞いてもいないからわからんわ。
 まぁ、魔王って言うんだから、悪い人?や、人じゃないのか?
 えぇー。俺その辺の常識も無いよ。ちょっとどうすんの。
 ホントこれ、野垂れ死にコースじゃん。
 しかも、地図有るけど、魔王がどこに居るとか、情報一切ないし。魔王って言うんだから、どっかの国?魔の王だから、これのどっかが魔の国なの?
 そもそも魔って何?
 魔物的なの?魔獣みたいなの?魔人とか?あ、魔族って言われる系?
 でもなんか、魔族と魔物は別物で、魔物は魔族も狩るんだー、とかそういうの有るよね。よくある話で。
 でも人間側は、魔物も魔族って思ってるから、魔物の被害を魔族のせいにするーみたいなの。
 あ、小説の読み過ぎか。
 いや、異世界転移してる時点で、そういう観点から見なきゃどうしようもないよ。
 まぁ、いいや。総称で魔の人って思っておこう。魔獣とか魔物とか、理性なさそうなのは除外。そういうのは、話してもわからない相手だから、こっちも関わりたくない。
 あれ、ちょっと待って。
 俺今絶賛放り出されて、野垂れ死にコース中。
 魔の人がどうこう考えてる場合じゃないよ。
 夜盗とか盗賊も怖いけど、魔獣とか魔物が居るなら、それの方が怖いよ。
 話が通じないんだよ?
 夜盗や盗賊なら、なんとか話し合い出来る気がする。怖いけど。
 でも、そういう話し合い出来ない系のが出てきたら……。うん。俺確実に終わるね。グッバイだね。
 あーあ、あの日彼女にフラれなかったら、あの時間にあの道通ってないのに。
 なんでかなー。
 今頃イチャイチャラブラブコースだったはずなのに。百八十度違うじゃん。死の淵だよ。
 あの五日前から、悪夢が続いてるの?
 都合良い夢なら、俺こんな扱い受けてないだろ。今頃勇者として、そりゃー大切に扱われてるわ。しかも剣使った時に、グッサリ切った手も、ガッツリ痛かった。
 あんな痛い思いはしたくないので、持たされた剣はただの装飾品になるでしょう。
 ほんっと、さっきから実にならないことしか考えつかねーよ。どうすんの、これから。
 ここに居たら、親切な冒険者さんが、通りがかりで拾ってくれないだろうか。
 とりあえず、金はもらったと思って良いだろうから、この金で、雇われてくれたりする人現れないだろうか。
 貨幣価値がわからないけど、金貨の方が高いだろうとは予測が付く。ご丁寧に、銅貨と銀貨と金貨が別々の袋に入れられているので、銅貨全部渡して、色々お話聞けた上で、次の街まで連れてってくれるような人。
 んな都合良く行くなら、俺ここで野垂れ死にコースになってねぇか。
 都合良く行かなかったから、俺は放り出されたわけで。
 盗賊さんでも出てくれたら、この金渡して俺が盗賊に入れてもらえるように交渉するけどなぁ。うん。もうこの際盗賊で良い。
 だってさ、
「路銀が有るだけありがたいと思え。出立パレードをしてやるから、後はどうにでも好きにしろ」
 って言われたし。
 好きにして良いなら、死なないで済むなら、俺は盗賊にでもなるよ。
 役立たずだろうけど。
 こんなわけのわからん異世界で野垂れ死にとか、笑えないから。
 どうせなら、日本に帰る手段を探したい。
 その為には、出て来て欲しいのは博識の冒険者さんだけど。俺の運勢は悪いだろうから、もう盗賊で良いとまで思ってる。
 死ななきゃ、いつか帰れるかもしれない。だから、死にたくないんだよねー。
 どんだけ人に嫌われようと、どうでも良いよ。
 だってこの国の王様は、俺を勇者として出立させたけど、勇者であるなんて一ミリも思ってないんだから。
 すでに嫌われ者で、厄介者だったのだから。それが盗賊になってようが、どうなってようが、きっと彼らは気にしないだろう。
 国の中央の人物が気にしない俺を、他の一般人が気にするわけもない。そう思わないか?
「君、こんなところで、どうしたの?」
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