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7(side フィーリア)
しおりを挟む更なる追撃が始まるこの場は、もう彼女の術中の上になっていると過言では無かった。
「まあ、流石はビジュー王国の第一王子殿下。寛大なお言葉ありがたく頂戴いたしますわ。ですが、そうしましたらフィーリア令嬢が帝国にお越しになるのは決定しましたが、まだ一人で、こちらに移住するには、いくら帝国とは言え、少々若すぎますし、それこそ身一つだけではお辛いでしょう? 何よりフィーリア令嬢が寂しいと思いますのよね。ですので、いっその事、侯爵家の全員を帝国へ召し抱えたいのですが……宜しいですわよね?」
次に出たその言葉に扇が手からするりと抜けていくも地面に落ちること無く、膝の上にパタリと落ちた。自分の身一つならばどうとでもなる事が、今度は一つの家門事貰うと言う。
それは少し行き過ぎていると、下手したら越権行為と罵られるだろう。でも、それは彼女が誰なのか、気付いていない、或いは知らない前提での話だ。
「なッ……え、はあ? 君は何を言って」
「ああ! 私とした事がとんだ失礼を働いてしまいましたわ。たかだか一介の王子程度に流石に一つの家門を異動させるなんて無理難題でしたわよね? まだ王太子ですら無いですし、何の賞賛もえられてないそうですものね」
流石に違和感に気付いたヴァルル王子も焦りを見せるが、クスリと皮肉めいた笑いを一つするベアトリス様に今度はかっと羞恥心のあまり顔を赤くした。
周りに持ち上げられ始めてから私以外には諌めてくれる者はやはりいなかったのだろうと察する。
的を得た発言もあったのだろう反論するかのように声を荒らげた。
「な、に!? 僕は第一王子だ、確かに今は太子には至っていないが、これを達成すればすぐに拝命される! その程度の事簡単に」
「ヴァルル殿下! 唆されてはいけません。これは、誘導尋問です。あの令嬢は侯爵家を帝国に引き入れた後に、王国を貶めようとしております。騙されてはいけません、売女令嬢に慈悲をかける必要もございません! 本当に先程から何て無礼な女だ、越権行為も甚だしい。今すぐにこの場からつまみ出すべきです」
「え、あ……そうだよな」
反論するヴァルル王子に対して言葉を遮った公爵家の第二令息にも流されるように同意するヴァルル王子にも、この国の今後の危うさが垣間見えた瞬間とも言えた。
その時から雰囲気が、変わったのだ、そう彼女の。
「──ねえ? 先程から何を言ってらっしゃるのかしら? 私は、ビジュー王国の王子殿下としかお話しておりませんの。貴方こそ、私から一切の発言許可も取っていらっしゃらないのに立場を弁えたらいかが? ああ、それとも学園では何も学ばれていらっしゃらないのかしら」
彼女は恐らく、否、相当激昂しているかもしれない。
この時点で確信的に気付いたこの周囲の王国の者も恐らく居るだろう。この国の王子以外は発言権すら無いと言わしめたのだ。誰がこの場で、それを否定できるのだろう。彼女はこの中で王子と、同等もしかしたらそれ以上の権限すら持っている。
「何を言って、私は公爵位の家系の者だぞ」
「それはそれは、その発言こそ越権行為も甚だしいですわね。貴方こそ今までの全ての発言に全責任を負う覚悟がおありですの?」
「君こそ何なんだ、いくら帝国の者だと言っても名も一切名乗らないところ、所詮はたかが知れた家門であるから名乗れないのであろう。愚かなのはどちらか!」
誰も王国の公爵第二令息を嗜める者すらいるはずもなかった。
そんな最中に呼応するかのようにけたたましいファンファーレが鳴り響く。
王国の者は一斉に傅き、道を遮った場所にいた者はここまでの道を指し示すように玉座からの道を作った。
そして、ある一部の他国の貴賓を覗いて、その場のほぼ全員が頭を深々と下げ、私も椅子からサッと立ち上がり、大分冷静さも落ち着きも取り戻し、いつものように丁寧なお辞儀をした。
その一部の他国の貴賓である彼女は、ビジュー王国、国王陛下とその後ろに続く女王陛下の登場にも何ら微動だにせず、ここまで歩み進む様子を静観している。
先程、冷静さも落ち着きも取り戻していたとは思っていたけれど、内から湧き上がる高揚感に身体が震えていた。この舞台の最終幕を彩る役者は揃ったのだ。
断頭台に立たされた張本人の私が、何を思っていようが口にも顔にも出さなければ、この茶番劇を楽しんでも何ら問題はない。もう私はこの場を見守る観客の一人だ。その決定を快諾するか、否かの返事をするのは後日となるか、今となるかは彼女の言葉次第だ。
何故なら周囲が、彼等が彼女の身分を公表するように仕向けてしまったのだから。
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