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しおりを挟む一瞬固まる国王陛下は、鋭い目付きに変わるとビジュー王国第一王子を睨みつけた。
「……どういう事だ、ヴァルル」
「ち、父上! 私は学園生活を通して、本当に大切な何かに気付きました。その事を諭され、お互い尊重し合えるかけがえの無い者達に出会ったのです! そして、守りたいと思える彼女と巡り会えたのです」
少したじろいだビジュー第一王子殿下ではあったが、薔薇だか、百合だかの名前の子爵令嬢に視線をちらりと向ける。
子爵令嬢は曖昧な笑みを返すが、意を決したのか、騎士子息の後ろからすっと抜けると第一王子殿下の近くまで寄り添い、いつも通りとも言わしめるようにスマートに腕に手を回し、異様な程に近いのは言うまでも無く、二人が懇意以上の関係性を物語っているのは明白であった。
フィーリア令嬢をちらりと見遣るが、その表情は虚無を表していてどういう気持ちなのかは、理解には及ばなかった。きっと呆れを通り越してしまったのだろうけど、もしかしたらもう婚約も破棄したから関係ありませんって思っているのかもしれない。
私はとても不快に思っているのだけども、表情には出さない。ただ女王陛下は今にも倒れそうな程に顔面蒼白である。
「故に、この貴賓並びにご学友集まる場所にて発表したのです。私はローズマリー子爵令嬢と婚姻を結ぶ、と。私の周りにはそれに同調して下さり、協力してくれた大変聡明な学友がおります。行く行くは従者と護衛としてもこの場を持って紹介しようと……」
何て、頭の軽い発言だろう。学生の時ならば、まだ良かったかも知れない。しかし、立場があるこれから上に立つ者としては、あまりにも浅慮では無いだろうか。今は兎も角、これから後の事を何も考えている発言とは思えなかった。
自信に満ち溢れ、これが正しい行いだとでも思っている第一王子。
ふと崩れ落ちるように女王陛下は倒れ込み、慌てて横にいる第二王子殿下が抱き支え、他の従者も慌ただしく女王陛下の安否確認を取り、凄い心配と不安げにこちらに目配せをしながらも女王陛下を支え、そのまま直ぐに退室してしまった。
国王陛下も苦悶の表情を浮かべ、女王陛下が退室したのを見送った後に、第一王子殿下に向き直れば今までに見た事がない程に怒りを露わにしていた。
「違う、お前の気持ちや学園での思い出を聞いているんじゃない。何故、今この祝宴でその愚行を働いたか聞いているんだ!」
その怒りに満ち溢れた国王陛下にビクッと背筋を伸ばし、何故叱責されているのかやはり理解できない第一王子は、助けを求めるように公爵第二令息を見た。
助言の殆どは恐らく彼がしたのだろう。寧ろ、彼が主因と言っても良いのかもしれない。
明らかに、第一王子は彼の言う言葉を直ぐに鵜呑みにし、疑いもせず、信じ切っているように見受けられた。傍から見たら良い関係かも知れないが、別の視点から見れば、上に立つ者として、それがどれだけ危うい事か。
公爵第二令息を見れば、直ぐにこちらに視線が交わり険しい顔付きで、私を睨み付けた。どうも青い顔をしてはいる為、やっと気付き掛けているようにも見えるが、緊張のあまりただそうなっているだけにも捉えられた。
さてどう出るのかしらと一先ず静観する。
「僭越ながら国王陛下、発言をお許しください。私はデルニエール公爵家第二子息のアロガン・デルニエールと申します。
私が申し上げたいのは彼女、フィーリア令嬢が彼のローズマリー令嬢に権力を笠に着て酷い仕打ちをしたのです。彼女の度重なるあまりにも非道な行いに王国の輝く月になるには些か問題があると判断致しまして、このような場を設けました」
意を決したように話すアロガン・デルニエール第二公爵令息。
デルニエール家と言えば、由緒ある王国公爵家の一つ。少なくとも王国貴族の中では王族の次に高位貴族に当たる列記とした権力者だ。
果て、どの口が権力を笠に着ていると言えるのだろう。
「……それだけか?」
ドスの効いた声が自信満々と言いたげなデルニエール第二公爵令息を射抜いた。誰かの息を飲む音が聞こえるようだった。
「はっ……いえ、他にも侯爵家が他国との外交を勝手に行ない諸外国へ人員を身勝手にも斡旋し、自国の技術を許可無く広めているのです。これは明らかな越権」
「言いたい事はそれだけのようだな。もう良い。貴殿は何もわかっていないようだ。公爵も愚息をもってさぞ……そもそも誰に発言の許可をとっている」
「も、勿論、国王陛下にございます」
シーンと静まり返る場内に張り詰めた緊張が一気に広がっていく。何か間違った事をしたのか、と戸惑いと焦りの色が見えるデルニエール第二公爵令息。
この方そういう名前だったのね。興味の無い者は覚えない主義である。ましてや他国のこのような者など……。
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