幽霊さん…私は変態じゃないのでやめてください。

mii

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不安と恐怖

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セミの鳴く音が響き渡る。

私は、食べ終えたアイスの棒をいつまでも口に咥えて、ベッドの上で溶けていた。


( 暑い…。暑すぎる…。)


エアコンはあるものの、電気代の節約のため。限界までは、扇風機さんに頑張ってもらっていた。

汗ばんだ肌を生ぬるい風が撫でていく。

まだ午前中だと言うのに、照りつける太陽が室内の温度を上げ続けていた。


( 今、雪男とエッチしたら…冷たくて気持ち良いだろうな…。)


暑さで脳まで溶けそうになっている私は、元々想像力が豊かで、小学生の頃から両親や先生などに褒められていた過去がある。

妄想や記憶が頭の中に映像で流れるので、あの日から講義室に行く度に、思い出してしまって…。

自分で自分の首を絞めてしまっていた。


今日は、大翔達と来週行くお泊まりの為、咲希ちゃんとお買い物デートの日!

お昼に待ち合わせをしているので、もうそろそろシャワーを浴びなくては…。


そんな夏休みの初日である。


ものすごく楽しみで、お化粧やら服やらに気合いを入れすぎてしまった。


( やばい、ギリギリだ!急がないと…。)


待ち合わせ場所は、駅前の大きな時計台。

汗をかかないようにできる限り急ぐが、もう既に咲希ちゃんの姿がそこにあった。


「咲希ちゃーん!お待たせっ!」

「先輩、時間ぴったりですね!わー、すごく可愛いです。」


先に待ってたであろう咲希ちゃんは花柄のワンピースと2つ結びにした三つ編みを風にヒラヒラさせて、ここだけ空気が違って見えた気がした。


(いやいやいやいや。あなたの方がずっと可愛いですよ咲希ちゃん。本当に可愛い…好きです。)


今日は、カフェで軽くお昼ご飯を一緒に食べてから、お泊まりグッズや新しい水着などを買う予定だ。

日差しが照り付ける真夏の屋外から、ひんやりした店内に入ると冷房が心地よく、汗でベタついた肌が生き返る様だった。

カウンターで注文を終えて席に座ってからは今日、買う物の情報交換やトレンドの作戦会議をして楽しく過ごした。

話していると話題が尽きなくて、食べるのを忘れてついつい長引いてしまう。


「あっ、咲希ちゃん!もうこんな時間、早くしないと夜になっちゃうよ!」

「もし、そうなったら…夜ご飯も一緒に食べられちゃいますね!」


皆さん聞いて下さい。私の目の前に天使がいました。世紀の大発見です。


そんな後輩の言動にキュンキュンしながら、順調に買い物を終えていく私達。

アイツは時々、セクハラみたいにお尻を撫でたりして来てたけど、楽しい時間を邪魔されたくないので徹底的に無視する事を決めていた。

後は水着を買うだけだ。気づけば、もう日は傾き真っ赤な夕日がビルの隙間から地平線に落ちていこうとしている。


「せんぱーい。着てみたんですけど。どうでしょうか?」


何着か選んでいると、先に選び終えていた咲希ちゃんが試着室の中から少し恥ずかしそうに聞いてきた。

私が、試着室の中にひょっこりと顔を出すと…。

白くふんわりした袖付きのビキニ姿がすごく可愛くて本当に似合っていた。


「………めちゃくちゃ可愛い。ダメだ。可愛すぎる。私の咲希ちゃんが色んな男の目に晒されちゃう!!」

「……それって…。合格って事で合ってます?(笑)」


困惑しながら笑う姿に私まで可笑しくなって笑ってしまった。


「今度は先輩の番ですよ!着替えちゃうんで、選んでおいて下さいねー!」


ひとしきり笑い合った後、試着室から追い出されてしまった。私も早く選んじゃおっと。


交代して着てみるものの、その度にダメ出しを貰ってしまう。


「ダメです、セクシーすぎます。そんなの着たら大翔さんが倒れかねないです。そっちは逆に隠しすぎですね…。あーそれもダメです、先輩には地味すぎます。」


私に似合う水着なんてこの世にないんじゃないかと思い始めた頃、咲希ちゃんが選んで持ってきてくれた。


「これなんて、どうでしょうか?先輩、普段は可愛いのに…水着だけ選ぶセンス壊滅的ですね。」


さっきまでの天使は、どこに消えてしまったんだろう。そ、それに大翔は関係ないし…。

大翔の話が出た途端、少し顔が熱くなったのを感じて鏡で赤くなってないか確認してしまった。


選んでくれた水着を着てみると、ものすごくしっくりきた。それに可愛いのに出すべき所は出ている。咲希ちゃん、天才なのでは…。


「すごく似合ってますよ!先輩の良さが、ちゃんと出てます!迷ったらまた私に聞いて下さいね。先輩に似合う物を完璧に選ぶ自信があります!」


咲希ちゃんが私を慕ってくれている事が伝わってきて嬉しいのと、また天使に戻ってくれた事に安心した。


「ありがとう(照)じゃあ着替えちゃうから、ちょっと待っててね!」


今日は、ここ最近の中でも本当に良い1日だった。アイツのせいで色々と酷い目に合ったし、その度に自分の心と体が真逆の反応をして、葛藤する日々に疲れていた。

私は、久々の平穏に幸せを噛み締めながら、着替えを始めた。…と、その時。


(……あれ?……下着が…ない。)


まさか…そんな事ある?

さっきまで水着の下に着ていたはずの下着が消えていた。あちこち探してみるが、やはり見つからない。あるのは短いタイトめなスカートとノースリーブの可愛いブラウスのみだった。


アイツの仕業だろうか…。

まず最初に思い浮かんだ。一日中、無視をしてたから怒らせてしまったかもしれない。

私の困った姿を見て楽しんでるに違いないと、取り憑かれてからの経験で、それがわかってしまった。迷惑してるのは私なのにご機嫌を伺わなければいけない状況が理不尽すぎる。


「先輩、大丈夫ですか?」


なかなか試着室から出てこない私を心配して、咲希ちゃんが声を掛けてくれた。


「だ、大丈夫だよ!ごめんごめん。ちょっとスマホ見ちゃってた。」

「何かあったら言って下さいね!先輩すぐ一人で悩んじゃうんですから!」


これ以上、咲希ちゃんを待たせる訳にはいかない。ノーパンにノーブラで過ごすしかないーーそう決意をした。


これ以上、怒らせるともっと酷い目に合うかもしれないがアイツを楽しませたくはない。誰も見ていなくても、困ってなんかいません…と出来る限り平気な顔を作り続ける事にした。


パパっと着替えを済ませ、何事も無かったかのように外へ出る。肌を守っている布が1枚少ないだけで、こんなに安心感がないなんて…改めて、下着の大切さを思い知らされた。


「もう夕方ですねぇ。この後、どうしますか?」

「うーん。…どうしようか。買いたい物、全部買えた?」

「はい!私は大丈夫です!先輩はどうですか?」

「私も大丈夫かなぁ。とりあえず駅に向かおうか!」


そんな会話をしながら意識がソコに集中してしまう。胸が布に擦れる度に、ポチッと立ってしまったのが目立ってないか気になるし、スカートの中に風が通る度に普段は隠されてる所に空気が当たって反応してしまう。


「来週が楽しみですね!大翔さんのお友達って先輩は会ったことありますか?」

「会ったことはないかも…翔君だったけ名前。」

「小学校からの腐れ縁って言ってましたね。」


気にしないように、何とか会話に集中しようとしていると…アイツの手が、不意に胸の先端を弾く。


   ビクッ

「…ンッ…あー、幼なじみなのかな…。」


危なっ!本当にやめて欲しい。このブラウスは透けないけど…柔らかい生地なので、その部分が反応したら絶対に分かってしまう。


「なんか、夏だよね。暑い!」


必死で服をパタパタさせて誤魔化したけど、不自然じゃなかっただろうか…。


「…そうですねぇ。……今日はもう、帰りましょうか。体調を崩しちゃうと良くないし。」

「そ…そうだねぇ。明日、咲希ちゃんもバイトだったよね?明日、また話そうか。」


定期的に先端を弾かれるせいで、顔が赤くなってしまっていたのだろうか…。体調が悪いと思われたかもしれないが、早く帰れそうで少し安心してしまった。咲希ちゃんごめん。


「では、先輩!私はこっちのホームですので、また明日!今日は早めに寝て下さいね!」

「うん!咲希ちゃんもね!」


なんて可愛いんだろう。自分の体の不甲斐なさを咲希ちゃんが癒してくれてるようだった。

本当にアイツにはイライラしてくる。本当だったらこの後、夜ご飯も一緒に食べる予定だったのに…。夢のような一時を終えて1人寂しく帰宅する羽目になってしまった。しかもウズウズする体のせいで、これを解消しないと何も出来なさそうだ。


(どうしよう。一人でしてる所、見せたくはなかったけど…。アイツに触らせるよりは、遥かにマシかもしれない。)


電車に乗りながら、また玩具の事を考える時が来るなんて…。


帰宅ラッシュに巻き込まれてしまったが、今日だけはそれで良かったと思う。だって見なくても固くなっている感覚がわかってしまう程だ。外はもう暗くなり始めているし、早く解散して良かった…。


私は頑張って平気な顔を装っているのに。アイツは、私の体の興奮が手に取るように分かるみたいだ。それも本当に気に食わない。

自分の抵抗は全て無駄なんだろうか…とムラムラする度に誘惑と戦う事に心が折れ始めていた。


(…海が終わったら…。お祓いについて調べよう)


そう考えていた時。


背筋がゾクリと這い上がるような感覚と共に。


アイツの両手が。


私の首に当てられていた…。


ま…まさか。今までエロい事しかされてなかったから…そんな事、思ってもみなかった。

色んな事が出来るんだもん。

何故、その可能性を考えてなかったのか。

アイツの存在に慣れすぎてしまっていた。


冷や汗が額を伝う。


体が震えているのがわかる。


アイツの指が…ゆっくりと巻き付く感覚。


絞められてる訳じゃないのに、息が苦しく…緊張で口の中も乾いていた。


プシュー

電車の扉が開き、人が流れて行く。

いつの間にか、首の感覚も消えていた。


( 降りなくちゃ…。)


足に力が入らない。恐怖で腰が抜けそうになっていた。

私は…何のために憑かれているのか。

アイツが本気になれば…。生きている人間なんて簡単に消せてしまうのかもしれない。

ただのエロい幽霊なんだと思い始めていたのに。もしかしたら、とんでもない悪霊なのかもしれない。


どこをどうやって歩いて来たのか、分からないが。気づけば自宅アパートの玄関の前に立っていた。


私は…。


この先どうしたらいいのか。


玄関を開けると…。室内のどこかから、微かに物音がする。


( 今度は何!?もう止めて。お願い、本当に無理。)


靴も脱がずに固まっていると。音はタンスの中で鳴っているようだった。


信じられない…。絶対に嫌だ。

さっきは触られるよりはマシかもなんて思ってたけど。あんな事があった後で…。アレを使えって?もうムラムラなんて恐怖で無くなってしまっていた。 


でも…。従わないと。

もっと怖い目に合うかもしれない。

私の目からは、自然に涙が溢れていた。


「何がしたいの…。なんで、私なの…。」


ぐしゃぐしゃの顔で音の原因を手に取る。

充電した訳じゃないのに元気に振動するソレは、電源を押しても消せず、早く使ってくれと鳴いていた。


こんな最悪な気分の時に、強制的にオナニーをしなきゃいけないなんて…。本当に気持ち悪い。


その時。


ピーンポーン


「おーい。舞香?いる?なんか具合が悪そうって咲希から連絡があって」


ガチャガチャ


「おい。開いてんじゃん。不用心すぎる。」


や   大翔…?


泣きながら玩具を持つ私と

急いで買ってきたであろうコンビニ袋を手に持つ大翔。


お互いに見つめ合ったまま


流れていた時が止まったようだった。



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