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弟の彼女
2.弟の彼女③
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朝の大講義室。授業の準備をしようと、鞄から教科書とレポートを広げていると、艶やかなロングヘアーと美しい化粧で彩られた彼女が背後から声を掛けた。
「おはよ、正樹」
「おはよう」
「さすが、真面目だね。一番乗りじゃん」
そう言いながら俺の横に座り、レポートを軽く覗き込んでくる。彼女の顔が近づき、いつも彼女がつけている香水がふわりと香った。
「つっても、まだ今日の課題終わってないからなんだけど」
「あはは、正樹そういうところあるよね。」
真面目だけど生真面目じゃないっていうか、そうサラリと俺の性格の核心を突く彼女に、やっぱり頭のいい女だなと感心する。
その彼女の美しい口が、そういえばと声を零す。
「正樹の弟君さ、」
彼女から思いがけず弟の話題が出てきて、どきりとする。
「孝行が何?」
「いやこの間、正樹のお家にお邪魔した時、部屋にいたんじゃないかなって」
少し上がった心拍数を冷静に観察しながら、何でもないように話を聞く。
「帰る時、弟君の部屋から物音したから」
「あー、まあ多分いたと思うけど」
彼女を駅まで見送った後、家に戻ると食卓に座る弟の顔はいつもより暗かった。俺が話題を振っても、口数少なく返答する様子に、もしかして俺と彼女の行為を隣で聞いてたんだろうなとは察していた。
「別に大丈夫でしょ」
「えー、やっぱ私も恥ずかしいよ」
彼女も、流石に行為中の様子を彼氏の兄弟に知られるのは恥ずかしいのか、頬が少し高揚している。それに、と彼女は言葉を続けた。
「思春期に、兄弟にそういう事やられると嫌がるんじゃない?」
「嫌がる」
彼女の言った言葉を噛みしめるように繰り返す。
(嫌がるね。そうか、あいつ嫌がってたんだ。)
先日の暗い顔をした弟の様子はわかる。
それよりも数か月前。
俺の部屋に入り込んで、「この部屋でしてたの?」と問い詰めてきた弟の姿を思い返す。そして、弟の頬を張り倒した後に、何故かあいつが俺にキスをして、「彼女にしてること、俺にやってみせて」と縋ってきた。
弟の苛立ったような表情も、その時は彼女がいて、女が抱ける俺に対しての嫉妬だと思っていた。けれど、あいつの恋慕の乗った瞳を見て、違うなと思った。
あの感情は俺に対するーーー好きな男が他の奴を抱くことに対する嫉妬だったのだ。
何だか得意な気分になって、口を開く。
「あいつ、俺のこと結構好きなんだよ」
「へーそうなんだ。なんか意外かも」
「あんま可愛げは無いんだけど」
顔を真っ赤にしながら、瞳を情欲で満たして、必死に俺の手つきに反応している弟を脳裏に浮かべる。
彼女の事を裏切ってるやましさや、実弟を抱いてる背徳感が無いわけではなかったが、それよりも自身の好奇心が優先された。
弟を思いのままに動かしている感覚、そんな高揚感がじわじわと滲む。
普段あまり主張をしない弟が、あそこまでして俺に抱かれようとしていた事。
そんな弟が、俺のことが好きだというだけで、行為中にすべてを晒すように身を委ねている事。
そんな事実が何故だか、自身の欲を性急に駆り立てている。
知らずにニヤついていたのか、「なに?どうしたの?」と彼女に怪訝そうな顔をされる。
この間のセックスのこと思い出してた、と零すと、直截な言い方に彼女は目を丸くして、照れながら「馬鹿」と返された。
しばらく彼女と談笑していると、俺たちの他にも生徒がちらほら入室してきた。
授業の開始が近いと思い、手元のまだ書きかけのレポートにペンを走らせた。
「おはよ、正樹」
「おはよう」
「さすが、真面目だね。一番乗りじゃん」
そう言いながら俺の横に座り、レポートを軽く覗き込んでくる。彼女の顔が近づき、いつも彼女がつけている香水がふわりと香った。
「つっても、まだ今日の課題終わってないからなんだけど」
「あはは、正樹そういうところあるよね。」
真面目だけど生真面目じゃないっていうか、そうサラリと俺の性格の核心を突く彼女に、やっぱり頭のいい女だなと感心する。
その彼女の美しい口が、そういえばと声を零す。
「正樹の弟君さ、」
彼女から思いがけず弟の話題が出てきて、どきりとする。
「孝行が何?」
「いやこの間、正樹のお家にお邪魔した時、部屋にいたんじゃないかなって」
少し上がった心拍数を冷静に観察しながら、何でもないように話を聞く。
「帰る時、弟君の部屋から物音したから」
「あー、まあ多分いたと思うけど」
彼女を駅まで見送った後、家に戻ると食卓に座る弟の顔はいつもより暗かった。俺が話題を振っても、口数少なく返答する様子に、もしかして俺と彼女の行為を隣で聞いてたんだろうなとは察していた。
「別に大丈夫でしょ」
「えー、やっぱ私も恥ずかしいよ」
彼女も、流石に行為中の様子を彼氏の兄弟に知られるのは恥ずかしいのか、頬が少し高揚している。それに、と彼女は言葉を続けた。
「思春期に、兄弟にそういう事やられると嫌がるんじゃない?」
「嫌がる」
彼女の言った言葉を噛みしめるように繰り返す。
(嫌がるね。そうか、あいつ嫌がってたんだ。)
先日の暗い顔をした弟の様子はわかる。
それよりも数か月前。
俺の部屋に入り込んで、「この部屋でしてたの?」と問い詰めてきた弟の姿を思い返す。そして、弟の頬を張り倒した後に、何故かあいつが俺にキスをして、「彼女にしてること、俺にやってみせて」と縋ってきた。
弟の苛立ったような表情も、その時は彼女がいて、女が抱ける俺に対しての嫉妬だと思っていた。けれど、あいつの恋慕の乗った瞳を見て、違うなと思った。
あの感情は俺に対するーーー好きな男が他の奴を抱くことに対する嫉妬だったのだ。
何だか得意な気分になって、口を開く。
「あいつ、俺のこと結構好きなんだよ」
「へーそうなんだ。なんか意外かも」
「あんま可愛げは無いんだけど」
顔を真っ赤にしながら、瞳を情欲で満たして、必死に俺の手つきに反応している弟を脳裏に浮かべる。
彼女の事を裏切ってるやましさや、実弟を抱いてる背徳感が無いわけではなかったが、それよりも自身の好奇心が優先された。
弟を思いのままに動かしている感覚、そんな高揚感がじわじわと滲む。
普段あまり主張をしない弟が、あそこまでして俺に抱かれようとしていた事。
そんな弟が、俺のことが好きだというだけで、行為中にすべてを晒すように身を委ねている事。
そんな事実が何故だか、自身の欲を性急に駆り立てている。
知らずにニヤついていたのか、「なに?どうしたの?」と彼女に怪訝そうな顔をされる。
この間のセックスのこと思い出してた、と零すと、直截な言い方に彼女は目を丸くして、照れながら「馬鹿」と返された。
しばらく彼女と談笑していると、俺たちの他にも生徒がちらほら入室してきた。
授業の開始が近いと思い、手元のまだ書きかけのレポートにペンを走らせた。
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