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第四章 友人との、取るに足らない会話
次郎丸の話(2)
しおりを挟む……いかん。思考が多々良さんと同じ完璧人間のそれになっている。
僕はコンプレックスを理解できる男だったはずなのに。
なんにせよ、こんな人より頭二つ分とびぬけている三郎を、見過ごすことはないだろう。
恐れ多くも。
多々良さんのことを、三郎は友達と言っているのだ。
そして多々良さんは友達をわざと無視するような人間ではないはずだ。あ、断定できないぞ。
「それで、オレは多々良が多重人格だという説を押す!」
「ミステリ小説の読みすぎじゃ」
「オレが文庫本を持っただけで寝てしまう人種だという事を忘れたか」
「どうでもいい情報は忘れるようにできてる」
こんなことを言ったら本当に僕の脳みそがシュークリームで構成されてるように思われてしまう。まぁいいや。
「というより、本人に聞いた方が早いだろ」
「もしわざと無視されてたとしたら立ち直れない」
「それは―――僕も立ち直れない」
心が粉々に砕けてしまうだろう。
多々良さんはこの高校における唯一神の様なマドンナである。
完璧なまでの全てを持つ彼女から見放され、捨てられ、あまつさえ暴言を吐かれるようなことがあれば、男どもは二度と学校に来ることができなくなるほどに病んでしまうはずである。
今時、親衛隊まであるのだ。
「いやお前はいつも暴言吐かれてるだろ」
「あれは、多々良さんの僕に対する通常言動だから問題ないよ。あれ以上のことを言われたら凹んでしまうけど」
「お前の感覚がわかんねえ」
呆れたように言った次郎丸は、もう一度教室を見渡して、多々良さんがいないことを再度確認して
「もし多重人格だったら面白いよな。隠さなくてもいいのに。」
彼の中で、どうやら多々良さん多重人格者説は揺るがない事実になりそうな雰囲気である。
「……コンプレックスなんじゃないか? もしお前の話が正しかったらの場合」
「多重人格が、か?」
一つ頷いた。
十中八九、三郎の考えは外れていることだろうけど、僕は思うのだ。友達にさえ隠してしまう自分の事柄、というのはコンプレックス以外にほかないのではないか、と。
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