稀有な魔法ですが、要らないので手放します

鶴れり

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【29】新しい変化(3)

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「こんにちは、フラミーニアさん」
「よっ」
「あれ? アルトゥルさんとセノ。来るのはもう少し先だと思っていました」

 翌日、訪問してきたのは二人は軽装姿だった。
 迎えに来ると聞いていた日程よりも一週間早い。突然の訪問に驚きつつ、家の中に招き入れる。

「メリッサの体調が悪いと伺ってお見舞いに来たんですよ」

 果物が山盛りに積まれた籠を受け取り、礼を言う。
 そして早速メリッサの部屋へと移動した。

「メリッサの具合はどう?」
「昨日から吐き気止め効果のある薬草茶を飲み始めたので、少し症状は緩和しましたが、まだ本調子ではないみたいです」
「症状は吐き気だけですか?」
「あとは強い眠気があるのと、倦怠感と……あとは食欲不振くらいでしょうか」
「…………そうですか」

 フラミーニアの返答にアルトゥルの紅い右眼が鮮やかに煌った。

 扉をノックし、メリッサの部屋に入る。

「セノとアル?」
「メリッサ大丈夫か?」
「メリッサ……」

 部屋に入るなり、寝台で上半身を起こしているメリッサの両手を取る。アルトゥルは満面の笑顔になった。

「メリッサ。とても、とても嬉しいです。こんな幸せなことがあるのでしょうか」
「もう……っ。なにもかも、全てアルのせいだわ。馬鹿……」

 目を細め見つめ合う二人を見ながら、セノフォンテと二人、部屋隅で呆然と立ち尽くす。

「メリッサが病気なのに嬉しいの? アルトゥルさんって、そういう趣味なのかな?」
「いや。アルは少し変な所はあるけど、そんな趣味は持ち合わせていないはずだ」

 コソコソとセノと耳打ちをする。

「森の中にメリッサを置いて帰るわけにはいきません。私と王城へ来てくれますね?」
「でも、薬草の管理が……」
「フラミーニアさんに任せて、体調が安定したらまた戻ってこれば良いです。今は大事な時期なのですから、御身が最優先です。生まれるまでには私が最適な環境を整えておきますから」
「……なんか、全てアルの思い通りじゃない。何か悔しいわ」
「貴女を想う愛ゆえですよ」

 メリッサの手の甲に口付ける。二人を包む空気が甘く、幸せに満ちていた。
 置いてけぼりを喰らう二人は不思議そうに顔を見合わせた。

「ちょっとなに二人で完結してるんだ?」
「メリッサ、居なくなるの……?」
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