美少女の顔に触りたい、月曜日

睡眠丸

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第六章 多々良さん探し 開始

小椿さんと、うさぎのお世話(2)

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「本当に忘れちゃってるんだね。ううん。忘れてるんじゃなくて、覚えてるけど、それはマリとの思い出じゃな
いってことかな。お兄ちゃんの中では『多々良』との思い出になってるんだ。」

 「君たち三人を、同じように見てたつけ、かな」

 「何、黄昏て言ってるの? 何にも恰好よくないよ?」

  子供の無邪気な声で諭されると、存外に心に響くことを学んだ。

 「まぁ、思い出されても、顔を認識されても、私にとっては、なあんにもいい事ないから、別に良いんだけどね」

 「それは、『多々良さん』の振りができない、という意味で、ですか」

 「当たり前でしょ? まぁ、私が本当の多々良だから、振りなんて意味ないんだけど」

 「マリちゃん、は僕のことが好きなんですか? 好きだから、多々良さんの振りをするんですか?」

 「だから私がお兄ちゃんの好きな多々良なんだって」

  淀みなく、即答でマリちゃんは言った。

 「マリちゃん、知ってますか? 嘘をついたらバチが当たるんですよ?」

 「小学生だからってバカにしてると、痛い目見るんだから! 本当に私が多々良なのに。全くもう」

 「やーい、バチあたりマリちゃん」

  バールのような物も真っ青なほどの棒読みで言うと、マリちゃんは頬を目いっぱい膨らまして抗議の意を表し
た。


  しばらくして、小さな女の子は、立ち上がると、ウサギ小屋の錠前を唐突に開け、中に入ってしまった。餌が
入っていたであろう器を持つと、そのまま、僕の下へと戻ってきた。

 「跪いて、それを舐めろとか言いませんよね?」

 「言って欲しい?」

  全身全霊をこめてお断りしておいた。
  近くの水道に足を運んだマリちゃん。
 
 どうやら餌入れを洗おうとしているらしい。蛇口をひねり、びちゃびちゃと、水音が流れる。
 
「私、生き物がかりだから、やれるうちに、やっとこうと思って」

  聞いてはいなかったけれど、説明をくれた。


 「マリちゃんは、ウサギが好きなんですね」
 「うん」

 今までで聞いた返事の中で、一番かわいい声音だった。
 マリちゃんは、良くも悪くも、子供だ。
 
 僕と五つしか違わない、けれど。今の年齢、その年の差はマリアナ海溝より深いものだ。
 こんな彼女が、あんな寂れたデパートの屋上に、一人で行けるだろうか。
 

 自殺をしよう、などと思うだろうか。
 
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