兄の彼女/弟の彼女

逢波弦

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弟の彼女

2.弟の彼女①

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休日の昼間。穏やかな日差しが、レースカーテン越しに部屋に入り込んでくる。

「んん…っ、ふう……んっ」
見慣れた色のシーツを必死に握りしめながら、俺は額から垂れる汗も気にせず下半身に挿入されている物体を受け入れる。
俺に覆いかぶさり腰を揺する、眼鏡を掛けた目つきの悪い男の様子を伺うと、彼も同様に顔に飛沫を散らしていた。
彼のガタイのいい、色の濃い裸が俺の上に重なる。
自分も同じ丸裸だったが、「靴下履いたままにして」と行為の前に彼に言われたので、俺の脚には滑稽にも二枚の布が纏われていた。

ーー俺が兄ちゃんを誘って、体の関係を持った日から数か月経った。
あれ以来兄は定期的に俺を誘い、自分の部屋で俺を抱いていた。
予想以上に俺を求めてくれている事に驚きつつ、そんな兄の要求を俺は一切断ることはなかった。むしろ好きな男を自分の手中に収めているような、そんな仄かな高揚感さえあった。

そんな事を考えていると、兄は俺の膝裏を掴んで腰の動きを速くした。
布の纏われた足が宙ぶらりんになり、汗を頬に伝わせ余裕の無さそうな兄の顔が脚の間に見える。
視界に捉えた布の意味が気になり、ねえ、と声をかけると、眼鏡の奥の一重がこちらに向く。
「何で靴下?」と問うと、兄は少し考え込んでから「なんかエロいだろ」と声を返した。

真っ裸に靴下だけ履いてる様子を想像して、怪訝にしていると、孝行にはまだ分かんないんだよと、ニヤついた声を溢される。そんな兄の言葉に少しむっとする。
そんな俺の様子を見計らってなのか、兄は俺の良いところを的確に責め立ててきた。

内部で動く肉塊と同時に、下半身からこみ上げてくる熱を感じとる。
じわじわと迫り上げてきた快感に耐えきれず腰を痙攣させて、口から嬌声を漏らすと、
「相変わらず後ろでイケるのすごいな、お前」
そう揶揄う声が頭上から降ってくる。

身体を甘い痺れで震わせながら、黒い前髪を汗で濡らした男の顔を引き寄せる。
俺の意図をくみ取った兄は、俺の唇に自分の唇を重ねた。
そのまま柔らかな内部を愉しむようにゆっくりと腰を揺らめかす。
兄が動く度に微かに感じる余韻。
鼻から息を漏らしていると、彼は口を離してほくそ笑み、「またイっていいよ」と俺の耳に吹き込んできた。

「…はああっ、にいちゃ……ああっ……!」
肉厚な兄の身体に手をまわしながら、水揚げされた魚のように再度身体を痙攣させる。
窓際から微かに漏れる日差しを横顔に浴びながら、兄はそんな俺の様子を心底愉快そうに眺めていた。
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