ボクの父さんはダメおやじ

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「あああイライラするー!」

 父さんがトイレに立った隙を見て、怒りを発散する。母さんはやっぱり笑いながら、さらーっと呟いた。

「まぁまぁ、今はなんでもイライラしちゃう年頃なのかもね」
「ずっとですけど!?」

 母さんのスルースキルは天下一品だと思う。懐、深すぎるんだよ、母さん。
 頬一杯に美味しい料理を詰め、高速で咀嚼する。母さんが徐にスープを指した。

「ほら、これ。この白菜ね近所の人に貰ったやつなんだよ」
「え、うん」
「お父さんが畑仕事手伝ってたみたいで。感謝してたなー」

 脳内に、土汚れと共に帰宅した父さんが浮かぶ。なぜか月に何日か、汚れて帰ってくるから不思議だった。いや、よく水溜まりで滑ってたりはするけど。

「へー……」
「お父さん不器用だけど一生懸命頑張ってるんだよー」

 納得できない評価の直後、父さんが戻ってくる。地獄耳を備えているのか、遠慮の欠片なく割り込んできた。

「何の話してたの?」
「お父さんの話よ」
「言うの!?」
「え! 聞きたい!」
「お父さんも一生懸命なんだよって言ってたの。そうでしょ?」
「もちろん! 正人もお母さんも大好きだからね! 父さんはいつも一生懸命だよ!」
「嘘つけ! て言うかやめろやい!」

 背中から抱き締められて、思いっきり突き放す。二人の大笑いが響いたが、僕はマジで笑えなかった。父さんが今の父さんでいる内は、ずっとイライラしてしまう気がする。

 だって、どうしても嫌なところしか見えないし! むしろ、ここまで駄目な人間って本当にいるんだな!?
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