30日後に巨大隕石が衝突すると知らされた世界で、本当に大切なものを見つけた

てるぽに中将

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地球滅亡予定日まで 残り27日

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  昨日、母さんは僕が学校から帰ってくると夕飯の準備をしていた。
 その時はかなりホッとしたものだった。もう二度と家に戻ってこないと思ってしまったから……。

 今朝は2人は何事も無いように振舞っていたが、母さんの目は真っ赤で父さんとの会話も存在しなかった。

 それでも、僕をここまで育ててくれた両親なんだ今朝こそは仲直りしてもらわないと。
 身を挺してでもこの家族を守りたいと思った。

「ねぇ、昨日は2人の間に何かあった?」

「……何も」

 父さんは持っている新聞をギュッと端が破けるほど握った。

「いや……昨日は父さんと母さんの間の雰囲気が不穏だったから……」

「そんなこと無いわ。お父さんとはこれまで通り仲良くやっています」

 と、母さんは落ち着いた声で笑みを浮かべながら話した。

 だが、対照的に眉間に皴を寄せており、父さんの方を見ようともしない。

 僕は何か取り繕おうとしたが、何も良い言葉が浮かばない……。
 さっきは身を挺してでもこの家族を守ると固く決意したはずだったのに……。

 父さんも黒い鞄の中を確認し始めて、今日は早めに行ってくると小さく言った。

 あら、行ってらっしゃい。と母さんは言うが、見送りに行くために立ち上がることはしなかった。

 僕が小学校低学年ぐらいの頃は玄関でキスをして見送るなんてこっちが恥ずかしくなるようなことをしていたのが、信じられないぐらいだ。

 父さんは昨日と同じようにバタンッ! と大きな音を立てて出ていった。

 僕はその音の大きさに震えると共に、これが“あの仲睦まじい2人”なのかと信じられない気持ちになった……。

 愛は永遠ではないんだな……。

「それより、学校の方はどうなの? ちゃんと授業やってくれそう?
 隕石が地球に衝突しないかもしれないんだから、そのためにもちゃんと勉強しないとね?」

 母さんも基本的な考え方の路線は熊田君と一緒のようだった。

「うん、大丈夫みたい。
 昨日は隕石衝突に伴う詐欺が横行するから注意しろって言うプリントを配られたんだ。全く、危機が迫っているって言うのに悪いことをする奴がいるもんなんだね」

 学校には通っているだけで昨日も一昨日もノートに一文字も書けないほど由利のことを考え続けているだなんて絶対に言えないけどね……。

「そう……危機になると“人間の本性“と言うのが出るのかしらね?
 良いところや悪いところがより強調されるようになってしまうのでしょうね。
 悪い人は平時では抑え込まれている悪いものが危機が迫ると解放されてしまうのかもしれないわね」

 これは父さんのことだろう。一体母さんが父さんのどんな“本性”を見せられたのかは分からないのだが、これまでの結婚生活が嫌になってしまうぐらいの出来事だったのだろう。

 父さんと母さんの視線すら交錯しない様子を見ていると、「もうこの家族ダメなのかな」とまで思ってしまった……。


 ◇


 学校は午前授業だったが授業は全く身が入っていない。今日の3限目の数学の小テストは壊滅的だった……。

 ただし、熊田君が100点だった以外、他のクラスメイトは壊滅的な点数だったようだ。

 僕は29点とは言え、むしろ相対的に上位だったほどだ。ここ数日授業に身が入らなかったので助かったと言える。

 皆は地球滅亡に関して気が滅入っていると思うのだけども、僕は彼女のことで頭がいっぱいになっているんだからある意味平和的とも言えるんだけどね……。

 でも、この状況下でも由利のことの方が大事だった。
 それだけかけがえのない存在で失いたくなかったのだ。

「今日も人身事故か……」

 今日も電車が止まるのではないかと悪い予感はしていたが、無駄に的中してしまった。
 悪い予感ばかり当たってしまうんだから本当に困ったものだ。

 僕の愛車――自転車で由利の家に行くことにした。

 これまでの僕と由利との関係を振り返る。

 由利とは幼稚園からこのあたりの地域で一緒に成長し、ずっと同じ学校に通った。
 中学3年の時の文化祭で付き合う事になった時は凄く嬉しかった……。
 由利の手を初めて握った時は“もう絶対に離すものか”と思ったものだった。

 明るくて元気で、いつも僕を引っ張っていってくれる。
 でも、勉強はあんまりできない方で、高校は僕が一生懸命教えてあげてようやく一緒の高校に入れたんだよね。

 一緒に受かった時は頬っぺたにキスをしてくれたのも嬉しかったなぁ……。

 そんな由利はほとんど学校を休んだことが無い。
 この間だって頬がヒリつくほど僕にビンタをしたぐらいなんだ。体調以外の問題が発生した可能性が高いようにも思えた。

 上り下りが連続する道を一生懸命こいでいくと、見慣れた家が見えてきた。

 インターフォンを押す前に深呼吸をした。
 もしかしたら、門前払いされてしまうかもしれない。
 会えても会話の内容次第で由利と最後かもしれない……。

 もう僕の家族は崩壊しかけているんだ!
 由利だけが僕の全てなんだ!

 そんなことを自分に言い聞かせながら勇気をもって震えながらでもインターフォンを押した。

 ピンポーン! と言う音が遠くで鳴り響く。

 自分の心臓が耳元で直にあてられているのではないかと言うぐらい、鼓動を感じた。

 そして、応答が返ってくるまでの僅かな時間を無限の時間にも思えた……。

「はい。どちら様?」

 どうやら由利のお母さんの声だ。由利が出てくれなくて残念と思うと共にホッとした。

「お久しぶりです。伊崎裕司です。由利さんがここ数日学校に登校されないので、どうされたのかと思って、お見舞いに来ました」

「あら裕司君? 今ちょっと由利は体調不良で他人に会わせることが出来ないのよ。ごめんなさいね」

 この間の剣幕からすると、なんだかちょっと信じられないけど、突然風邪をひいたり月のものが重かったりすることもあるのだろう……。

「そ、そうですか……」

 もしかしたら、僕が“浮気”をしたせいで気分が悪くなるきっかけになったのかもしれない。
 適当そうに見えて結構真面目でナイーブな奴だからな……。

 高校に入るときも僕と一緒の高校に行きたいってことで必死に勉強をやってたっけ……。

「あの、今日の授業のプリントとノートのコピーを持ってきたので良ければ渡してくれませんか?」

 プリントのコピーは熊田君に貰ったものだった。僕も全く授業の内容が入っていないから、後で僕もこれを使って勉強しよう……。

「あら、ありがとう。いただくわね」

 由利のクラスのを持って来れればよかったのだが、生憎伝手が無かった。
 それでも何か理由が無いと来れないと思ったので熊田君にプリンとジュースを奢ってコピーさせてもらったのだ。

「由利が元気になったら真っ先に裕司君に対して連絡させるようにするから~」

「はい……よろしくお願いします。それでは由利さんにお大事にと伝えておいてください」

「ええ。裕司君も気を付けてね。最近、風邪が流行っているようだから」

「はい。気を付けます」

 その時気づいた。由利のお母さんは口元は笑っているが、目が笑っていないと。

 ――阿坂家からの帰り際に由利の部屋のカーテンが少し揺れた気がした。

 何か、嫌な予感がした。

 気のせいだろう。由利は誰にも会えないぐらい体調が悪いのだから。

 はぁ~~~~。由利の奴、体調が悪いのは分かったけどどうしてメールの返信すらもくれないんだ?
 僕のことそんなに嫌いになったのかよ……。
 悪かったのは間違いないけど、弁明する機会、謝る機会ぐらいくれよ……。

 起伏の激しい帰りの道のりは行きより更にキツク感じた……。

 でも、挽回の機会は絶対にあるよね?

 今度は由利の手を掴んだのなら離さないようにするからな……。
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