嘘つき山猫は赤面症

nyakachi

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手負いのあの子は懐きにくい

虎穴

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律の部屋は家具が少なかった。

ローテーブルにソファー。
TVにTV台。
濃い青のラグが真ん中でキッチンカウンターにスツールが2脚。

およそ「女の子」の部屋に思えないかった。

男と同棲?
頭に過る。

「テキトーに座っててください」
言ったっきり、パタパタと急須やら湯呑みやら用意をしだす。
スーツの上着を脱ぐと、手を差し出され、
「ハンガーにかけますから」
お茶の入った急須と空の湯呑みとマグカップが置かれた。

立膝で急須からお茶を注ぐ姿が、なんだかおままごとをしている女の子のよう。
ここ最近、会社関係以外では飲むことのない急須で入れられたお茶が腹に沁みた。

「ちょっとスミマセン」

急須が空になったのか、キッチンへ下がると、別の方から水音がする。
まるでシャワーのような。

んんっ?

いや、期待してないわけないが、まだ早くないかっ?

いや、気のせいなのか?

何だこの状況っ?

程なく、律は姿を表したが、着衣に変化はな…………生足っ?

フツーに白いシャツと黒い膝までのタイトなスカート。

膝が隠れるくらいの長さのそれから伸びた足は、なんだかしっとりと柔らかそうで、こちらの邪な考えを蹴飛ばしてくれそうな…………

握りしめた湯呑みの中身を気まずさと共に飲み干した。


ああ、あの爪先が気になる。
床が冷たいのか、きゅっ、と丸まって足音を立てないように歩き方。

自分が目で追ってたのに気付いて狼狽える姿。

つい手を出してしまい、変な声をださせてしまったが男慣れしてないのも可愛かった。

そう、可愛かったのだ。

わたわた、赤面しつつも追い出そうとするのに、つい大人ぶって余裕のある姿を演じてみたが、あれは完全にやられた。

手を出さなければもうちょっと見れたかもしれないが、がまんできなかったのだ。

部屋に入らなければ見れない姿。

虎穴の中にいたのは大きな牙をむく虎子ではなく。
子猫よりも警戒心の強い山猫だったようだ。

上着を手渡されたさいにどこかひっかけたのか、薄くついた引っかき傷に、口角が上がっていったのだった。
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