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召喚
しおりを挟む目を覚ました衝撃は今も覚えている。
まず最初に飛び込んできたのは知らない服装に杖を持った人達。次には理解出来ない言語で話しかけられた。
わからないその言葉とその他大勢から集まる人々からの視線。
赤い絨毯に、丸い円に文字が刻まれ、どこか外国風の造形に、煌びやかなシャンデリア。
どこかもわからない、その場所に突然連れてこられて、言葉どころか声を出すことさえも、出来なかった。
────────────────
新しく召喚され選ばれた聖女は大変勤勉で慎ましやかで独特の見目麗しい女性だった。
最初こそたどたどしい言葉遣いだったが、それも愛くるしく人々に親しまれた。それ故に努力家であり、聡明。直ぐに言葉も修得したかと思うと、神聖力の才もあり、魔王復活の予兆である瘴気に侵された村や病に苦しむ民を次から次へと救っていき、いつしか女神様と敬われ、尊い存在になっていった。
そんな彼女への求婚は当然と言っていいほどに後を絶たなかった。しかし、彼女は決して誰の求婚も受け入れなかった。
どんなに地位の高い相手であろうとも。
そんな折り、魔王が復活した。
いよいよ、討伐の時が来たと立ち上がり、神からのお告げから選ばれたのは剣士の類稀なる才覚のある皇太子と騎士団所属の銃闘士の伯爵子息。
才能に恵まれ天才と謳われた高位魔術師。
そして、聖女の彼女であった。
全員が彼女に惹かれており、彼女の事を尊び、慈しみ愛していた。
4人は魔王討伐の為、民達に盛大に見送られながら旅に出た。
どんな苦難があろうとも、聖女は微笑み仲間を癒す。時に災害にまみれようとも励まし合い、傷付いても立ち上がり、力を合わせ、魔物を倒していった。
心が折れそうになった時でも決して気高く麗しい聖女は微笑みを絶やさず、時に仲間との衝突時も聖女が優しく包み込んでくれた。なんて、慈悲深い美しい聖女。
やがて、魔王城に目前と言うところで、意を決して皇太子は『これが全て終わったら結婚しよう、君を愛している』と聖女に告白をした。
聖女は頬を染めながらただただ微笑んだ。
了承ととった皇太子は聖女の薬指に指輪を嵌めた。最後の街で用意していたのだ。祝福の言葉を贈る仲間に涙を流す聖女。
これからの幸せと平和の為に進もうと魔王城に向かった。
立ち向かってくる魔物を、敵を皇太子は切り刻み、魔術師は魔法で応戦し、銃闘士は銃と拳を駆使して、仲間と協力しながら突き進んでいく。
魔王城と言う事もあり、敵は今までの何倍も手強く、じわじわと追い込まれていった。銃闘士は腕を引きちぎられ、魔術師は魔力が切れ、殴り飛ばされ、血を吐いた。皇太子も致命傷は無いが、身体に傷が耐えない。
でも、一向に結界も回復の呪文も聞こえない。
聖女は何もしなかった。
ただ、後ろの方で微笑んでいた。
いつもなら神聖力で傷を癒し、魔力も体力も回復していた。そして、いつもだったら励ましの言葉や優しい言葉を掛けてくれていた。
それが一切無い。
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