魔王と勇者の珍道中

藤野 朔夜

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俺の職業

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「ワタル、そっちに行ったよ」
 あれから俺とイシュさんは、帝国で冒険者してる。
 今追っているのは雪ウサギ。可愛い名前なのに、凶悪で可愛くない奴。
 雪に紛れる真っ白な毛のせいで、苦労するらしいけれど。俺たちは魔力がわかるから、雪ウサギを追うのに苦労しない。
「っと、捕獲ー」
 簡単な結界。それに向かって雪ウサギを追い込んだのはイシュさんで。俺はその結界を閉じて外に出られなくしただけなんだけど。
 俺の魔法を扱う力は、強くなった。
 俺の外見も相まって、帝国では魔族の冒険者コンビだと思われてる。
 良いけどね。人間だと思われなくても。イシュさんと一緒に居られるのは、変わらないから。
 体力も付いて来たから、イシュさんの足手まといにはなってない、と思いたい。
「お疲れ様、ワタル。これで依頼分は完了かな」
 雪ウサギの毛皮が欲しいって依頼だったから。凶暴な獣相手に傷付けないで捕獲するのが、俺たちの仕事だった。
「うん。これで十羽だから、完了」
 縄で縛ってしまうのは、ちょっとかわいそうなんだけど。生きてるままだから、余計に高くなるらしい。
 というか、こいつらこれから殺されるのか。とか考えると、ちょっとなんか、なぁ。
 けど、凶悪と言われるだけあって、冒険者はこいつらによく怪我をさせられるらしい。
 雪に紛れて襲われるから、冒険者でも気付きにくいんだってさ。で、ここはよく冒険者が通る場所で。だから余計にこいつらを捕まえて欲しいってのも有るらしい。
 イシュさんがポイッとアイテムボックスに、捕獲した雪ウサギを入れる。このアイテムボックスは、生きてる物も入れられる優れ物なのだ。再度冒険者として旅立った時に、最初に見た時は驚いたけど。今じゃもう、慣れた。
 慣れなきゃ冒険者やってられない。
 結構時が経つのって、早いもので。俺の冒険者のランクは今はB。すごいだろ。
 俺だってびっくりだ。
 多分イシュさんが居てくれるから、依頼遂行が早いし、完璧だからだな。
 俺の職業欄が、ちょっとおかしなことに成っている。まぁ、冒険者以外は、見えない様に隠してるけど。
 冒険者以外に有るのは、勇者と魔王の伴侶。
 これさ、もう。なんか色々駄目だと思う。人に見られたら。
 ちなみにイシュさんは、冒険者以外は魔族の国の国王と、勇者の伴侶。
 これも見られたら駄目なやつ。
 俺たちの冒険者証は、消しまくってる物が多い。
 称号も。俺は加護が付きまくってたりするからさ。
 しかし、職業に勇者が付くとは、俺は思ってもいなかった。最初見た時、はぁ?って言ったもんな俺。
 そういえば、結婚の時に必要な身分証は、この冒険者証で良かったんだよな。俺ギルドに登録してて良かった。
 俺はこの世界で産まれたわけでは無いから、戸籍なんてものは存在しない。
 イシュさんとすぐに結婚できたのは、冒険者証を持っていたおかげだった。じゃなきゃ、そこからの手続きして、ってなってたんだよなぁ。
「そういえば、最近ワタルはお腹すいたって、言わなくなったね」
「うん?あれ?そういやそうだ」
 なんでだろ?
 最初の頃は、そりゃー最大に腹の虫が鳴いてましたけどね。
 夜とか朝とか昼とか関係無しに、盛ったイシュさんに貪られてましたから。ええ。
 しかし、ここのところ、そういうことをした後も、別に腹がへったなぁ、とか思わない。
「俺の魔力の巡りかな」
 なんてイシュさんは笑ってるけど。
 ええ?それって、俺は魔族に近くなったってこと?
 寿命の長さは、ケイミルス神様に確認したから、間違いは無い。
「こっちの尺度ではねー、魔力が多ければ多いほど、長生きするんだよねー。だから、ワタル君も、長生きだよー」
 なんて、軽い感じで言っておられました。
 だから別に魔族に近付くのは、良いんだ。イシュさんと、同じくらいは生きるだろうとは、思っているから。だからさ、魔族になったよー、とか言われても、俺は別に問題じゃないんだけど。
「イシュさんの魔力の巡りって……」
 触れ合いですか。そうですか。
 そいや、イシュさん、俺とそういうことした後は、満たされてますって顔をよくしてるし。
 まぁね、たしかにね。俺も最近じゃ満たされた感が有るなぁ、とか思ってたけどな。
「ふふ。そういうことなら、俺は頑張ってワタルに魔力を注がないとねぇ」
 ニヤリって笑ってますよ、イシュさん。
 それはあれですか。ギルドに戻って、依頼の完了がきっちりしたら、覚悟しとけよってことですか?
 こんだけ一緒に居るのに、イシュさんのそういうスイッチが、一体どこで入るのか。俺は未だにわからない。
 わからないままだから、もう盛ったイシュさんを止められないわけで。
 いやもう、俺もさ、そういうことするの、嫌じゃ無いからさぁ。余計止まらないわけだ。
 イシュさんと手を繋いで歩くのは、もう俺たちの間では習慣だ。
 帝国は同性婚認めてるから、何も言われないことが大きいんだろうけど。
 触れ合うのが手のひらだけでも、俺たちの魔力は通い合う。
 前に……初めての時か?イシュさんが魔力の相性のこと言ってたけど。俺たちの魔力量だと、他人には暴力にしかならないけど。お互いには本当に心地良い魔力だから。心地良いって思うのが、相性が良い証拠なんだそうで。
 俺の右手と繋いでるイシュさんの左手には、黒曜石がはめ込まれた指輪が有る。俺の空いてる左手にも有るけど。もちろん二人とも薬指にしてる。
 どこにするのが一般的だったの?とイシュさんに聞かれた俺が、左手の薬指と答えたからだ。
 元の世界の習慣を、ここに持って来なくても良いんだけど。とは思ったけど。
 最初から左手の薬指にしてるから、もう違和感は感じない。
 シンプルな指輪で、宰相がもっと凝った物を作って送ります。とか言ってくれたんだけど。俺もイシュさんも、冒険者するから、そんな細工の物は要らないと断った。
 どうせ国のこと、何にもしない王様と妃だから。俺たちに金を使わないで、他に回して欲しいとも、俺は言ったけど。イシュさんはそれをニコニコして聞いてただけで、反対もしなかったから、俺のその案はとおってしまたわけだ。
 イシュさんと俺の色の象徴として、黒曜石が選ばれたみたいなんだけど。
「ワタルの黒の方が綺麗だね」
 なんてイシュさんに真顔で言われた俺は、真っ赤になって俯いても、仕方ないと思う。
 俺もイシュさんの髪の黒い色の方が綺麗だなとか思ってたから、人のことは言えないけど。
 冒険者ランクが上がって、実入りも良いから、金に困ったことは無い。
 体力も上がって、魔力操作もうまくなって、力が付いたから勇者の称号が手に入った。上に、職業に勇者まで付いた。ので、依頼遂行に困ることも無い。
 イシュさんとの仲も、ずっと良い。っていうか、いつもいつもくっついてる。でもそれが嫌じゃ無い。うん、いや。くっついてるのが普通になってて、一緒に居ないと落ち着かない。
 順風満帆だよなぁ。
 最初は本当に、この世界に来て、死ぬしかないのか、とか思ってたのが、嘘みたいだ。
「ねぇ、イシュさん。俺は本当にこの世界に来て、イシュさんに会えて良かった。ずっと言ってるけどさ。イシュさんあの時俺を拾ってくれて、本当にありがとう。一緒に居てくれて、本当にありがとう」
 感謝の気持ちを忘れない。祖母ちゃんの言葉どおりに、俺はいつもイシュさんへの感謝を、思ったら口にする。
「ふふ。俺の方こそ。あの時ワタルが俺の手を取ってくれて、嬉しかったよ。愛してる。これからもずっとね」
 イシュさんからは、あっつい愛の言葉が返ってきました。
 俺が感謝を口にする様に、イシュさんは俺へと好きだといつだって口にする。
「俺も、イシュさんのこと、好きだよ」
 感謝の気持ちを、思った時に口にする様に、好きだと想う気持ちも、俺たちはすぐに口にする。
 だから、俺たちはいつも仲良くいられるんだろうな。
 これからも、イシュさんと俺は、こうやって冒険者をしていくんだ。
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感想 7

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みんなの感想(7件)

紅月
2020.04.04 紅月

小さな村

超えた畑→肥えた

だと思うのですが

解除
ジェミニ
2020.01.26 ジェミニ

面白かったです!!
ちょっと気になったのですが、勇者さんが召喚された国は、その後どうなったのでしょうか?

解除
ヨミ
2018.11.11 ヨミ

弟の彼方目線が気になりますね
引き止めるようなことを言うてたのが気になります
彼方目線気がついたら書いてください
m(*_ _)m

解除

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