嘘つき山猫は赤面症

nyakachi

文字の大きさ
22 / 37
それからそれから。

食べられたい 【律】

しおりを挟む
人付き合いは苦手だ。

美容院で髪を触られるのも苦手だ。

男性でも女性でも触れ合うのも苦手……だった。

初めて、それこそ人間とするとはものごごろついてから初めてのキス。
あれから何度となく、功刀先輩とする触れ合うキスは苦手じゃない。

功刀先輩が触れてくるのは苦手じゃない。

でも人付き合いは……わからない。

誘われても条件反射で断ってるレベルなのだ。

因みに誘うのは相変わらず向井先輩だけ。
他の人は私が断るのがわかっているため、会社の飲み会など私的なものに誘うことはない。

ただ、最近
「頻度が増えてる気がする」

声にでていたのか、背後から拘束するように抱きしめてける腕に力が入る。

「ナニが」
「向井先輩が誘ってくるのが最近多い気がすします」

強張った声に、体を捩って振り返る。
「律は嫌なの?」
「んー、誘われると、
『ああっ、どうしよう?』
って身構えちゃうんですよねー。
それに、私、小さい頃から友達と遊んだことなくてその場の雰囲気が読めない、っていうか、場を壊さないか心配で……
それなら一人でいいかな、って思って」

ため息が漏れる。
ここまで話すつもりはなかったのに。
「一人のほうが気が楽なんです」

功刀先輩の顔が見れない。





沈黙が重い。

目線を向けると功刀先輩は私を通して遠くを見るような目をしていた。

「あの……」
「俺がいるの、邪魔?」
なんの感情も見えない声音が怖い。

「あ……その……」
「ふーん」

いくら空気の読めない私でも今の功刀先輩の不穏なオーラは流石にわかる。
逃げ腰になるのを、ぎゅっと掴み寄せ、向かい合わせになるように太ももの上へ座らせられる。

顔、近っ!

「嫌なの?」
「うひっ」

耳っ!
耳噛まれたっ!

背筋がぞわっとする。
体が捕まえられてるので、首を竦めてやり過ごそうとするが、背後から圧力かけて抱きつ様に拘束する手から逃れられず、
「なぁ、ダメなのか」
いや、何が?
そもそもどれが?

耳からの声と感触からくる情報量にパンク寸前だ!

両耳を手で握るように隠したが、今度はその手の、指の間に舌を這わせてくる。
ぞわぞわするが、これで手を離せば耳が守られない。
体をよじろうとすると、肘などが功刀先輩の体を打ちそうで、縮こまる他ない。

「…やだぁ…」
どうしょうもない状況に泣き言が出る。


なんなの、この状況!?

無表情で指をはむはむする功刀先輩に、なんだかもう諦めてもいいかなと思う、

ああ。

もう。

このまま食べられたい。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫に愛想が尽きたので離婚します

しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。 マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。 このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。 夫を捨ててスッキリしたお話です。

「やはり鍛えることは、大切だな」

イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」  その日、一つのお見合いがあった。  ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。  クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。  そして互いに挨拶を交わすその場にて。  ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。  けれども……――。 「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...