サンタヤーナの警句

宗像紫雲

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サンタヤーナの警句(第三話)

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                  三

「そうです。原因はオイルショックでした」--。
 1973年10月、第四次中東戦争が始まってオイルショックになって、原材料価格が高騰しインフレになった。その年の消費者物価指数は11・7%、翌年には23・2%まで上昇し、「狂乱物価」と名付けられるほどの様相を呈した。ちなみにネットで調べた情報によれば、73年の春闘で賃上げ率は20%を確保、74年には33%であったから話者のお父さんの言い訳は疑わしいということになる。
 次いで五年後の79年1月にイラン革命が起こって再び原油価格は高騰した。いわゆる「第二次オイルショック」が起こってインフレ率は再び上昇した。

 ところが、だ。
 第二次オイルショック時のインフレ率がいったいいくつだったかを調べようと、「第二次オイルショック」、「日本」、「インフレ率」でキーワード検索を掛けたが、どうした訳かヒットしない。こんなもの簡単に調べられそうだと高をくくっていたが、意外にも “これ”という結果に行き当たらない。検索に引っ掛かるのは「各国のインフレ状況」とか「アメリカのインフレ」とかいうサイトばかりだ。
 何故だろう? 
 何とはなしに誤誘導されているような気がして、それがしこりとなった。 

 さて本題は、足下のインフレ率である。コイツを抜きに今回の企画は成立しない。そこで早速、総務省のホームページから過去一年分を拾ってみた。

              総合    コアCPI   コアコアCPI
   「2022年8月 3.0%  (2.8%)   ⦅1.6%⦆
                          7月 2.6%  (2.4%)   ⦅1.2%⦆
         6月 2.4%  (2.2%)   ⦅1.0%⦆
         5月 2.5%  (2.1%)   ⦅0.8%⦆
         4月 2.5%  (2.1%)   ⦅0.8%⦆
         3月 1.2%  (0.8%)  ⦅▲0.7%⦆
         2月 0.9%  (0.6%)  ⦅▲1.0%⦆
         1月 0.5%  (0.2%)  ⦅▲1.1%⦆
    2021年12月 0.8%  (0.5%)  ⦅▲0.7%⦆
         11月 0.6%  (0.5%)  ⦅▲0.6%⦆
         10月 0.1%  (0.1%)  ⦅▲0.7%⦆
         9月 0.2%  (0.1%)  ⦅▲0.5%⦆
         8月 ▲0.4% (0.0%)  ⦅▲0.5%⦆
         7月 ▲0.3% (▲0.2%) ⦅▲0.6%⦆
                          
 ひと口に「インフレ」と言っても、定義によって数値が異なる。もっぱら新聞が「インフレ」を云々する場合には、消費者のサイフに直結する総合指数で表すことが多い。この中から天候に左右され値段のブレ幅が大きい生鮮食料品を除外したのが「コアCPI」となる。さらにここから石油や液化天然ガス、石炭といったエネルギーを除いた「コアコアCPI」というのもある。日本はエネルギーの大半を輸入に頼っているが、これらは国内事情ではどうにもならない要素だから、日本の物価の安定度を測るには相応しくないからだそうである。
 ではどの数値に基づけばいいかは、使う人の立場や目的によって変わってくる。ちなみに日本銀行は2013年1月、物価の安定目標として「消費者物価の前年比上昇率2%」を設定した。日銀の言う物価の安定とは、「物価が変わらない」ことではなくマイルドに物価が上昇することを意味している。そうでないと経済は成長しないからだ。その場合、彼らは「コアCPI」や「コアコアCPI」を参照しているとされる。

 2022年4月に「コアCPI」が2%を超えた辺りから、「日銀は当初の政策目標を達成したのだから、金融緩和政策を解除し利上げに踏み切るべきだ」との声が上がり始めた。3月の半ばには為替が「円安」傾向を示しはじめ、日米の金融政策の違いが意識され出した。
 一国の金融政策はあくまで国内の景気動向を見ながら決定されるべきものだ。ところがこうした時の世の中は、常に「バスに乗り遅れるな」的な方向へ走りがちになる。「果たして日銀は当初の目標をクリアしたのか否か」、つまり「コアCPI」なのか「コアコアCPI」なのかといった議論はすっ飛ばして、「諸外国が利上げに踏み切ったのだから、我が国も……」という論調ばかりが声高に叫ばれる。実際、「コアコアCPI」を重視する側から、「目標の達成とは程遠い。いま利上げになんぞ踏み切ったら再びデフレへ落ち込むに違いない」という慎重論が上がっても、ほとんど見向きはされない。
 いずれにしても、日本の場合は原材料価格の高騰が物価上昇圧力となっていることは間違いなさそうだ。そうなるとエネルギーと為替の見通しを織り交ぜなければならないだろう。

 と、いうことで……。
 原材料価格の高騰はどの程度製品価格へ転嫁されたか、つまり各企業の今後の値上げ計画を、「身近な値上げ」というタッチで鉾田に書いてもらおう。確か、信用調査会社が面白いアンケート調査を行っていたはずだ。
 エネルギーと為替の方はやや話が込むから、やはり吉川にやってもらうつもりだが、双方ともが話がデカ過ぎるから記事にどう織り込むか、もう一考加えねばなるまい。取り敢えず吉川には原油価格の推移を振り返ってもらおう。そして自分は……、自分は少し過去を探ってみよう。
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