トップアスリートはセフレを可愛がりたくてたまらない

鶴れり

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どうしたらいいの(5)

 今度は『クライミング選手 スキャンダル』で検索すると、五年前のゴシップ週刊誌の記事が出てきた。

『スポーツクライミング日本代表選手が夜の街で豪遊?! 夜な夜な違う女性を連れてラブホテル生活!』

 そんな見出しとともに、女性の顔にモザイクのかかった写真が何枚もアップされている。
 最後まで記事を読み進めると、この選手はゴシップ誌が発売された二ヶ月後の世界大会への出場停止処分となっていた。
 ゾワ、と背筋が凍る。

 私、とんでもないことをしてしまっているんじゃ……っ!

 愛の存在が、修哉のアスリート人生の足枷となっている。今までは修哉がアスリートだと知らなかったが、知ってしまったからにはこの関係は終わらせなければならないだろう。

 修哉は愛の前で特に語ることはなかったけれど、毎日毎日トレーニングして、努力していたことは知っている。そんな修哉の努力を、未来を、愛が潰していいわけがない。

 ──修哉との、関係を切らなくちゃ。

 心臓を抉られたかのようなツキンとした痛みを感じながら、必死にかぶりを振る。

 もし、セフレじゃなくて、恋人だったら……?

 身体だけの淫らな関係ではなく、ちゃんとした恋人関係であったなら、たとえ世間にバレてしまっても不祥事にはならない。

 でも、修哉は愛のことを好きなわけではない。身体は……どちらかといえば好かれているような気がするが、それは恋愛感情ではない。
 元々そういう契約だった。愛は仕事のストレスを埋めるため、修哉は失恋の痛みを慰めるため、互いの傷を舐め合うだけの関係だ。

 それに愛自身も、未だに恋人を作ることに前向きになれない。
 悲しみに暮れる母の背中。何度も家から出ていく母のパートナー。たとえ結婚していても、どんどん崩れていく夫婦関係を間近で何度も見てきた──。

 やっぱり、怖い。

 修哉に捨てられるのを恐れて、距離を詰められない。
 修哉のことを知ってしまうのが怖い。
 もっともっと好きになってしまうのが怖い。

 甘い蜜を知るのと知らないのでは、受けるダメージが全く違うのだから。

「好き──は、言えない」

 修哉にはたくさん慰めてもらって、癒してもらった。修哉と過ごした時間は楽しくて、嫌なことを全て忘れられた。
 この綺麗な思い出を色褪せさせたくない。

 大井が本当にゴシップ誌に情報を売るつもりなのかはわからないけれど、そもそもスキャンダルになるようなことをしているほうが悪いのだから。世間に暴露される、されない云々の前に、人として清く正しくあらなければならない。特にトップアスリートとして日本を背負う修哉ならなおさら、世間は厳しい目で見てくる。

「身体だけの関係なんて……いいことないね……」

 その場しのぎの慰めは、結局何も残らない。ならばせめて、思い出だけでも綺麗なまま胸の内に抱えていたい。

 修哉の会社との仕事が終わったら、関係解消を申し出よう。
 まだ打ち合わせで顔を合わせなければならない。それが全て終わったら、連絡先も消して、今後一切会わない。

 今ならまだ引き返せる。傷も浅くて済む。

 むくむくと大きくなりそうな恋心をこれ以上育てないためにも、愛は修哉からもらったワンピースをクローゼットの奥に仕舞い込んだ。


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