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舞台の開幕
しおりを挟むビジュー王国、貴族アカデミー卒業祝宴会。
貴族子息、子女が3年間の学園生活に終止符を打って卒業し、成人として社会に羽ばたく為に催される大変盛大で豪勢なおめでたいパーティーである。
今年は王国の第一王子も卒業と言う事も有り、隣国からはたまた王国と外交、交友関係にある諸外国からも派遣使者が招待され、参列する程の盛況であった。
「──フィーリア・ディプロマシ侯爵令嬢、貴方の愚行は身に余る思いだった。本日を持って私、ビジュー王国第一王子ヴァルル・ビジューの名の元に婚約を破棄させてもらう」
そんな祝福の席に水を差すように放たれた一声は周囲のざわつきを一瞬にして止めるには十分な程の爆弾発言だった。その渦中の者以外は一斉に身を引き、ある一定の距離を取りながら遠巻きに静観し始める。
「……殿下、何を言ってらっしゃるのか図りかねます。どうして今そのような事を仰るのでしょうか」
祝宴の場の空気を破壊する言葉にその渦中の令嬢こと、フィーリア・ディプロマシ侯爵令嬢は扇を華麗に開き口元を覆い隠しながらも努めて冷静な面持ちで問い掛けた。
しかし、隠し切れない美しく透き通った翡翠の瞳は動揺しているようで、微かに揺れていた。
傍から見たら何かを咎められている舞台に立つ悲劇のヒロインにも映るがどうやらそういう訳では無かった。
その彼女と対を為すのは、この王国の第一王子であった。その後ろには、彼の数人の友人か知人か、この現状になる事を知っていた者だろうか。
そして、その王子の最も近くの後ろには手を握られ隠されるように守るように控えている小柄で可愛らしい女性がいる。
「──君こそ彼女の前で良くそんな風に堂々としていられるな。思い当たる節が無いとでも? 白々しい」
これは断罪の場である。
ざわつきひそひそと話し出す周囲と、その様子を静観する者も含めて、招待状に記載されていたお楽しみとは完全に異なった謎の茶番劇が開幕され、面白い醜聞が始まったと好色の視線が注がれる。
それもそうだろう。何せこの国の期待の王子とその婚約者の舞台である。期待感と高揚感が広がり始めるのも必然だった。
そんな催しを見て、盛大にシャンパンを吹き出してしまった者がいるのも仕方ない事であろう。目の前に居たはずの従者はそれをまるで予測していたようで、いつの間にか消えていたので、被害には合わなかった。
いつもこの男は……つまらないと思う。
その従者は何事も無かったかのように直ぐに替えのグラスをスっと差し出してきた。それを丁重に手で制すとテーブルに綺麗に並べられたケーキをお皿に盛れるだけ持っていき、注目されている劇の場を知り目に口の中にケーキを頬張っていく。口の中が蕩けるほどの甘美な味わいに後程、シェフに感謝を伝えとこうと思う。
従者はマナー等気にせずに豪快な食事の様子を見ているが、特に咎めはしなかった。
あのような茶番が繰り広げられている最中に行儀が悪い等とどうこう言う気は無いのだろう。
もしくは、とチラりと従者とその現場を交互に見遣るが、彼は彼女をとても心配しているのだろう。まあ、理由はわからなくもない。
あれは何の余興だろうか、私はあんなものを見る為に此処に招かれたわけではないのだけれどとお皿のケーキを綺麗に平らげた後に、口元をサッと拭いてから小首を傾げて見せた。
「……何かしらあれは」
「ああ、あれですね。あれはかの有名な祝宴の場で行われる婚約破棄と言う催しですね。一部の貴族では流行っているようですよ。しかし、まさか……いえ、大変困りものでしょうね」
コホンと咳払いを1つ従者の彼はそれ以上は言及はしなかった。
何となしに察してしまっているのは、本日、彼はあの舞台に対峙している彼女のフィーリア侯爵令嬢のエスコートをして、この場に現れていたからだ。今はその役目を終えて、従者として私に控えているものの服装は貴族のそれと遜色のない一級品の燕尾服だ。
元はこの日、私のエスコートをする予定の為に用意していたものではあったが、彼女からとある相談を受けており、その信じたくない可能性から昨日その話を聞いてしまったばかりに、事は急を要するようで、すぐ様、この従者にエスコートをするように命じた。
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