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しおりを挟むいくら何でも、内政やこちらの内情にも首を突っ込むのは良くはないだろう。それこそ、この国にとってもフィーリア令嬢にとっても立場があるのだ。
「──言いたい事はそれだけでしょうか?」
気が付けば、書状は読み終わったようで、一際目立つ凛としているが彼女の瞳同様に透き通るようでそれでいて良く通る声が響き渡った。これは、彼女のフィーリア令嬢の声である。
「それで、ヴァルル王子殿下はそこの子爵令嬢と新たに婚約を結ぼうとしている。と言う事でお間違いは無いでしょうか?」
「ッ! 嗚呼、そうだ。君とはもう終わりだ。私はこのローズマリー子爵令嬢と婚約をすると宣言しよう」
勝ち誇ったとでも一矢報いたとでも言うようにビジュー王国第一王子は笑った。後ろにいるローズマリーと呼ばれた子爵令嬢も隠し切れないほくそ笑んだ表情が見えた。
王子はフィーリア令嬢をあまり良くは思っていなかったご様子なのね。
何て、何て、勿体ないことを……!
フィーリア侯爵令嬢は正直な話、多言語に精通している上に諸外国にとってもその能力を知らしめられていると言っても過言では無い程の有望な人材である。それでいて、人望もあるものだから他国の間でも称賛され、誰もが羨む聡明な方とそのお相手になれるなんて! と、まことしやかに羨まれるような高嶺の花だった。まあ、本人は努めて真面目に公務をこなしているだけに過ぎない為、気付いていらっしゃらないようだけど、各国のお墨付きまである。何より私の親友である。それなのに、あの王子の目は節穴か何かなのだろうか。
ええ、どうしようかな。フィーリア令嬢が王妃になるって言うから王国を推していたのに、これでは外交は新たにあの男の後ろにいる子と行なう事になるのかしら?
再度見たローズマリー子爵令嬢と呼ばれた彼女は怯えた素振りを見せ、いつの間にか王国騎士子息の後ろに守られていた。さっきの笑みを見た後に見るローズマリー子爵令嬢には、何ら愛らしさの欠片も感じなかった。
女の勘である、あの腹の底はドス黒い事でしょうね。
これはこれは、面白くない余興だこと。
「私は、私の大切なお友達のお祝いにきただけなのだけれどね」
初めて、彼女のあんな現場を目撃してしまった。
それでも、いつだって必死に王国の為に尽くそうと健気に頑張る姿を見ていた。
何なら今日の会場に来る様子から全部彼女を見ていた。
全ては彼女の結婚発表を祝福する為に。
かくいう私も、招待を承けた一介の隣国にある国の使者に過ぎない。父母は残念ながら公務が忙しく、他の宮中役職の者等が代わりにこちらに出向いても構わなかった。
でも、私の懇意にしている、気兼ねなく接する事の出来る親しい友人の晴れやかな門出である。
私も同年代の身ではあるが、多少忙しい身の上に置かれている。そんなものは気にも留めず、この場には率先して来てお祝いの言葉を掛けたかった。ただそれだけだった。
それはそれは、まあ色々と相談を受けていた上で、彼女の決意も聞いていた。胸中あまり穏やかでは無いにしろ、彼女の後ろ盾程度にはなる予定でもあったわけで。
「ねえ、エクラ? ……私、面白いことを思い付いたのだけど、私の大切な親友に助力を与えるのはいけない事かしら?」
「いいえ、ご友人を助けるのはとても素晴らしいお考えだと思います。ですが、あまりやりすぎてはいけません」
どうせ止めても聞かないでしょう、と溜め息混じりに発言するエクラはどちらにしても止める気などは無いだろう。本気で止める気だったら私は既にこの場には居ないのだから。
そうと決まれば意気揚々とあの茶番劇の舞台を楽しもうかしらと、私はあの渦中の中に割って入る事にした。
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