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4(side フィーリア)
しおりを挟む一言で言うなら呆れ、多くを言うならまずあの生まれだけが取り柄になってしまった王子の顔面をグーで殴り飛ばし、この場で今までの罵詈雑言の全てを言ってしまいたいところだが、恐らくこの場がよもや収集の付かない修羅場と化すだろうとも思い、当然手も足も出す事はないし、口も控えめにしていた。
事態がさらにややこしい事にもなりかねない。それにあまりにも分が悪い事この上無かった。
簡潔に言うならば今直ぐに証明が出来ないから。
相手は既に真偽は兎も角、書状まで用意し、近くにいるヴァルル王子の側近候補達はこの国の将来有望な権力者候補でもある。
右後ろに控えている彼に関しては、他国からの留学生である。恐らくは証人にでもしたいのだろうと少なからず思うけれども。
周囲には敢えて言葉がまだ不慣れであるように見せている彼は誰に対してもある一定の距離を態と取っているのだ。何故ならこの国の今後を見定め、外交するに相応しいかどうか確かめに来た相手だからである。だからわからない素振りをしているが、確り王国の言葉も全て理解されている。その事に気付いたのはもう卒業も目前の時だった。
故に最悪なのだ。
本当にどうして、こんな事をせめて今しなくてもと諸外国の貴賓の中には王国何かとは比べるのも烏滸がましい天上に君臨する国も招待されている。それ程に重要な祝宴にも関わらず、こんな浅はかな事をと、頭を抱えたくなってしまう。
ただ私も薄々は気付いていたのだ。彼が、ヴァルル王子殿下が学園に入ってから暫くして私が他国との交友によって称賛されるようになって避けるようになっていた事を。
そこから少しずつ、私が言う意見に否定的になっていき、ただ少しの諌める言葉にも耳を貸さなくなった事も。
元々、家同士の決め事。国王陛下や女王陛下とは良好な関係ではある。王子とも学園に入るまでは、良好な関係だった……と思う。同年代との交友は、新しい価値観や考えを広げるのにはとても重要な事でもあるのも確か。
ただ今日この日に発表したかった事を思うとそうせざるを得ない、それを覆そうと企て、先走った気持ちに起こってしまった事に止められなかった私も悪いのだろうと自身を責める他無かった。
「承知致しました、ヴァルル王子殿下。ですが、せめて今この場でその話をするのでは無く、後程改めてお話をお伺いいたしますので、どうか一旦収めてください。今後の諸外国と我が国の為にもこのような」
「ここまで自国並びに同国民に酷い事をしておいて、君は何て事を言うんだ! やはり、売国奴と言われているのは間違っていないらしい。自国民より他国の方が大事と来た」
それはそうでしょう大切なお客様で、当然の事ですと突っ込みたくなるのもぐっと扇で口元を隠し、声には出さずに堪えた。ここに来ている貴賓の中にはビジュー王国に投資と言う名の援助をして下さっている国もある。国の特産品はそれほどに魅力的なものであると同時に限りのある資源の為、最近は技術も合わせて売りにしているのだ。
勿論、現国王陛下並びに女王陛下もその事に関しては了承している。更には第二王子は早い段階で他言語に興味を持ち、その傍らで話を聞いては理解しているとも聞き及んでいた。
その外交の大半を担っているのが、我が家門、ディプロマシ侯爵家であった。領土の統制は残念ながら宮中役職である為、王都に邸宅を構えている。
役職を有用にする為の爵位である為に特別待遇な面も否めず、一部の由緒正しい爵位持ちには逆恨みのような立ち位置にいるのも事実だった。
それも相俟って、その爵位や名に恥じぬように、幼少の頃から私も多言語に精通しているので、留学生との交流を始め、諸外国の方とも当然、交友が盛んにあるのは必然だった。
意味と意義を理解せず、それを売国だ何だと言われても困る。自国は勿論、他国も尊重して何が悪いのか、と。ただただ私は通訳の代理等を請け負っただけに過ぎない部分もある。何なら王子殿下の通訳も担った事さえある。
その為、子爵令嬢に気を配っている程の余暇はないのである。そんな事をするくらいならもっと別の時間に充てた方が有意義だ。
それにしても、学園に通っていたからと言って、この程度の情報や知識、第一王子であるヴァルル殿下ならその程度、理解していてもおかしくないのだけれども。
何時から話すら通じなくなってしまったのだろうかとさえ思う。
その後ろに隠れている小柄で可愛らしいと評判の噂のローズマリー子爵令嬢と目が合うと何故か納得してしまった。噂程度には彼女を知っていた。
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