【R18】御曹司とスパルタ稽古ののち、蜜夜でとろける

鶴れり

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《27》日本文化と便利グッズ(1)

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 せっかくなので着物姿で展示会に向かうことにした。大和の姉の独身時代の着物が残されているらしく、おそらく今後着ることもないということで今回お借りすることにした。
 着物は洋服とは異なり、多少サイズが大きくても小さくても着付け次第でぴったりに着こなすことができるのだ。

 淡い空色地に雪輪の文様が入った小紋と呼ばれる着物を着る。帯は爽やかに白地のものを選んだ。お太鼓結びをして、品のある装いにまとめる。

「うん。似合ってる。可愛い」

 大和はそう言って瑛美の髪をくるんと丸め、かんざしを挿してくれた。

「ありがとうございます」

 大和はいつも瑛美のことを可愛いと褒めてくれる。卑屈にならずに素直に大和の言葉を受け入れられるような、器量を持てるようになりたいと切に思う。

 大和は墨色地に橙色の翁格子文様が入った着物を着用していた。

「着物と帯に、小物の組み合わせを考えるのがとても楽しいです」
「洋服と全然違うだろう。着物は面積が広いから似合う色も変わってくるし」

 ファッションECサイトを運営する会社に勤めている二人は、普段から多くの洋服を見ている。同じ身に纏う衣類なのに、洋服と着物は構図から仕立てから、全くの別物なのだ。
 色の組み合わせも素材の組み合わせも、洋服とは似合うものが異なる。帯結びによって、着姿の表情も変わる。それがとても不思議で、着物の奥深いところでもある。

 大和とともに五階へと移動する。そこには一面畳が敷かれており、着物が帯や小物類が所狭しと飾られていた。

「わぁ、たくさんありますね……」
「日本全国から工房が集まって新作を展示しているんだ。俺も楽しみ」

 履き物を脱いで、展示スペースへと足を踏み入れる。

 職人がひとつひとつ手作業で織ったもの。手で絵付けを行った美しい商品に心が躍る。

 ちらりと見えた金額のゼロが多くて、いくらかすぐに理解できなかった。

「じゅう……違う、ひゃく……?!」
「中にはそういう式典用や展示用のものもあるが、普段使いができる手ごろなものもあるぞ。洗濯機で洗えるものとか。ほら、触ってごらん」
「触り心地が違いますね」
「やたら高ければ良いわけでもないし、安ければ良いというものでもない。それぞれメリットとデメリットがあって、どう選ぶかは消費者次第だ。まぁ、これに関しては洋服も同じだけど」
「確かにそうですね」

 ゆっくりとひとつひとつ商品を手に取りながら、隣で大和が丁寧に説明をしてくれる。

「これは留袖と言って、着物の中で最も格が高い着物なんだ」
「ほら、この着物の文様見てみて。大根とおろし金があるだろう。江戸時代の言葉遊びから生まれた文様なんだ」
「この帯はリバーシブルになっていて、両面使える。結び方次第で印象が大きく変わるから面白いよ」

 普段なかなか知ることのなかった着物の世界に触れて、もっと勉強してたくさんのことを知りたいと思った。
 ただ単純に日本人として日本文化について詳しくなりたいという気持ちもあったが、一番の理由は楽しそうに話す大和が、生き生きとして輝いていたからだ。

 今日から早速教本を読みこんで、知識を深めようと心に決める。
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