稀有な魔法ですが、要らないので手放します

鶴れり

文字の大きさ
17 / 52

【17】突然の再会(3)

しおりを挟む

「フラン、こんなところに居た」

 追いかけてきたセノフォンテは座り込んだままのフラミーニアの手を引き、強制的に立ち上がらせた。
 気持ちの整理がつかないまま、じっとセノフォンテを見つめる。

「改めて言わせて。俺はセノフォンテ・アプレーア。女神から賜った魔法は【変化魔法】。公爵家の屋根上で会っていた犬も、運び屋の鷹も。全部俺なんだ。……黙っててごめん」

 ドクンと大きく胸を打つ。
 全魔力を譲渡したときに犬から人間に変化するのを見て、おそらく獣化魔法だろうと思っていた。

「ううん。ちょっと、びっくりして……。変化出来るのは一つだけじゃないんだね」
「うん。生き物なら何でも出来るよ。男でも女でも、動物でも虫でも。魚は……やったことないけど多分出来る」

 セノフォンテの言葉を一つ一つ飲み込んでいく。

 一度大きく息を吸った。
 そしてずっとずっと言いたかったことを伝えるために口を開く。

「セノ。私ずっと、ずっと謝りたかったの。勝手に全ての魔力を転移して何も言わずに逃げ出して。本当にごめんなさい」

 深く頭を下げた。謝ったからといって許されるわけではないとは分かっている。
 でもあの時は、そうする他に手段がなかった。

「あの夜、目が覚めた時は本当に驚いたよ。だけどフランが【魔力転移】を賜っていると分かって。何故あんな窮屈な生活をしているのか、そして逃げ出した理由もすぐ理解したよ。フランは何も悪くない」

 セノフォンテはフラミーニアの肩を掴むと腕の中に閉じ込めた。

「俺こそ、近くに居たのに何も出来なくて、ごめん」
「なんで……。セノが謝ることないよ」

 ぎゅっと騎士服を握る。目から溢れそうな雫を必死に留めた。

「それにフランから魔力を貰って、困ったことは何もないから。フランは何も気を負うことはないよ」

 厚い胸にそっと顔を埋める。そうでもしないと、情けなく泣き喚いてしまいそうだった。
 小さく「ありがとう」と呟いた。

「俺こそずっと【変化魔法】だってこと隠してて……フランは怒ってない?」
「怒るわけないよ。犬のセノも鷹のセノも、人間のセノも、全部大好きだから。ちょっと……いや大分驚いてはいるけどね」

 顔を上げながらセノフォンテと密着していた体を離す。
 真正面からしっかりとセノフォンテを見つめると、頬が少し赤らんだ。

「それを言ったら私だって大分見た目が変わったでしょう?」
「そうだね」
「よく私がフラミーニアだって分かったね。名前で気づいたの?」

 セノフォンテはいや、と小さく首を横に振り、フラミーニアの柔らかな頬に手を添えた。

「笑った顔が一緒だったから」
「……?」
「髪や瞳の色が違っても、笑顔は変わってなかったし、あと犬の俺と鷹の俺への反応が一緒で……すぐに気づいたよ」
「そ、……か……」

 何だか照れ臭くて視線を泳がせた。

 セノフォンテは改めてフラミーニアの両手を取る。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

義妹がやらかして申し訳ありません!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。 何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。 何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て――― 義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル! 果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?

婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました

天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」  婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。  婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。  私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。  もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする

白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、 12歳の時からの日常だった。 恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。 それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。 ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。 『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、 魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___ (※転生ものではありません) ※完結しました

契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件

水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。 「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。

王太子様お願いです。今はただの毒草オタク、過去の私は忘れて下さい

シンさん
恋愛
ミリオン侯爵の娘エリザベスには秘密がある。それは本当の侯爵令嬢ではないという事。 お花や薬草を売って生活していた、貧困階級の私を子供のいない侯爵が養子に迎えてくれた。 ずっと毒草と共に目立たず生きていくはずが、王太子の婚約者候補に…。 雑草メンタルの毒草オタク侯爵令嬢と 王太子の恋愛ストーリー ☆ストーリーに必要な部分で、残酷に感じる方もいるかと思います。ご注意下さい。 ☆毒草名は作者が勝手につけたものです。 表紙 Bee様に描いていただきました

わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。 離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。 王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。 アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。 断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。 毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。 ※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。 ※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。

元お助けキャラ、死んだと思ったら何故か孫娘で悪役令嬢に憑依しました!?

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界にお助けキャラとして転生したリリアン。 無事ヒロインを王太子とくっつけ、自身も幼馴染と結婚。子供や孫にも恵まれて幸せな生涯を閉じた……はずなのに。 目覚めると、何故か孫娘マリアンヌの中にいた。 マリアンヌは続編ゲームの悪役令嬢で第二王子の婚約者。 婚約者と仲の悪かったマリアンヌは、学園の階段から落ちたという。 その婚約者は中身がリリアンに変わった事に大喜びで……?!

処理中です...