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五章 素直に言えなくて(10)
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「は……!? シャーリーが、いない?」
「もう会場には誰も残ってないよ。一人で帰ったのでは?」
「そんなわけない! おれはずっと前で待っていた!」
「はぁ……そんなの僕は知らないよ」
支配人として出てきたサイラスをとっ捕まえるが、参加者みなシャーリーがどこにいるかわからないと言う。
「お前……っ、シャーリーに何かしたのか?!」
「余計な言いがかりはやめてくれないか。一体そんな証拠もないのに……またファーカー家お得意の訴訟裁判でも起こすかい? 証拠はないのだから、勝ち目はないよ」
手を振り払われる。
サイラスの言うとおり、確かになにも痕跡がなかった。ただ、ロッドの勘がコイツだと言っている。
「脳筋なファーカーは嫌いだよ。炎を撒き散らす品も知性もない魔法で威張り散らして……本当に嫌いだ」
サイラスはロッドを冷たく睨むと、姿を消した。
「シャーリー……!」
その後、ロッドは寝る間も惜しんでシャーリーを探した。けれど何日経ってもエヴァンズ公爵家にもティレット治癒院にも姿を現さなかった。
仕事に対して責任感の強い彼女が、理由もなく失踪するわけない。確実に誘拐されたのだ。
あの論文発表会では、いろんな国の医師が参加をしていた。もしかして、シャーリーは国外にいる可能性がある。
ロッドは星銀騎士団の権力をすべて使ってシャーリーの捜索にあたった。
最も怪しいサイラスには、ロッド自ら監視に乗り出す。毎日早朝から夜遅くまで見張り、サイラスがハウズ国へ頻繁に手紙を出していることがわかった。宛先は医学研究所だった。
長年の騎士の勘だろうか。シャーリーが間違いなくこの研究所にいると、そんな気がしてならなかった。
腹心の部下であるフィルを呼び出し、すぐさまハウズ国へ向かわせた。
シャーリーがいるのがハウズ国なら、安易に武器を持って突撃することができない。ロッドの身勝手な行動で戦争を引き起こし、民衆を巻き込んで殺し合いをするわけにはいかないのだ。
慎重に捜査を進めつつ、シャーリー救出に向けて水面下で準備を整える。
すでにハウズ国がムーアクロフト王国の住民を拉致し、人体実験として使われていた証拠はすでに押さえてある。王族にも掛け合い、いつでも出陣できるように手筈を整えた。あとは時期を見計らって突撃するのみだ。
するとフィルから連絡が入った。
『近々、ハウズ国の医学研究所で大々的な研究の成果発表が行われるそうです。各国の新聞社が招かれており、紛れて会場の中に入ることは容易にできそうです。ただ、シャーリー様の姿は未だ確認できていません』
くしゃりとフィルからの手紙を握りしめる。
シャーリーがいなくなってひと月が経った。
彼女は無事なのだろうか。酷い目に遭わされていないだろうか。
以前ハウズ国で行われていた人体実験は、人の尊厳を一切無視した残酷なものだった。複数人の人間の血管をつなぎ合わせていたり、体の一部をミイラ化していたり……それはもう見るに耐えない状況だったのだ。
一刻も早くシャーリーに会いたい。抱きしめたい。
自分の心臓をぶんなぐってやりたいほど、情けない自分が嫌になる。
「ホレスのおっさん……守るって誓ったのに、守れなくてすみません……」
ロッドは空に向かって、何度も何度も謝った。
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