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第六章 多々良さん探し 開始
男子高校生たち?の帰り道(2)
しおりを挟む「確認したいんだけど。眼を刺されたウサギを、見た時、隣にツバキが居たんだよね?」
「うん。僕がウサギを見た後で、話しかけられたんだ」
「もう一個確認。君は、私たちが話しかけるまで、声を出すまで、私たちだって解らないんだよね」
「うん。顔が整っただけの人間は割と多くいるから、声を聞くまでは、それらと区別がつかないし、あの時は、校舎裏に目を向けてたから―――ああ、そうか。他に気を配れなかったし、もしかしたら、他の人間が近くにいることに気付かなかったかもしれない」
小菊の言いたいことが分かった気がした。
「つまり、僕は、傍にいたツバキさんを無視して、校舎裏を変質者のように見ていた。その間、ツバキさんは、貰ったウサギにシャーペンを刺して、気付かれないようにウサギを校舎裏に投げ入れた―――っと、小菊は言いたいんだよね」
小さく、彼女は頷いた。
「話に、ついていけない」
「クマさん、今は黙ってて」
小菊は三郎の呼び方を『クマさん』に改め、猛獣使いのように飼いならしていた。
ツバキさんは計画性を持って、そんなことをしたのだろうか。―――いや、違う。僕があの時間、あの通りに出てくるのは予想外の出来事のはずだ。ウサギを探しに外に出てくることなんて、ツバキさんでもわかるはずはない。
「もしかしたら最初は、本当にマリちゃんにウサギのぬいぐるみを上げようとしてたのかもしれな。ただの善意で。でも、遠くから僕がくるのが見えて、突発的にシャーペンで目を刺し、校舎裏に投げ入れた ―――僕に対する、嫌がらせのために……?」
「それは違う! ……と思う……良くわかんないけど」
僕に話しかけた時、ツバキさんは、片手にシャーペンを持っていた―――。
思い返せば、それが可笑しい。
まるで自分が犯人だと教えているようなものじゃないか。
シャーペンを刺して、ウサギを校舎裏に戻したなら、あの時あったツバキさんが、たまたまシャーペンを持っているはずない。
わざわざもう一本を出して、握っていたのだ。
ツバキさんの利き手は、左だ。
右手に持っているシャーペンは、何の意味も果たさない。
しかし、そうとなるともう訳がわからない。
結局彼女は、何をしたかったのか。僕の、クズ人間が引き起こす反応を見たかっただけなのだろうか。
背後から照る光が、オレンジになり、河川敷の川面がキラキラと光り、目に痛いほどの明るさになってきた。
三人分の影は伸びて、まるで身長が急速に成長したみたいだった。
「お姉ちゃんに、会いに行かないの?」
ツバキと、呼ぶことをしないで、小菊さんはそう言った。
『お姉ちゃん』は、『多々良さん』
目的の人間を見つけたのだから、小菊さんがそう思うことは当然だろう。今までだって、彼女を見つけるために、行動してきたわけで、それをずっとセーラー服の少女は見てきていたのだから。
でも―――まだ、駄目なんだ。
彼女を見つけたら、今度は彼女が自殺しなくなった理由を探すべきなのだ。
「ボクたちは、お姉ちゃんが死なない理由にはなれなかった……だから、頼むね」
頼まれても、困るのだ。
もしかしたら僕は、あの時のように。
小椿さんと一緒に死ぬ選択肢を選ぶかもしれないのだから。
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