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《5》倍返し
しおりを挟む「昼間、俺の下半身の体毛を消滅させたの、お前だろ」
「だから、何のことかしら」
「とぼけるな。衣類は残したまま毛根だけを取り除くなんて、そんな器用な魔法、限られた奴しか使えない」
ぐっと顔が近くなる。テオバルトの熱い息がかかり、鋭い双眸から目が離せなくなる。
「濡れ衣よ。私がやった証拠でもあるの?」
「あぁ、あるさ」
テオバルトは抵抗のできないラウラを見下ろしながら、自信満々に口を開く。
「魔力の残滓が消える前に魔力分析をした。そしたら淡い緑色……何度も何度も見たことがあるこのラウラの瞳の色だった。間違いない」
魔法陣の放つ光は基本的に白色なのだが、特殊な魔法分析をすると魔法を作り出した人の色が浮かび上がる。主に瞳の色が反映することが多いのだ。
ラウラの魔力は瞳と同じ新緑の色。
テオバルトとは実技の授業で何度もペアを組んでいるので、ラウラの魔法はよく見知っている。
魔法分析をされたならば、残念だが言い逃れは難しいだろう。しらを切るのはここまでだ。
「魔力分析なんて高度な技術、いつの間に習得していたのよ。またテオに先を越されたのね……っ」
「当たり前だろ。学生の間に習得しておけば、それだけで今回みたいに悪いことをした奴をあぶり出せるからな……って今はそんなことどうでも良い」
すり……と厚みのあるふっくらとした唇を指で撫でられて、ラウラはトクンと胸を高鳴らせた。
「何でこんなことをした?」
「……」
「どうしてこんな子供じみた悪戯をしたんだ?」
「……」
ギュッと唇を一文字に引き結ぶ。
答えたくないという気持ちもある。
しかしそれよりも自分でも分からない感情を、言葉で上手く説明できる自信がなかった。
「そんなに俺の性器に興味があったのかよ」
「っ、違うわっ!」
「じゃあなんでだよ」
「……」
「答える気はないんだな」
片手で拘束した手首を押さえつけながら、頬を撫でられる。
真っ直ぐに射抜いてくる表情がいつものような意地悪な顔ではなく、とても真剣で。
何故か心臓が早鐘を打ち始める。
「なぁ、ラウラ。俺たちここへ入学してからは、毎日のように競い合って高め合って勉強してきた。流石に俺のこと、少しは分かってるよな?」
テオバルトは不機嫌な表情をしつつも、声色はいつもと変わらず冷静だ。
怒号を浴びせられても当然のことをしたのに、テオバルトの瞳が真剣で熱っぽくて、無意識のうちに目を奪われる。
「俺はやられたら倍にしてやり返す主義なんだ。知ってるだろ?」
ひゅ、と息を呑んだ。
そしてテオバルトの指先から紡がれる魔法陣をただぼうっと見つめた。
《消滅》
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