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しおりを挟むビジュー王国国王陛下の登壇に澄まし顔で扇を一旦閉じる。こちらの前まで歩みを進める国王陛下に続いて女王陛下とその隣には第二王子殿下がいる。
こうなる事は既に予測の範囲内だった。
それまでに、もう少しこの場にいる者のそれぞれの思惑について、ある程度知っておきたかったのもあり、誘導尋問と言う言葉は確かに正しいと言えば正解。
ただそれは別に、第一王子だけに作用したわけでは無い事をあの公爵第二令息は、気付いてないようで。
随分とお早いご登壇ではある。それもただ単に第二王子殿下が血相を変えて、出て行ったのを横目に捉えていたので、察していた。大方、この現状と帝国の介入に気付き、大慌てで知らせに行ったと言うところでしょう。
それにしても、自ら率先して動くこの第二王子殿下は、私が一人でこの会場に登場しようと扉の前まで現れた時にもそう現れたのだ。ほぼ同じ目線だったのもあって、それでも帝国ではそのくらいの年齢の侍従が案内等を行なっていたりもしたので、てっきり案内人かと思ったのだけれど、良く見たら着ている服は目立たないながらも一級品と言える燕尾服で、跪き、颯爽と手を取ってエスコートして下さったので、まだ少し幼さのある王国第二王子殿下の勇敢さと今日の姿を拝見していた為に、直ぐに見付ける事が出来てしまったと言う理由でもある。
色々考えられる思いがあるのだろうが、会場に入った後は少したわいの無い会話をし、爽やかに身を引いていった。何とも素敵な余韻を残していったわけだから将来が楽しみな方だなって少し思いはしたのだけど。
まあ、今となっては、そんな奔走も些細な事になってしまったのよね。
「王国の太陽と月に謁見致します。ビジュー王国国王陛下、そして、女王陛下」
微笑を作り、スっとドレスの裾を持ち上げ、片足を斜めに引き、丁寧な会釈をする。
その様子にあからさまに睨み付けてくる王国第二公爵令息。恐らくは私が、一番最初に挨拶をしているのがおかしい、何故とでも思っているのだろうけど、国王陛下は真っ直ぐこちらに向かってきたので、こうなるのは当然だった。
「これはこれは、久しいな、随分立派になられたようで、先刻もそなたが星の名を賜ったと聞いておる」
「ふふ、そうですね。僭越ながら拝命されまして、お褒めに預かり大変光栄でございます、ビジュー国王陛下」
朗らかな雰囲気に場が少し和やかになる。
しかし、時は既に満ちてしまった、私はもうその和やかなままにしようなんて毛頭無い。
そもそもこの舞台は明らかに虚構の上に成り立っていた。それに、別の力を加え、ちょっとだけつついてしまえば簡単に違う構想が出来てしまうようなそんな浅はかな劇だった。故に茶番劇なのだ。
国王陛下はただならぬ様子を察してはいたのだろう。恐らく呼びに行った第二王子から第一王子がこの舞台を開幕してしまったあらましを聞いているかとも考えられる。国王陛下が片手を挙げると会釈をしたままでいた者は、一様に顔を上げる。
「して、これはどういう事だろうか」
「あら、国王陛下も存じ上げていらっしゃらないのですね? ご安心くださいませ、私が帝国の使いの者として代わりにビジュー第一王子殿下とフィーリア・ディプロマシ侯爵令嬢の婚約破棄の承認を致しましたので、少々催しは変わっておりましたが、恙無くお話は進んでおりますよ」
「婚約破棄……? 何を冗談を」
「それが、冗談ではございませんのよ。先程、ビジュー王国公爵家第二令息の方が書状を持ってきて拝読していらっしゃいましたわ。……でも、安心して下さいませ。婚約破棄を承認する代わりにフィーリア令嬢を帝国が召し上げると。ですが、令嬢だけではお可哀想でしょう? なので、侯爵家もご一緒にと申しましたのよ?」
微笑を貼り付け嬉々として、今さっき起こっていた舞台の概要を述べ、改めて、対を成す王子殿下を始めとした面々を見遣る。一同は、私の堂々とした立ち居振る舞いと年齢や容姿からも明らかに国王陛下とも懇意にしている様子に驚きと焦り、そして、不満の表情が顕著になっている。
名も名乗っていない事を踏まえたとして、ここまでヒントをばら蒔いているのに誰一人と気付いても無さそうなのは、本当にどうかしているのではないかしら?
まあ、ただ一人は、関心ともとれる表情をしているので、本当に証人として呼ばれただけなのだろうな、と巻き込まれた彼については何とかするべきかしら。私は慈悲深いので。
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