稀有な魔法ですが、要らないので手放します

鶴れり

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【9】新生活(3)

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 身綺麗にして服を借りたフラミーニアは、やっと美女から家に入る許可を得た。
 家の中はあちこち薬草と思われる葉や根が散乱している。石臼や目盛がついたガラス製の容器があったり、火を焚く釜も置かれている。

 案内されるがままカウンターにある椅子に座った。
 すると美女は奥から茶色い乾燥した根と石臼を持ってきて煎じ始めた。ある程度の細かさになると土瓶に入れ、水と共に煮出す。

「少し待ってて。薬草茶を作ってるから」

 メリッサは白い柔らかなパンを皿に盛り、フラミーニアに差し出した。

「ありがとう。天使さまは薬屋さんなの?」
「そうね、薬師よ。それより天使さまはやめて頂戴。私はメリッサよ」
「私はフラミーニア」

 二人向かい合って腰をかける。薬草の青々しい香りがたちこめてきた。

「とりあえず、貴女が自殺しようとした経緯を教えてくれるかしら。ここまでしてあげたんだから、教えてくれても良いでしょう?」
「死のうと思っていた訳ではないの。何から言えば良いのかなぁ……」
「全部よ、全部」
「誰にも言わないでくれる?」
「こんな森の中で暮らしているのだから、言う相手も居ないわ」

 そっか、そうだよねと納得する。フラミーニアは静かに話し始めた。

「まず、こんな外見になったのは魔法を使った代償なの。体が退化するとは知っていたんだけど、まさか毛が全てなくなるとは思ってなくて……」
「そうだったの。てっきり髪を売ったのかと思ったわ」
「髪って売れるんだね」
「綺麗で長ければ高く売れるそうよ。でも女性が髪を売るなんて、よほどの貧困で困ったときくらいじゃないかしら」
「そうなんだ。メリッサは物知りだね」

 誰かと会話できる楽しさがじわりと胸に広がっていく。フラミーニアは無意識のうちに頬が綻んでいた。
 ほわほわとした気持ちになりながらパンを千切って口に運ぶ。小麦の芳ばしい香りがした。

「それで、フランの魔法って?」
「【魔力転移】」
「えぇっ! それって魔力を自由自在に移動させるっていう……」
「そうなの。第三者同士の間で移動させることもできるし、私の魔力を与えたり、逆に相手から魔力を奪うことも出来る」
「まさか……。そんな魔法、本の中でしか読んだことがないわ」
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