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イライラを紛らそうと点けたテレビが、完璧な人を写し出している。番組は“凄い人特集”なるものを組んでいて、ナレーターが大げさに紹介していた。優秀な人間を持ち上げる声に、苛立ちを増幅させてしまう。
『この会社の社長である彼、なんと三十三才で、しかも子どもさんもおられるという……まさにイクメン!な社長なんですね。その事業内容はと言いますと~? これまた斬新で面白い!』
画面に標準表示された時刻がちらついた。AM11:22――そんな気はしていたが、父さんがまだ起きてこない。
中学の宿題も皿洗いも終わって母さんはパート。生憎スマホは通信制限で、暇も潰せない。
なのに、起きてこない。明日こそ、早く行こうって言っておいたのに!
「正人、おはよ~」
後方の扉がやっと開いた。眉間に皺を寄せ、目を半分にして振り向く。現れたのはテレビと真反対の人間だった。
「うわ、今日も髪すごっ……てか何時だと思ってんの。言ったよね、昨日」
「あーごめん。もうこんな時間になってたのか」
生え際が埋まるほど爆発した髪が、ふわふわと揺れている。
この人は朝が苦手で、優雅に朝食を食べる姿なんか見たこともなかった。仕事の日は僕より遅く起きて、爆発ヘッドで忙しく出社していく。あのまま会社に入るのかと思うと、マジで恥ずかしかった。
『この会社の社長である彼、なんと三十三才で、しかも子どもさんもおられるという……まさにイクメン!な社長なんですね。その事業内容はと言いますと~? これまた斬新で面白い!』
画面に標準表示された時刻がちらついた。AM11:22――そんな気はしていたが、父さんがまだ起きてこない。
中学の宿題も皿洗いも終わって母さんはパート。生憎スマホは通信制限で、暇も潰せない。
なのに、起きてこない。明日こそ、早く行こうって言っておいたのに!
「正人、おはよ~」
後方の扉がやっと開いた。眉間に皺を寄せ、目を半分にして振り向く。現れたのはテレビと真反対の人間だった。
「うわ、今日も髪すごっ……てか何時だと思ってんの。言ったよね、昨日」
「あーごめん。もうこんな時間になってたのか」
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