魔王と勇者の珍道中

藤野 朔夜

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まだたどり着けないギルド

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「ええーと、剣とアイテムボックスはここで売れるんだ?で、アイテムボックス小さいの、ここで選んで買えば良い、と」
 あれから歩いたのはたった半日だった。一日歩くって言われた気がしてたんだけど。あれ?とか思っていたら、イシュさんは「魔力をしっかり身に着けたからかな。ワタルの歩きに不安定さが無くなったからね」って言ってた。意味はよくわからないけど。とにかく一日目より早く歩けたんだろうと思う。
 ブツブツ一人で呪文の様に呟きながら、お店を見上げてる俺。
 理由は、イシュさんと別行動だから。
 一応剣とアイテムボックスは、最低値段がこの値段だから、それ以下を言われたら売らない様にとは言われてる。
 見えてないフリしてるけど、すぐ傍に精霊いてくれるし。駄目っていうのは、言ってくれるから、俺は不安なんじゃない。そう、不安じゃないよ!
 ううう。人結構居るよう。俺王宮の中にずっと居たから、街がこんなに人が多いとか思わなかった。
 王都を出る時のパレードも、わけがわからず馬車の中に座ってただけで。街の様子なんて見てなかったもんなぁ。
 こっち来て、俺の年齢下がったの?って思っちゃうくらい、子どもみたいなことしてる。
 わかってるんだけど。
 わかんないことだらけだから、どうしたって不安なんだよ。
 あ、不安って認めちゃダメ。怖くなるから。大丈夫大丈夫。
 よし。
 気合入れなきゃ道具屋にも入れないとか、本当に情けなー。
 あ、ちなみに今俺のアイテムボックスには、何も入ってない。アイテムボックスは、売ったお金で買えるからと、俺の持ち物すべてイシュさんに預けてある。
 金も有るから、安全な預け先だよね、うん。
「いらっしゃーい」
 店に入ったら、意外なことに若い女の人がやってる店だった。
「あ、あの。この剣とアイテムボックス売りたくて。後、これより小さいアイテムボックス欲しいんですけど……」
 わかんないから、用件を先に話してしまう。
 まごまごしてるより、店員さんにも良いはずだ。
「はーい。買取と、アイテムボックスのお買い上げね。あぁ、このアイテムボックス大きいから、使いづらかったのかしら?大きいと何をどれだけ入れたか、わからなくなるものね。そうねぇ。このくらいの大きさ、どうかしら?中を見てから決めてくれて大丈夫よ。この辺りの鞄は外の装飾も人気なの。ゆっくり見てて。私は買取の査定してるから。出来たら声かけるわね」
 外套のフード被ったままの俺相手に、店員さんは愛想の良い態度で対応してくれた。
 アイテムボックスを売りたい理由を、店員さんが勝手に推測してくれて良かった。何で売るのか聞かれたら困るし。
 まず、アイテムボックス使ってないから、使いづらいとかそういうのもわからん。
 でもそうか。あれ大きいんだ。たしかになんだかたくさん入ってたな。
 俺は店員さんに勧められた鞄の棚の一つを取って、中を見てみることにした。あれだよ。俺の唯一の持ち物の元の世界の鞄入んなかったら、意味ないし。
 でも、中除いて一言。わからん。
 これがどんくらい入る物なのかが、そもそもわからない。そんな俺には、鞄は決められないので、店員さんが向こうに居るのを良いことに、精霊にちょっと視線を送ってみる。
 どんなのが良いのか、何かアドバイス的なの欲しいって、視線で伝えるの難しいな。
 けど、俺の傍に居てくれた精霊は、俺が何に戸惑ってるのか気付いてくれて。二個の鞄を指差してくれた。
 このくらいの大きさで大丈夫ってことか。
 で、二個を選んでるのは、装飾とかが良いって意味かな。
 うーん。この二つだと……どっちが俺に合うかな。前の鞄は肩から下げるタイプだったけど。これは腰に巻くポーチタイプ。
 外套の中に隠れて良いね。掏りとかにあわなさそう。
 装飾も派手じゃないから、俺は結構好きな感じ。
 色違いか。一つは緑、もう一つは群青色。イシュさんの瞳の色とは違うけど、この群青色良いなぁ。
 俺が青い方の鞄を手に取った理由に思い至ったのか、精霊はクスクス笑ってるけど。いーのー。俺のここでの保護者は、イシュさんなんだから。
 日本じゃとっくに成人して、大人になってる年齢だけど。俺はここでは何も知らない子どもだから。だから、保護者がイシュさん。だから、イシュさんに繋がる様な色に惹かれる。
 んーっと。鞄決まったけど、まだ査定終わってないみたい。
 暇だなー。店内歩き回って良いかな?良いよね。
 一人で完結して、店内を歩き出す。俺が触っちゃダメなのとか有れば、精霊が止めてくれるだろう。歩き回るのダメなら、そういう仕草で教えてくれるはずだから。それが無いってことは、良いってことだー。
 魔道具屋さんだから、わけわかんないのたくさんかと思ってたけど。
 これ、普通に調理道具じゃない?とかいうのが有ったりして。魔術ってか、魔法?使うと何か普通と違う働きするのかなー?
 って考えて。あれ?結局俺のわかんない物ばっかじゃん。という結論に落ち着いた。
 ここじゃ精霊と大っぴらに話せないし。もしこれが普通に流通してる物なら、これ何ですか?なんて聞けないし。
 うーん。と思いながら歩いてたら、奥の一角は武器が置いて有った。
 あ、そうだよ。俺ここに剣も売りに来たんだから、こういう武器、普通に有るってことだよ。
 でも怖いので近付きません。武器の扱いに慣れないのは、見るのにさえ慣れてないからなんだよ。こんな一角は通り過ぎよう。
「ごめんなさいねー。鞄決まってた?他に欲しい物が有るかな?それだったら待ってるけど」
 俺が店内回って見てたら、店員さんに声かけられた。
「あ、いえ。他は良いです。鞄はこれが」
 群青色のポーチ鞄を店員さんに手渡す。
「買取金額、確認してねー。剣がこの値段。アイテムボックスはこの値段。どうかしら?」
 この店は、とっても良心的みたい。
 イシュさんに教えられた最低額の倍の値段が付いた。精霊も頷いているのをチラッと確認して。
「それで良いです。俺の買いたい鞄の値段、そこから引いてください」
 とお願いする。
 群青色の鞄の値段は確認してたし。ここですぐに暗算出来る簡単な数字だし。
 騙されないから大丈夫だ。うん。
「はいはーい。ありがとうねー。えーっと、鞄はすぐに使うのかな?それなら、値札切っちゃうけど、どうしようか?」
 店員さん、フレンドリーだなぁ。
 こっちの世界はこれが普通なのかな。下手に丁寧語とか使われると、こっちも緊張するから、俺は気楽で良いけどね。
「あ、すぐ使いたいので、お願いします」
 ここでもらえたお金とか、しまいたいし。すぐに使えるようにしてもらえるのは、ありがたい。
 袋に入れてもらったりするほど、無駄なことは無いと思う。
「はーい。それじゃ、預かった剣とアイテムボックスの金額がこれ。で、こっちが買ってもらえるアイテムボックスの金額ね。で、引かせてもらうので、はい。この金額ね」
 渡された金額には間違いが無いし、一緒に鞄も渡してもらえたので、そのまま鞄に突っ込む。
 財布とか、有ったら良いのかもしれないけど。今はそのままで良いや。
 どうせ鞄に入れる予定のって、俺の持ってた鞄と、金になった元贋金だし。
「そのまま入れちゃうのねー。それじゃ、たしかにこの大きいアイテムボックスじゃ駄目だわ。これ、お財布おまけしちゃう。冒険者さんみたいだから、この街に来たら、またここを利用してね」
 優しい店員さんは、自分の店の売り込み上手でした。
 財布は特に変わった物でもなく、ただの布の袋みたいな感じの奴。
 精霊をまたチラッと見て、頷いてるから大丈夫。と判断。
「ありがとう。また機会が有ったら、必ず来るよ」
 そう約束して、俺は道具屋さんを後にした。
 あー、イシュさんどこだろ。
 道具屋さん出たら、精霊に付いて行けば良いって言われてるだけ。なので、精霊の後を追って歩き出す。目的地、ちゃんと知ってますっていう顔をするべきか?とか思ったけど。考えてみたら俺フード目深に被ってるから、バレないよね。
 うん。大丈夫大丈夫。
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